| ベルガーの出した特殊なポータルで俺達はフェイヨンへと向かった ポータルを抜けた先には見渡す限りの緑が広がっている どうやらフェイヨン周辺の森へと出たようだ 「…これは…」 街から離れているのに、とてもどす黒い雰囲気に包まれている感じが伝わってくる 瘴気…というのだろうか、見た目じゃ解らないが肌に纏わりつくようなそんな感覚がしている ここに来る前に人型へと変化したマヨとベルガーもこのどす黒い空気を感じ取っているようだ 「さてと、気を引き締めていかんとな、ベルンガ」 「ベルンガ言うなっての… っつーか何だ、俺とお前はユッキー側でも男爵側でもないだろうに、何でこんな事を…」 さっき聞いた話だが、どうやらマヨが強制的にベルガーを引っ張ってきたらしい そして二人の話の中からセラフィックゲート内で起きている色々な問題も見えてきた 今回もユツキサイドと男爵サイドでの考え方に違いにより色々と摩擦が生じているのだとか… 俺もそれに巻き込まれているとの事だ、カイルの方はあまり関係ないみたいだけど… 「で、どうするんだ? 何か考えがあって、何か知っててここまで来たんだろ?」 俺の言葉にマヨは頷く そしてマヨは、「話の前にフェイヨンに入ってしまおう」という感じにフェイヨンの街への門を指差した 第74話 「あのさ」 フェイヨンにかかる大橋を渡りながら俺は聞いた 「どうしてこんなに協力的なのか」と聞いてみた 俺がプロンテラに来てから様々な事が起きていた 今まで味わった事のないような恐怖だって… だけど毎回毎回、その度にセラフィックゲートの人達がその事件を解決していく 厳密に言えば今裏で起きている大事自体は解決されてないと思うのだが… プロンテラ騎士団よりも先に騒ぎを察して駆けつけてくるのは確かだ しかも大体が今まで事例が挙げられなかった異常事態に対して 「うーん、どう答えたらいいものか」 そう言ってマヨはベルガーの方を向く 俺に聞くなよといった感じでベルガーは目を逸らした そして一言 「全部言っちまってもいいんじゃね? 俺は別に関係ないけどな」 「…まあ、それはまたの機会に」 話は二人の間で完結してしまった というか今「全部」って言ったような気がしたのは気のせいか やっぱり何か知っているような…そんな気がする、が 今はそんな事には構っていられない 「暫く来ない内にフェイヨンも色々と変わったな」 大橋を通り、門を潜り抜けた所で先頭を歩いていたベルガーが足を止める なるほど、これは確かに変わってる 歯車剥き出しの木製人形が武器持ってお出迎えしてくれるとは風情がある ガチガチと音を立てて人形共は規則正しい動きで俺達に向かってきた 「数が多いのぅ、とりあえず突っ切るか」 赤と青の短剣を構えてマヨが飛び出す 銀色の風が流れたかと思った時には人形達は粉々に粉砕されていた 「遅れるなよ」 崩れ落ちた人形達の残骸を踏みつけながらマヨとベルガーは一気にフェイヨンへと進んでいく 数体程建物の陰や木の陰から出てきたが動きが遅いので振り切るのに問題は無かった 綺麗に揃えられて敷き詰めてある石畳の上を俺達は走った 「静かだよな…」 フェイヨンの街の中にある寺院前の広場に着いたのだが、誰もいない フェイヨンにもカプラサービスが行き届いているはずだったが、カプラ職員すらいない 俺達は走るのをやめ辺りを見回してみた 「こりゃやばいんでない?」 マヨが木の陰から何かを引っ張ってきた それは光の加減で薄い青色に見えるガラスのようなものだった いや、ガラスよりももっと透き通るようで…人工的に作り出せるようなものではないようだ 「あ、え…人…?」 よく見るとその中にはフェイヨンの街の人であろう人物が入っていた 恐怖で引き攣ったような顔をして… 「相当なもんだな、凍らされてから結構時間も経ってるはずだが…水滴ひとつついてない」 そう言いながらベルガーはその透明な―――氷の檻を指で撫でた そうか、街が静かなわけが分かった 街の人間が誰かに凍らされたか…フェイヨンから逃げたかのどちらかなのだろう しかもかなりの高い魔力で凍らされたらしい 蒸し暑い夏の温度でさえ溶けていなかった 「ちょ、何だこれ? 氷に閉じ込められるって事があるのは聞いた事があるけどさ せいぜい数分だって話だろ? …こりゃどう見ても…死んで…」 |