「俺らってさ」

「何だよカイル」

「まったくもって女っ気ないよな」

「言うなよ…」

「でもさ、楽しいからいいじゃん」


第67話 夏祭り


プロンテラの南門外で俺達3人は落ち合い、祭りを見て回る事にした
普段は臨時でパーティーを組む冒険者や、ギルドに勧誘する人達でごった返している場所も、今はあまり人がいない
多分ほとんどの人がプロンテラの祭りを見て回っているのだろう

「まず何見ようか?」

南門を通り抜けるとそこは既に別世界だ
通りは屋台で埋め尽くされており、街灯や街路樹には様々な装飾がされていた
そんな祭りの雰囲気を味わいながら何をするでもなく俺達3人はただ歩いていた

「お、馬鹿ガキ3人組じゃねぇか」

南十字路まで差し掛かった辺りだろうか
俺達は聞き慣れた声に呼び止められた

「あ、親父」

その声の主は、『仮面屋』という看板を掲げて屋台を開いているカイルの父親・カインだった
イズルートの祭りの時もそうだったが、カイルの父親はよく屋台を開いていた
しかも今回開いている店は、あまり他の人が開かない仮面屋だ
ゴブリン仮面やアラーム仮面など様々な仮面が並べられている
素材こそ本物とは違うものだが、出来の方は本物とそう大差は無い

「何だぁ? 揃いも揃って男ばっかりかよ? むさ苦しいねぇ」

カインは俺達3人を順番に眺めて言った
しかしそれは仕方の無い事だ

「だって俺達女の友達少ないし」

俺は自分でそう言って少し悲しくなった
よく考えれば友達と言えるような付き合いをしてる女は少ない
俺なんてせいぜいエルリラとアイラくらいなものだろう
パーティーを組むくらいの付き合いならば友達と言ってもいいくらいだ

「あ、いや…俺は結構いるけど…?」

「何ぃ!!」

「ジュリアン貴様裏切ったな!」

ジュリアンの思いもよらぬ発言に俺とカイルは驚いた
普通に俺達とほとんど行動を共にしていた筈なのに交友関係が違ったからだ
華のある交友関係は何て羨ましい事だろうか

「やはりあれか、器量良しの方が何かといいって事か」

「ま、カイルにはまだまだ無理だけどな。あーっはっはっはっは」

「くそ親父がっ!!」

カインとカイルの言い争いなど昔から見慣れた光景だ
俺達より結構年上だと言ってもカインはどこか子供染みているところがあった
そのせいか俺達のような年下とも意気投合していた
ローグをやっている上に外見も結構厳ついので色々と誤解もされてしまうが、まったくもって無害な人だ
だが戦闘能力の方は超一級品、一度だけカインが戦っているところを見た事があるが
普段の姿からは想像出来ない程の強さだったというのを付け加えておきたい

「で、何か買っていかんか? 最新の物も入ってるぞ」

そう言ってカインは店先に並べられている仮面を指差した
いるかいらないかで言えば置き場所に困るものなんて買っても仕方ないと普段なら思う
だが今日は祭りだ
他の人がつけていないような仮面をつけて祭りを見て回るなんて粋なもんだろう

「ジュリアンはこれなんていいんじゃないか?」

カイルが選んだ仮面
それはアルデバラン時計搭に生息するアラームというモンスターの顔を象った仮面だった
やる気のなさそうな表情だが、恨みや恐怖といった負の念を感じる事が出来る表情だ
暗闇の中にアラーム仮面をつけた人間が立っていたら無条件で恐ろしいと思うのだが

「お、いいもん選んだな。今一番の売れ筋だぜ?」

どうにも人の感覚というのは恐怖よりもネタに走る方向が多いような気がする
多分祭りの雰囲気に当てられて普段じゃ欲しいとも思わないものでも買ってしまうんだろう
しかもどうやら女性に人気のようだ

「カイゼルはこれかな?」

ジュリアンはアラーム仮面を買う事で決定したらしい
自分の分は決まったという事で今度は俺がつける仮面を選んでいる

「…え? 何でそれなの…」

「理由は特に、ない」

ジュリアンが手にしたそれはスクラッチマスクだ
両目と口、3つとも同じ大きさの円が描かれている
表情がないというのか、無表情という表情をしているのか
他の仮面から違うような雰囲気を出していた
ゴブリン仮面などは喜怒哀楽を表現しているような、アラーム仮面は周りの人を驚かせるような
スマイルマスクは名前の通りの仮面だ
だがこのスクラッチマスクだけは仮面が表す表情や感情が込められていない
オペラ仮面やファントムマスクも似たような物だがまったくの別物だ

「んー、まぁ別に何でもいいし…これにすっか」

無表情という存在に惹かれたのかどうか解らないが、俺はスクラッチマスクを買う事にした
そういえば誰かがスクラッチマスクをしていた事をカインに金を渡しながら思った
あれは誰だったか…

「んじゃ俺はこれにするか」

が、そんな考えもカイルのアホな行動の前に消え去った

「おいカイル…それは顔につけるんじゃなくてな…」

「親父、これ貰ってくからな」

それだけを言ってカイルは手にした仮面をつけて店から離脱していった
物凄く突っ込みたい
早く追いかけて行ってカイルの間違いを指摘したい

「ねぇカイゼル、アレって」

「あぁ、狐のお面って確か」

「「顔につけるものじゃない筈」」

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