| 「じゃあペンを置いて答案用紙を後ろから回収。 そこ! 無駄な足掻きをしてるんじゃぁない、キッチリスッパリ終了時間だ」 終わった…何もかも終わった… 2日間続けて開催される前期実力テスト その初日がこの時間をもって終了した 手応えとしては何とも言えない出来だったが、赤点は免れたんじゃないかと思う。思いたい そして残るは明日の職業別のテストのみだ 学科と実技のテストを終えて2日間に及ぶテスト期間は終了する 無事に終わるかどうか解らないが腹を括ろう 第63話 襲撃? 学校近くの店で昼食を取りそのまま学校に戻る どうにも俺にはアコライトとしての基本技能、主に支援に関しての知識などが少々欠落していた 殴りだから、と放置してしまってもいいが、流石にテストともなるとそうも言ってられない 自分一人で勉強をしようにも結構無理な話だ だから今から先生に教えを請いに来たというわけで 「すいませーん」 … 保健室のドアをノックするが反応が無い アコライトの事ならプリースト、と思って来たのにこれじゃ無駄足になってしまう せめて何かしらひとつは教えて貰わねば帰れない 否、自分一人ではどうにもならないから、せめて教えてくれそうな人の所に行かねば死ぬ 「すいませーん?」 再度ドアをノックして声を掛けるが反応が無い どうしたものか… 「って…開いてる…」 何気なくドアに手を掛けるが鍵は掛かっていなかった 俺は勢いよくドアを開けると保健室に入った 「うあ…」 ドアを開けて俺はまず驚いた。というよりも言葉が出てこなかった 荒らされたように色々な物が保険室内に散らばっていた 窓ガラスは割れ、床に散乱している ベッドのシーツは破かれベッドを囲うように掛かっていたカーテンは千切られていた ぱっと見、争ったような痕が所々に見られる と、その時だ、保健室の外で金属同士がぶつかるような音が響いた 俺は散乱したガラスを踏まないように保健室を通り抜け、外に飛び出す そこでは数人の黒尽くめのアサシン風の奴等を相手にしているユツキとサルバの姿があった その周辺には何人かの黒尽くめが倒れていた 黒尽くめ達は様々な武器をそれぞれ手にし、二人と対峙していた 「私達も甘く見られたものデス。 たったの8人しか刺客を寄越さないなんて…脳すら綺麗サッパリ侵食されたデスか?」 ヒュッとユツキがメイスを振り下ろすとそれは槍程の長さに伸びる ユツキが得意としている武器のひとつ、ロングメイスであろう ユツキはロングメイスを構えると地を蹴り一飛びする それと同時にサルバが投げたビンがロングメイスに命中する 青白い光の尾を引いて繰り出されるロングメイスの一撃が一人の黒尽くめに命中する そのままの勢いで足を滑らせ砂埃を上げ、振り向きざまに後ろの奴に一撃を喰らわす 飛び退く残りの一人 そいつに向かってユツキはロングメイスを投げつけた 胸の辺りに命中し貫通する。一瞬何が起きたのか理解出来ない様子だった 流れるような、演舞のようなユツキの舞が終わり、黒尽くめ共は灰となり崩れ落ちた 人ならざるモノ、不死などのアンデッドを聖なる武器で倒した時と同じような現象だ 「表じゃいい顔しておきながら裏じゃ…デスか… 侵食された脳じゃ私達に奇襲をかける程度の考えしか浮かばないみたいデスね」 「奴等も形振り構ってこなくなりましたよね いや…これはまた別の何か…ですかね? どちらにせよ更なる用心が必要ですね」 サルバとユツキは何やら深刻な話をしているようだ また何か色々と裏で起きているようだ 俺達のような奴等には何も知らされる事のないような。知る事すら出来ないような 上の方で揉み消されるような…そんな… 「あ、カイゼルさん? どうかしましたか?」 「あ…えと…」 サルバが急に話しかけるので挙動不審になってしまう 最初から気付いていた…? 「見られちゃったものはしょうがないデスね」 ロングメイスをしまい、こっちに近付いて来るユツキの表情はさっきと違い穏やかなものだった 倒れていた黒尽くめ達もユツキが通り過ぎると同時に灰になっていった ユツキの足に纏わりついてくるように風で流れる灰を、ユツキは踏みつけるようにして払った 体に触れる事にすら嫌悪感を抱くかのような感じだ 「ま、見られたからってどうしたってもんじゃ無いんデスけどね セラフィックゲートが色々と狙われてるのは知ってる事だと思うし」 「はぁ…まぁ、いつだかも男爵が…」 「男爵がどうかしました?」 あれ…男爵がどうかしたんだっけ…? 不意に出てきた自分の言葉に自分で違和感を持った 何とか思い出そうとして記憶を手繰り寄せる 「あって…いててて…」 だが何処かでロックがかかっているかのように、記憶の引き出しを引っ張る事が出来ない その証拠として酷い頭痛が襲ってくる 男爵が何かしら関与しているって事か… これ以上無理に思い出そうとするとおかしくなりそうだ 「いえ、何でもないです…それよりも」 「何デスか?」 「ちょっとテスト勉強で解らない所があるんで、見てもらえないかなって…」 男爵の話は切り上げ本来ここに来た目的を終わらせよう 無理な話題転換かとは思うが… サルバとユツキは少し考えると特に問題が無いらしく快く承諾してくれた 保健室が滅茶苦茶なのに問題が無いってのも凄い話だが 「そうですね、それじゃ図書室にでも移動します?」 サルバはブルージェムストーンを取り出すとそれを放り投げる 歩いてちょっとの距離なのにポータル使用っすか 俺達みたいな貧乏学生には到底真似の出来ない事だ 何はともあれ面倒な事は放っておいて今はテスト勉強だ それが学生の本分であり、優先すべき事 「それじゃお願いします」 俺はそう言うと目の前に出されたポータルに飛び込んだ |