プロンテラ襲撃から一ヶ月が経った

幸か不幸か、襲撃による学園の損傷は何一つ無く3日後からは普通に授業が始まっていた

大して授業に遅れも生じずまったくもってありがたい事にテストの日程も予定通りだ

ほんと、プロンテラ市民どころかプロンテラそのものがタフだよな…

「あー…暑い…暑い…」

だが俺はタフくない

授業中だろうが何だろうが俺は終始机に突っ伏していた

授業の内容なんざまったくもって頭に入っていない

今週にはテストがあるっていうのに大丈夫なのだろうか、俺

しかし勉強に身が入らない奴は意外と多い

というのもプロンテラは夏本番に突入したからだ

春、梅雨、夏、のように順を追って季節が巡ったわけではなく

春から夏に一気に変化したような感じだ

温暖な気候から一気に猛暑の気温

モロク生まれならまだしも、俺のようにイズルート生まれなんていったらグデグデになってしまうだろう

「えーっと、それじゃここまでがテスト範囲だからねー」

そう言ってアリスは黒板にデカデカと赤チョークで『テスト範囲、重要』と書いている

まぁ後でエルリラとかジュリアンにでもノートを借りて写せば大丈夫だろう

勉強は夜の涼しい時間にやるに限る

「ちなみに…赤点を取ったらプロンテラ豊穣祭期間中はバッチリ補習授業だからねー」

何っ!?

マテコラ、何激しいペナルティを課しとるんだ!?

豊穣祭の時は全部の企業や学校が特別に休みとなる日なんだぞ

しかもそれは3日間もあるわけだ

なのに何でみんなが祭りをエンジョイしてる時に補習なぞ悲しい事をしないといけないんだ…

「ま、ちゃんと、ちゃーんと勉強してれば簡単に解ける問題ばっかりだからね、多分他の先生のもそうだよ」

つまり補習を受けるような人間は自業自得だ

そう言いたいわけですか先生

「じゃ、今日はこれまでねー、精々苦悶に満ちた放課後を過ごすといいよ」

強烈な捨て台詞を吐きながら教室を出て行くアリス

教室の扉が閉まると同時に全員が一斉に教科書とノートを取り出す

ホームルームまでの時間すら惜しいという感じなのか、いきなり勉強モードだ

かくいう俺は…

「……真っ白だ…」

自分のノートを開きながら絶望を味わっていた



「とまぁそういう訳で……」

急遽開かれた勉強会

実施場所はもちろん俺とエルリラの部屋

「待て、何でこの部屋に集まる…」

とりあえず思い浮かんだ疑問をぶつける

ジュリアンとカイルと円慈は顔を見合わせ、同時に答えた

「「「なんとなく?」」」

いやまぁ解ってたんだけどさ…

エルリラとアイラに至ってはファッション雑誌なんぞを取り出して読み耽っている

勉強する気なんて微塵もないだろ、お前ら…

「とりあえず落ち着け、落ち着くんだ」

「一番落ち着いてないのはカイゼルなんじゃないの?」

ズバリ正解だ円慈

多分この中で一番落ち着いてないのは俺だろう

他の奴らは普通にくつろいでるしな

「あ、俺はこっちの服の方が好みだなぁ」

カイルにいたっては女性人と何故か服の話題で盛り上がってるし

アイラはそんなカイルの言葉を聞いて残金なんてチェックしちゃったりしてるし

「なあお前、何か食べ物は持ってはいないか?」

「犬ーーー! 集ってるんじゃねーー! ジュリアン、お前も食いモンとか与えるなー!」

もう滅茶苦茶だ…

滅茶苦茶だがそれでもいい、もう俺一人だけでも勉強する

お前らのテリトリーには入らないから俺の勉強の邪魔はすんなよ…



「しっかし赤点取ったら祭り期間中は補習、かぁ…」

そんなこんなで何とか勉強会は開始された

思いの他みんな真面目に取り組んでいる

みんな祭りに行けないってのが効果があったようだ

プロンテラの祭りの規模は相当のものらしい

プロンテラ豊穣祭は連日連夜、3日間ぶっ続けで祭りが行われる

舞台、出店、コンサート、ゲーム、色々な催し物が行われる

祭りに参加出来ない奴はかなーり損する、とまで言われているくらいだ

誰も彼も、何が何でも補習なんて受けたくないだろう

補習が終わってから参加しても、祭りの半分も楽しめないと思うしな

「祭りって言えば…」

魔法戦術の問題を解いていたカイルが突然俺の顔を見る

俺は少しだけカイルの方を見、すぐさまノートへと視線を移す

カイルの話に付き合うくらいなら一文字でも多く書き写さなければ…

「いつだっけなぁ…イズルートの大漁祈願祭、あん時に船を一台流しちまったっての…」

「あ、あーあー、覚えてる覚えてる」

ジュリアンが喰らい付きやがった

だけどそれもしょうがない事だと思う

俺とカイルとジュリアンはその船を流した当事者だから…

しかも祈願祭の歴史上、船を一台沖に流した挙句にバラバラにしてしまったのは初めての事だから尚更だ

思いっきり覚えている、いや、忘れたくても忘れられない

「今頃どーしてっかな、レイン…」

俺もノートを写すのを止め、その日の事を思い出す

祈願祭を思い出せば一人の少女を思い出す

それがレイン…

「レイン? それって誰?」

エルリラも話しに混ざってくる

まぁレインを知っているのは俺とカイルとジュリアンだけだ

円慈がイズルートに来る少し前の事だから円慈もレインの事は知らないだろう

「んー…何て言ったらいいのかな…」

そう言ってカイルは俺とジュリアンを交互に見る

ジュリアンはあからさまに目を逸らした

今更恥ずかしがる話でもないだろ

「多分…初恋ってやつ?」

隠すのもなんなんで俺はきっぱりと言い放った

「へ〜、それってジュリアンの?」

エルリラもジュリアンが顔を逸らしたのを見たのか、そんな事を言ってくる

だけどそれは3割正解

「違うよ、俺達3人の、ね」

顔をこちらに向けないままでジュリアンが言う

そう、俺達3人の初恋

今思えばそれはただの憧れか何かなのかも知れなかった

が、当時の俺に聞かなきゃ解らない事だし…

「ね、ね、良かったら聞かせてくれない?」

目を輝かせながらエルリラは身を乗り出してくる

「そうだな…休憩がてら話してみっか?」

俺はノートを閉じカイルへと目配せをする

カイルは少し笑いながら壁へと座りながらもたれ掛かった

「嘘は言うなよ、嘘はよ」

「言うかよ」

当時の事を思い出しながら…

当時の情景を思い描きながら…

俺はゆっくりと昔話を語り始めた


〜ラヴコメー〜

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