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「ちょっと待て! 何で俺が手錠掛けられて連行されなきゃならん!!」
プロンテラ襲撃の騒動から一夜明けた次の日の朝
まだ早い時間の筈なのに復興作業が始められていた
なのに俺はプロンテラの兵士達に手錠を掛けられ、歩く俺の周りを囲まれ、城まで連行されていた
兵士達の表情は涼しいものだった
ただ黙々と自分に課せられた任務をこなしている
俺を拘束し、身柄を確保し、プロンテラ城まで連れて行くという任務を無言で遂行していた
「くそっ!」
何が起きているのかと作業をしている街人達が俺を見る
兵士達はそんな事などお構いなしに俺の背中へと槍を向けている
理不尽な思いに駆られながらも、俺は仕方なしに歩みを進めた
ある程度の瓦礫は取り除かれたプロンテラの大通りを抜け、噴水の脇を通り
プロンテラ城の門を潜る
昨日の騒ぎの規模こそ大きかったようだが、それ程までに深刻な被害は出ていないようだった
プロンテラ城に至っては襲撃による傷が一切ついていなかった
「連れて参りました」
兵士に連れられて来たのはとてつもなく広い大広間
部屋の入口からは真っ赤な絨毯が伸びていた
「うむ、お前達は下がれ…」
その絨毯が伸びた先にいる人物…
その人物を見て俺は言葉を失った
どうやらここは大広間ではないらしい…
「それと…カイルと言ったか…彼もここに」
その人物は俺の方を向くと軽く笑って見せた
年の頃は30代半ばから後半くらい、上から下まで白い服で身を包んでいる
そしてその後ろにあるのは玉座…
どうやら俺は王の下へと連れてこられてしまったらしい
つまりそう言う事か
どういう事だ!?
それにカイルも呼ばれてるってどういう事だ…
「連れて参りました」
と、声がし、後ろの扉が開かれる
一人の兵士に連れられてカイルが現れる
カイルの表情も俺と同じように困惑したような表情だ
まぁ自分の顔を見たわけじゃ無いんで解らないが…
「さて…」
白服に身を包んだ男が俺達向かって話し始めた
「今日ここに来てもらったのは他でもない、昨日の襲撃事件の事についてだが…」
どうやら俺達は昨日の襲撃事件に関係する事で呼ばれたらしい
ユツキが言ったことがいきなり…か…
「私は回りくどい事は嫌いなんでね、率直な意見…というか…まぁ何だ…昨日起きた事を話して貰おうと思ってね」
「多分王が知っている事くらいしか話せないと思いますが?」
俺の言った言葉を聞いて白服の男は大声で笑い出した
何か変な事を言っただろうか…
多分言ったんだろう、暫くその男は笑い続けていた
「あはははは! 俺は王では無い、これでも騎士団長をやらせて貰ってるヘルマンという者だ」
「えっ!?」
どうやら俺の早とちり
この男は王ではなく騎士団長だったらしい
しかし何でその騎士団長が玉座になんているんだろうか…
「闇のエンペリウム…」
ヘルマンの放ったその一言に俺達は表情を険しくする
だがヘルマンはそんな俺達を見て、なだめるような口調で続けた
「話したくないなら話さなくてもいいが……昨日現れたヤツが破壊されたかどうかを明確にしておきたいんだ」
俺達は何も答えない
普通の冒険者達にその事は話すな、と言われたからだ
それ以上に王家に仕える者に話すのは危険だ、とも言われた
「王に知られるのが怖いか? それともユツキに口止めされたか?」
「何でそれをっ!」
「…こっちも色々事情があってね、だが安心して欲しい、俺は少なくとも敵じゃない」
敵じゃない…?
それはどういう意味なんだ…
「それは一体どういう…」
そこまで言いかけてヘルマンに止められる
「それ以上は言えない…こっちとしても動き辛くなるからな…」
セラフィックゲートはセラフィックゲートで
騎士団には騎士団で何かしらの事情があるのだろう
俺達があまり介入する事もないんでこれ以上聞くのはよしておこう
それにこの男にだったら事の顛末を話しても大丈夫じゃないんだろうか
俺はカイルへと目配せをする
カイルの方もどうやら俺と同じ考えのようで、ゆっくりと頷いてくれた
「それじゃ…どこから話しましょうか…」
「君が思うところからで…」
「それじゃ…エンペリウムが姿を現した所からで……」
〜次回で最後〜
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