何とか寮についた俺達は門をくぐり、寮の敷地内へと入っていった

あの後、途中で数回モンスターに出くわしたが、ポリンやチョンチョンなどの雑魚モンスターだけだった

「あ、きつねさんに男爵…」

寮の扉を開けようとドアノブに手をかけた瞬間に扉が開く

中から現れたのは、寮母のきつねと寮の警備員である法王だった

どちらも手に武器を持ち、既に臨戦体勢は完璧といった状態だった

きつねと男爵は俺達の横を無言で通り過ぎると街に向かっていった

「…2次職ともなると…大変だよな」

カイルが二人の背中を見送りながら言う

確かにそうだろう

戦闘面で言えば俺達のような1次職より数倍も上だ

モンスターが街に侵入、侵攻、襲ってきたとあってはそれを撃退する為に戦いだってするだろう

「ん…」

寮の中に入ると見慣れた人物が一人…

その人物はリビングのソファーに座り、目の前に置かれているカップのお茶を飲んでいた

俺はゆっくりとその人物に近付くと後ろから声をかけた

「…姉さん…何をやってるんでゴザイマショー…」

なぜか俺の目の前にいる姉、アリエル

アリエルは振り返り俺の方へと振り向いた

「何って…お前を待って……カイ…ゼル…?」

俺の顔を見たアリエルの表情が一気に青ざめていく

しまった…そう言えば忘れていた…俺が女になってしまった事を言うのを…

青ざめたかと思えば、今度は憤怒の表情になっていく

「お、お前はーーーぁぁぁぁ!!」

「ちょ、ちょー待て! タイムタイム! ブレーーーイク!!」

カートから斧を取り出し大声を上げる

これでもかと言わんばかりの声を張り上げる

俺はその声とアリエルの表情のお陰で身動きがとれずにいた




「まったく、それならそうとはっきり言ってくれれば良いものの…」

「これだけボコボコにしてから言う台詞ですかマイシスター?」

どうにか誤解は解けたものの、俺の身体は既に戦えない体へと変えられていた

っていうかアリエルによる、蹴る殴るの暴行でボロボロになっていた

「で、何でこんな所にいるんだよ…」

俺は這いずりながらソファーへと腰掛ける

「まぁ何だ…プロンテラが襲われてるって言うからな…」

「ほぅ、つまり俺を心配してくれぐわぁ!?」

最後まで言い切れずにまた吹き飛ばされる俺

なんか最近こんな役回りばっかりなような気がする…

「たまたまよたまたま、偶然」

偶然て…

確か今はゲフェンに修行に行ってる筈では?

偶然にしちゃあ距離あり過ぎませんか!?

だけどそんな事言ったらまたド突かれる

黙っておこう

「そーいう事で私は帰るわ」

「あ? もう帰んの? っつーか外ヤバイって…」

「フン…大丈夫よ」

アリエルはどこからともなく斧を取り出す

その斧の刃には、まだモンスターの血であろう赤い雫がついていた

しかもまだ新しい…

「あぁ、姉さんなら大丈夫だな」

姉さんなら大丈夫だろう

武器を作る材料を集める為に色々な所を回っているからな

それこそ危険なダンジョンにだって潜っている

それにアリエルの実力は俺も知っているし、下手なモンスターじゃ敵わないだろう

「あー…何だ、その…心配してくれてありがとな」

寮から出て行こうとするアリエルに向かってとりあえず礼を言っておく

アリエルはアリエルなりに心配してくれたんだろう

それくらい俺だって解るさ

「たまたまって言ってるでしょ」

それだけ言うと、アリエルは斧を担ぎ上げ、モンスターが暴れている街へと歩いていった


〜まだまだ続く〜