視界が反転する、捻れる、うねる、変化していく

だがそれは一瞬の出来事で、すぐさま見慣れた景色へと変化する

降り立った場所は学園の校門

プロンテラがモンスターに襲われているらしいが、まだ学園の方には来ていないようだった

「ここはまだ大丈夫みたいだな」

ポータルから出てきたカイルが辺りを見回す

悲鳴や怒声、魔法の音やモンスターの咆哮などが聞こえてきた

どうやらモンスターの数はかなり多いらしい

「単独行動はマズイわよね、私達の実力じゃ」

腰にかけたバスタードソードを抜くエルリラ

よく見るとエルリラは少し震えていた

多分俺も他人から見れば震えてたんじゃないだろうか

街を見れば立ち上がる黒煙と、燃え盛る炎の赤色が見える

今までモンスターが街を襲ってきたなんていうのは聞いた事がなかった

普段生活している場が、戦いの場へと変化するんだ、平気でいられる筈がない

「君達は寮に戻って! あそこは魔法障壁が張ってあるから大丈夫な筈だから!」

オークロードと戦った時とは別な剣を取り出しながら言うアリス

出来る事なら俺達も戦いたい、街を守りたい…

と思うのだが、多分俺達じゃ足手纏いになってしまうだろう

「解りました、気をつけて…くださいよ」

教師陣の実力はさっきを見た通り、かなりのものだった

仕方ないけど今は俺達よりも実戦慣れしている他の冒険者達に任せるしかない

俺は手にしたメイスを一層強く握り締めると校門を出、寮に向かって走り出した




「―――っ!」

俺は妙な気配を感じ、足を止めた

後ろに付いてきていた奴等も同時に走るのを止める

そして目の前で起こる怪異

建物の影が激しく揺らぎ、膨れ上がり、形を成していく

召喚にも似た現象が起きていた

形を成した影は色をつけ、その姿を変えていく

現れたソレは包帯を全身に巻いた死者のモンスター、マミーだった

「マミーかっ!!」

言いながらジュリアンはマミーに向かって矢を放つ

放たれた矢は白い光の帯を引きながら、マミーの胸に向かって吸い込まれるようにして刺さる

だがマミーはそれを障害と思っていないのか、矢を胸に刺したまま向かってくる

そしてマミーの影からもう一体、マミーが姿を現す

そしてもう一体のマミーの影からマミーが…

合わせて三体のマミーが俺達の前に立ち塞がった

「チッ!」

舌打ちをしながら俺は横へと飛び退く

それと同時にエルリラが俺の反対方向へと飛び退いた

「激しく吹き飛びなよ!」

ジュリアンが叫びながら一体のマミーへと矢を放つ

弓の弦を引き千切れんばかりに引き、放つ、アーチャーのスキル・チャージアローだ

ジュリアンの放った矢はマミーの額を貫く

しかし矢の勢いは衰えずマミーを後方へと吹き飛ばした

その間に俺はもう一体のマミーに、エルリラは三体目のマミーと対峙した

「く…んなろっ!」

歩みは鈍足であるが、攻撃の手は素早い

反応こそ出来たもののマミーの一撃は俺の肩に振り下ろされた

エルリラはマミーの攻撃を何とか剣で捌いてはいるものの、何発かは受けているようだ

アイラの速度上昇もあってか、まだ致命的なダメージを受けていないのは幸いだった

「立ち上がる熱波の風よ! 炎を紡ぎ出し、燃え盛れっ!!」

吹き飛ばされたマミーの前方に炎の壁が現れる

カイルの放ったファイヤーウォールだ

マミーは炎の壁を突き破らんと突き進むがそれも敵わない

程なくして炎の壁が消滅する

その場には焼け焦げたマミーの燃えカスが残っていた

これで残るマミーは後二体

「流石に…手強いわ!」

エルリラはマミーの一撃を剣で弾くと一歩後ろの下がる

すかさずカイルのファイアーボルトがマミーに降り注ぐ

が、それでも倒し切れず、炎を身に纏いながらもマミーが前進してくる

「邪魔だこの野郎!!」

俺は対峙していたマミーの足に一撃を加える

大したダメージにはならなかったが、一瞬だけでも動きを止めるには効果的であった

俺はマミーの横を通り過ぎ、炎を纏ったままのマミーへとブレッシングを唱える

不死なる存在の者にブレッシングを唱えると、その動きが鈍化し、身体の構造を狂わせる事が出来る

ブレッシングによって弱体化したマミーにハリケーンの刻印が4つ刻まれたメイスを振り下ろす

不死系独特の何とも言えない柔らかい感触が手に伝わる

俺の一撃を受けたマミーは動きを止め、その場に崩れ落ち灰と化していった

残るは一体

「エリィちゃん大丈夫?」

アイラは心配そうにエルリラに声をかける

と、同時にヒールを唱えた

「な、何とかね」

息を切らしながらもエルリラが答える

はっきり言って俺もしんどい

ヒールを貰っているとはいえ、体力までは回復しない

演習から戻って休みもなく戦っているんだ、みんな疲れているだろう

だけどここで気を抜いてはいけない

俺は気合を入れ直すと最後の力を振り絞り、速度増加とブレッシングを自分自身へと唱えた

本当にこれが最後

雀の涙程のヒールを唱える気力すら残っていない

「おぉぉぉあぁぁらぁぁぁ!!」

俺は一気に駆け出すとマミーの頭目掛けてメイスを振り下ろす

が、それはマミーの両腕にふさがれてしまう

「くっ!」

弾くようにして交差した腕を振り上げるマミー

メイスを弾かれ、ガラ空きになったボディにマミーの一撃が迫り来る

「カイゼルっっ!!」

「んげふっ!?」

脇腹に激痛が走る

って脇腹!?

吹き飛ばされながらマミーを見るが、マミーの手は空を切っていた

どうやら俺はエルリラに横から吹き飛ばされたらしい

しかも足で

「うげっ! げふ! ごふっ!」

一瞬呼吸が止まりながらも何とか体勢を立て直す

エルリラの蹴りの方がマミーの一撃よりはダメージが少ないであろう、ナイス判断だった

「突き刺されぇ!」

エルリラの顔のすぐ横を通り、ジュリアンの放った矢が飛んでいく

矢はマミーの腕を貫く

間髪入れずにエルリラの横薙ぎがマミーの胴体に入る

だが剣はマミーの胴体を切り離す事が出来ず、途中でその勢いを無くしてしまう

「しまっ―――あぐっ!」

マミーに殴り飛ばされ地を転がるエルリラ

「ちっくしょうがぁぁぁぁ!!」

俺は地を蹴り、マミー目掛けて走り出す

マミーはゆっくりながらもこちらに振り向き、高く上げた腕を振り下ろしてくる

俺は前進しながらも一歩、一歩だけ横に飛びながら軸をずらし、マミーの一撃を避ける

そのまま俺はマミーに刺さったままの剣を掴み、思いっ切り振り抜く

ブチブチ、というマミーの体に巻き付いている包帯が裂ける音が響く

そして真っ二つになったマミーの上半身が地面へと落ちる

俺はマミーを倒したのを確認するとバスタードソードを地面に落とし、そのまま地面へとへたり込むようにして腰を落とした


〜アコは刃物を扱ってはいけません〜

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