「いてててて…」

頭を押さえながらカイルが立ち上がる

サルバのヒールによって幾分かダメージは無くなっているが多少のダメージは残っていた

の、わりには爆心地付近にいたユツキとアリスは妙にピンピンしていたが…

「まさかオークロードが出るなんてね」

エルリラは吹き飛ばされた剣を拾い上げながら言った

正直ソレは俺だって予想だにしていなかった事だ

むしろここにいる全員がそうだろう、あのクラスのモンスターに出会うなんて夢にも思っていなかったはずだ

教師達がいなかったら今頃俺達はどうなっていただろう

「それより他の生徒達はどうなったんだろ…」

ジュリアンのその言葉に教師陣が顔を見合わせる

「あーーーーっっっ! 忘れてたデスっ!」

ユツキが頭を抱えながら叫ぶ

「盲点だったね」

そんなユツキの肩に手を置きながら言うアリス

盲点っつーか…なんつーか…

戦闘以外はぬけてるな、この先生方…

「と、とにかく、探さないと」

サルバが駆け出そうとしたその時、WISを知らせるアラームが鳴り響いた

しかし、この音は俺の音じゃない

カイルを見る、違うらしい

ジュリアンでもエルリラでもアイラのものでもない

「はいはい、こちらユツキ」

ユツキは胸元に手を入れると、そこからICカードを取り出す

って、そんな所に入れていたのか…

そして何でユツキ先生を睨んでますか我が担任…アリス先生よ…

「って、アサギち? 今どこ? え? プロンテラ? 何で戻ってるデスかよ!?」

「え? アサギさんって…2階の前にいた筈じゃ…」

ユツキの言葉を聞きサルバが呟く

俺達は何の事だか解らずに、ただその様子を見ているだけだった

俺達は特にやる事もなく、その場に留まっていた

っていうか俺達だけじゃ街に戻れないっていうのもあったのだが

「これからどうするんだろ…」

どこから取り出したのか、カイルが芋を齧りながら言う

お前は一体いくつ芋を隠し持ってるんだと聞きたい

復活したばかりなのに芋を食えるお前の精神を調べたい

まったくカイルは逞しいというか何と言うか…

「さぁ…」

どうにも緊張の糸が解れた俺はやる気のない返事を返す事しか出来なかった

半分はカイルの切り替わりの速さのせいもあるけどな

「な!? それじゃ今から戻るデスよ!」

何をする訳でも無くボーっとしていた俺達の後ろでユツキが大声を上げていた

というより、その声には驚きの感情も込められていたと思う

ユツキは手早くICカードを閉じると、肩より少し長い髪を後ろで纏めた

そして胸元からブルージェムストーンを取り出すと、それをサルバへと投げた

「あ、ちょ…う…わ…痛いぃぃ」

それを受け取ろうとして失敗するサルバ

聖書を持った逆の手、左手はブルージェムストーンを受け取る事なくだらんとしていた

というよりむしろ上に上がらなかった

「ってサルバさん腕の骨折れてるしー!?」

そこでサルバの左腕が折れている事に気付く教師3人

オークロードに踏まれた上に物凄い音がしてたはずだ

気を失っていた他の奴らはいいとして、本人すら気付いていないってのはどうなんだ

「どうりで腕が動かないと思ったら…」

思ったらって…

その感覚ってのはアリなんですか!?

3人の教師の中でもマトモと思っていたのに、やっぱりこうなるのか…

「切り傷とかならいいけど、骨折なんてヒールじゃ治らないんデスから…ねっ」

ユツキはチェインの鎖部分を引き千切り、プリーストの服のスカート部を半分切り裂く

チェインの柄の部分を添え木とし腕に添え、スカートを使って腕を固定する

「これで出来たデス」

「っっっっ!?」

応急処置を終え、腕を軽く叩くユツキ

せんせー…それって追い討ちになるんじゃないんですか…

「って、こんな事してる場合じゃないデス。早くプロ行きのポータルを出してくださいよ」

ユツキは落ちたブルージェムストーンを拾い上げるとそれをサルバに渡す

そして右手にロングメイスを持った

「演習終わりですか?」

エルリラはユツキに尋ねた

っていうか終わりなら他の生徒はどうするんだろう

考えたくも無いが全滅って事になるのか…

「他の人達はどうしたんです?」

と、アイラ

オークロードクラスのモンスターが出てきたんだ、普通は他の生徒の心配はするだろう

アイラの表情には最悪の結果が出ているかもしれない、という考えが滲み出ていた

「2階前にいた教師、生徒共にプロンテラに戻ってるデスよ」

戻っている

ということは全員無事らしい

しかしユツキの表情は曇ったままだった

まさかみんな大怪我を負っているとか、命に関わるような怪我を負っているとか…

だがユツキが発した次の言葉はそれ以上にもっと深刻なものだった

「でも、プロンテラが今モンスターに襲われてるデス」

ユツキの言葉と同時にサルバがブルージェムストーンを放り投げる

それは空中で5つに割れ、地面に落ちる

それぞれの欠片が光で繋がり五芒星を作る

そしてそれを囲むようにして円が描かれ、そこから光を発する

空間転移魔法、ワープポータルだ

「さ、早く乗って、いざとなったら君達にも戦ってもらうからね」

言ってポータルをくぐるアリス

話を纏めると、今、プロンテラの街がモンスターに襲われているらしい

そしてなぜか他の生徒達も既に街に戻っているらしい

どうにも慌しい感じがする

以前のバースリーといい、今回のオークロードといい、どうにも偶然に起きた事ではないような気がする

街が襲われているのもそう思う

何でそう思うのか聞かれると答えに迷ってしまうが、そう思う

何かこう、心の奥底では何かを知っているような、こういう事態が起きる事の『元凶』を知っているような…

そんな気がする

闇のエンペリウム、この言葉もなぜか頭から離れない

金色の石、これも目に焼きついて離れない

「あーっ! もう何なんだよ最近っ!!」

だけど今はそんな事を悠長に考える時間などなかった

少しでも早く街に戻り、少しでも多くのモンスターを倒さなければ

俺は半ばヤケクソ気味にメイスを握るとポータルの中に入っていった


〜ナイチチ…〜

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