静寂が空間を支配する

不気味で心地良い静寂が辺りを埋め尽くしていく

不思議と身体の痛みは感じなかった

何秒間そうして黙っていただろう、身動きひとつ取らずにいただろう

長いようで短い時間が流れた

「大丈夫?」

先に口を開いたのは騎士の方だった

スクラッチマスクを顔に被せている騎士のその声は思っていた以上に若い声だった

「あ、あぁ、何とか…」

俺はゆっくりと起き上がると思い出したかのように自分へとヒールを唱える

そして辺りを見回す

気を失ってはいるものの、ユツキとアリス以外は生命に関わる程の大ダメージは受けていないようだ

それ以上に俺のダメージの方が高かった

不意に襲ってくる身体の痛み、今頃になって受けた傷が痛み出した

「あ…っが…いてて」

歩き出そうと足を踏み出すが痛みで膝を付いてしまう

が、それも一瞬の事

緑色の光が俺の身体を包み、傷を治し、痛みを和らげていく

「危機一髪、ですかね」

声のした方を振り向くとサルバが立っていた

サルバは倒れている他の奴らにヒールを唱える

全員にヒールを唱え終えるとゆっくりと騎士へと近付いていった

「影守さん…一体今まで何処に」

どこか寂しげな表情で仮面の騎士――影守へと問いかけた

どうやら知り合いのようだ

よく見るとサルバの聖書と影守のガントレットには同じ紋章、エンブレムが刻まれていた

「迷さんを探してるんですね…?」

「…我は…」

影守はサルバに対して背中を向け、語り始める

「影守という名は捨てた、今は自分の死に場所を求めてこの世を彷徨う…スレイヤーというただの騎死…」

一切の感情を込めずに言う影守

ただ、その言葉の中には信念のような、決意のような、揺ぎ無い想いが感じて取れた

「戻ってきても…いいんですよ?」

それを聞き、サルバが続ける

だが影守は振り返らずに

「自分の生き方は自分で決める故…すまない」

それだけを言うと影守は足を進め、ダンジョンの奥へと進もうとする

サルバはただ動かず、その背中を見送りながら言った

「待ってますから、ユツキさんもアリスさんも僕も、それに他の人達だって」

俺の計り知れないような世界が、空間がそこにはあった

きっと、過酷な運命とかそんな感じのものが…




暗がりを歩く影守

少し歩いた所で足を止める

直後に影守の少し先で空間が揺らめいた

揺らぎの中から白い光が現れ、動き出す

光は線を描き、ある程度の大きさの四角を作るように走る

空間が裂け、その四角の空間から茶色の髪を持ち、サングラスをかけたプリーストが出てくる

空間の裂け目が閉じ、それは一枚の本のページへと変化する

「騎死、どうだったよ?」

プリーストは影守の姿を確認すると少し速めの歩調で影守に近付く

「闇のエンペリウムだった、だがただの欠片…」

「ふむ、じゃあもうここには何もないな、何も感じない」

そう言うとプリーストはオリデオコンで装飾された本を取り出す

魔力を練り、呪文を紡ぎ、思考する

それに反応するように本が開き、中ではページが暴れるようにざわめく

そして一枚、ページが飛び出し空中で静止する

「次はどこ行くよ?」

プリーストが尋ねる

「死の匂いが充満する地へ…」

影守はゼピュロスを握り締める

「まぁ気の向くままに…」

プリーストは魔力を開放し、呪文を発動する

ページが光を放ち、空中で線を描くように走り出す

そして光は四角を描き、空間に『穴』を顕現させた

それを確認すると、2人はその『穴』に入っていく

暫くして消える光、空間の裂け目――『穴』

そして残るは静寂のみだった


〜次回へ続く〜

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