普段はダンジョンの奥深くに生息している筈のオークロードが今目の前にいる

今までこれ程までに強大な力を、強大な存在感を、強大な恐怖を持ったモンスターなど見た事がなかった

それは俺だけではなく俺のパーティーの奴ら全員がそうだろう

その強大な、迫りくる、覆い被さるようなオークロードの存在感を前にして俺達は声ひとつあげられなかった

「―――っ!」

恐怖に縛られて動けない俺の頭の上にそっとユツキの手が置かれた

そして俺の方を見ずにユツキは続ける

「大丈夫、あなた達は私達が守るデス」

ただそれだけ

ただその言葉だけで幾分か気持ちが落ち着いた

俺の頭からユツキの手が離れた

それと同時にアリスとユツキが武器を構えオークロードに飛び掛る

「シィ!」

一刀、アリスがオークロードの肩口を目掛けて剣を振り下ろす

しかしオークロードはそれを半歩退いて避ける

その半歩分、アリスより飛び出したユツキのソードメイスが横薙ぎに放たれる

ユツキの放ったソードメイスは吸い込まれるようにしてオークロードの左腕を打ち付ける

が、大したダメージもないようだ、オークロードはそれを気にせず右の拳をユツキへと振り下ろす

それよりも早くユツキの体を白いオーラと風が取り囲む

素早く詠唱を終えたサルバがユツキへと速度上昇をかけたところだった

オークダンジョンに流れる生温い風が一瞬揺らめく

その一瞬あとに振り下ろされるオークロードの拳

しかし既にそこにはユツキの姿は無かった

どうやら先ほどの風の揺らぎはユツキが走り抜けた影響のようだ

オークロードの後ろに回り込んだユツキの髪が少し送れて揺れる

自分の背後を取られた事を理解したオークロードが地面から拳を引き抜きながら、その反動を利用して裏券を放つ

「だけど遅いっ!!」

それを見逃さずにアリスは上から下へと手にした剣を振り抜く

そして響く怒声、少し遅れてオークロードの腕が切り落とされる、剣速に時間の速さが追いついていないようだった

「好機!!」

手早くソードメイスをメイスへと持ち帰るユツキ

そのメイスの柄を捻る様にして引っ張る

それはメイスよりも槍に近い長さにまで伸びた、中距離攻撃用のロングメイスだ

それに合わせるようにサルバがレックスエーテルナをオークロードに

イムポシティオマヌスをユツキに唱える

「せぇぇぇぇい!」

詠唱が終わるタイミングに合わせロングメイスが振り下ろされる

今度は外れずに、オークロードの兜を叩き割り、鈍い音を響かせた

二度目の怒声

それと共にオークロードの影が蠢く

影は形を作り、色を付け、ハイオークへと姿を変える

そのモンスターの種族の頂点に立つ者のみが使える『召喚』というものだ

その数、軽く見積もって10匹以上

しかもオークウォリアーの色違いと思ってはいけない

ハイオークの強さはオークウォリアーの10倍以上と言われているのだから

「質より量で勝負ね、昔のユツキちそっくりだよね」

そう言いながらアリスは剣を構え、氣を練る

練られた氣はアリスの身体から溢れ、金色に輝く

発動すれば少しの間、剣激のスピードを高める事の出来る騎士のスキル、ツーハンドクイッケンだ

「毒キノコばっかり狩ってましたもんね」

そう言いながらサルバはアリスへと速度上昇をかける

直後アリスの姿が消え、一筋の光がハイオーク共を通り抜ける

その光が消える前にまた一閃、それが消える前にまた一閃

また一閃、また一閃、また一閃、また一閃…

一閃一閃一閃一閃一閃一閃一閃一閃

何本の光が通っただろうか、ツーハンドクイッケンの力が消えたアリスが剣を地面へと突き刺す

それを合図に細切れになるハイオーク達

「今は量より質で勝負してるデスよっ!!」

ハイオークの骸の中に立ち尽くすオークロードに向かって突撃するユツキ

何を思ったのかロングメイスを放り投げて飛び掛る

迫るユツキにオークロードは残った左手で殴りかかる

それを少し屈んで避け、垂直に伸ばした右腕をオークロードへと叩きつける

そのままオークロードの身体を支点に半回転、背後を取る

ユツキはそのままオークロードを抱え、持ち上げ、頭からオークロードを背後へと投げる

投げっ放しジャーマンだ…

まだユツキの攻撃は続く、倒れ込んでいるオークロードの頭を脇に抱え、今度は垂直に持ち上げる

そしてそのままオークロードの頭を地面へと叩き込む

DDTだ…

まだまだユツキの攻撃は続く

オークロードの両足を両脇に抱え込んでグルグルを回し始める

ジャイアントスイングだ…

「アリスちだってー! その村正精錬するのに丑の刻参りしてたじゃないデスかー!」

言いながらオークロードをアリスへと投げ付ける

アリスは剣を鞘に収め、それを迎え撃つ

「まあでも…」

居合い抜きの要領で剣を滑らせる

オークロードの身体を伝うようにして光が走る

「「昔の事だし」」

二人同時に言葉を発する

アリスの後ろでは壁にぶち当たって絶命しているオークロードの骸があった


〜ありえねぇ…〜

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!