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…だら〜
…だら〜〜
…ぐでぇ
「なぁ…円慈」
だらぁ〜
「何? ジュリアン…」
ぐでぐでぇ
「カイゼルの奴…どうかしたの?」
「よく解んないけど、朝からあんな状態なんだよ」
何やら後ろからジュリアンと円慈の話し声が聞こえる
だが俺は昨日の疲れが抜けておらず、どうにも元気が出ない状態だった
まともに話をするのもつらい
俺は机にだらしなく突っ伏すと、顔を左に向けたり右に向けたりとを延々と繰り返していた
「なあカイゼル」
「あ゛〜?」
ジュリアンが近づいて俺に声をかける
俺はやっとの事で上体を起こし、ジュリアンの方へと体を向けた
動作のひとつひとつを繰り出すのがダルい
「どうかした? 疲れてるみたいだけど」
「あ゛〜……き、聞かないでくれ…」
ジュリアンの言葉に反応して俺の脳は昨日の出来事を思い出す
いわゆるフラッシュバック、またの名を走馬灯
俺に取っては思い出したくない記憶、しまい込んでおきたい思い出…
ぶっちゃけ悪夢
「何があった」
円慈はどこか楽しげに聞いてくる
人の気も知らないで呑気なもんだ
「…察してくれ……」
俺はそれだけ言うと視線を外へと移した
窓から差し込む日の光が眩しいくらいだった
本当に眩しい、汚れちまった俺のような人間にはお天道様は眩しすぎる…
「で、カイルの奴は何なんだ…?」
物思いに耽ってる所でジュリアンによって現実へと引き戻された
そう言えば忘れていた…
俺の身に起きた事もそうなんだが、昨日の一番の被害者はカイルだろう
まぁ犯人は俺のわけなんだが…
チラっとカイルを横目で見る
俺のようにグデグデダラダラしているわけでなく、放心状態とかそんな感じだった
「…まぁそれも…察してやってくれ…というかそっとしておいてあげよう…」
そう言って俺はまた外に視線を向けた
「カイルだしいいか」
「カイルだしな」
後ろからそんな声も聞こえてきたが気にしない
だってカイルだし
気がつけば放課後
厳密に言えば、目が覚めたと思ったら放課後
勿論今まで行われていたであろう授業の内容なんて頭になんて入ってはいない
そりゃ聞いてなかったんだから当たり前なんだが…
だがそれ以上に気になった事
授業中だろうが休み時間だろうが起こさなかったのはいい、それはいい、まだいい
でも何で昼休み、昼食時さえも起こさないんだ!?
そんなのを人に期待するのが間違いだとは思う、が
…俺はいったい何時間寝てたんだ
「う〜ん…」
眠気眼を擦りながら辺りを見回す
どうやらホームルームが終わってすぐのようだった
帰る奴、残る奴と様々いたが、まだ教室に大勢の生徒が残っていた
「しっかり準備しておかないと、な」
「…んぁ…?」
ジュリアンがよく解らない事を言っている
完全に目が覚めておらず、俺はその声に反応するだけの間の抜けた返事しか出来ない
「だから、明日の演習」
俺はその言葉でようやくジュリアンの言ってる事を理解した
ジュリアンが言うには、明日の朝から演習があるらしい
前回のような実地訓練ではなく、集団――1PTによる散策から戦闘までの行程を辿った本格的な演習になるらしい
付き添いの教師がいるものの、積極的には手助けをしてくれないらしい
つまりは『より実戦に近い訓練兼授業』
「ぁー…そうだなぁ、下手すりゃ死ぬからな」
今までは、一応死人や何かは出てないらしいが重傷者は結構出ているらしい
ふざけた気分で参加するとそれこそお陀仏だ
あんまりダラダラしてるのは駄目だな
「またあん時のパーティーを組むんだろ?」
とジュリアンは自分のICカードを取り出しながら言った
前回のパーティーメンバーといえば…
「俺とジュリアン、円慈にエルリラと…カイルに…アイラ…か……うぁぁ…」
あの後パーティーを解散していないんでまだICカードには前回のパーティーメンバー情報が残っていた
その中の2人の名前を見て嫌な汗が出る
それと同時に思い出す昨日の出来事
「やばい…」
「ん?」
「いやいやいや、何でもない」
また何かしら起きそうな予感がする…
〜男と女の・・・〜
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