「っは…あ〜…」

メインストリートから少し外れた所にその建物はあった
周りの建物と同じような外観をしているが、普通の建物とは何か違ったオーラに包まれていた
ゆっくりと歩を進め、寮の門の辺りにまでやってくるとそのオーラの意味が理解出来る
聖なる力によって寮全体が守られているのだ
しかも尋常じゃない程のオーラが全ての敷地を覆っていた

「古代呪文-エンシェントスペル-…か」

現在のマジシャンが使うような魔法と違い、複雑な式――つまりは魔法を発動するための呪文が異なり
簡易魔法などとは違う本格的な魔法、それが古代呪文だ
天候を変化させたり空を飛んだりも出来るらしい
だが呪文といっても魔法だけじゃないらしいが…殆どの古代呪文が魔法として利用される
まぁ魔法として一括りにしてしまってもいいだろう
この寮全体を覆っている障壁も多分セイフティウォールの元となった魔法だと思うし


第3話 寮生活開始


「何か用?」

ずっと門の前に立っていたので不振に思われたのかもしれない
俺は声のした方を振り向く。そこにはゴブリン仮面を被った女ウィザードが立っていた
向こうにとっては俺が不審者に見えるかもしれない
だがしかし
何ていうか…滅茶苦茶怪しいですよ。あなた怪しいですよ

「あ、えっと…今日からここに入る事になってるはずなんですけど…」

見た感じここの関係者のようだ
今日から寮に入れるらしいので話しは通っているだろう

「えーっと…今日からって事は…」

ゴブリン仮面の人は胸の谷間からメモを取り出して読んだ
どっかの女泥棒じゃないんだからその行動はどうよ
メモを確認し終えるとまたメモを胸の谷間に突っ込んだ
何て言うか逆に豪快だな

「どうしたの? 何か私についてる?」

「え!? いやいやいや、何でもない…です」

「そう? じゃあ付いてきて」

俺はそのウィザードの後を追っていった
中庭を抜けると寮の玄関が見える。少し大きめの両開きの扉だ
ウィザードはその扉を開けて俺を中に招き入れた
中に入って最初に目が行くのは内部の作りだ
外観もそうだが、プロンテラの建物はイズルートの物と作りが異なる
俺はまるで別の国に来たような気分になってしまっていた

「えーっと…2階の一番奥だから…」

階段を上りながら袋の中を何やら探しているゴブリン仮面
袋の中からは金属がぶつかるようなチャラチャラとした音が聞こえてきていた
そしてお目当ての物を見つけたようでそれを取り出す
取り出したそれ――束になった鍵をひとつのドアの鍵穴に差込みゆっくりと回した

「一応荷物は届いてるから、後はえーっと…これがこの部屋の鍵ね」

「あ、どうも」

俺は鍵を受け取り部屋に入る
大量のダンボールを横目にとりあえず上着を脱いでそこら辺に投げる
ダンボールの数、軽く見積もって10個か…
10個!?
何か妙に多いような気がするけど気のせいか…?

「まぁ本は大量に持ってたけどさ…」

ダンボールの数を見ては溜息を吐く
引越しの宿命というか、片付けの事を考えると憂鬱になる
この片付けは何時間掛ければ終わるのだろうか
いっその事このまま放って置きたい気分になるがどうしたものか

荷物と睨めっこをする事数分
俺のIDカードが軽快な音楽を響かせる
無敵超人ダディナザンのテーマ曲だ
俺は胸ポケットからIDカードを取り出しWISの着信を確認する
どうやら友人のカイルからのようだ

「もしもし? どした?」

『おいおい、お前がどうしたんだよ?』

会話を始めるや否やカイルの叫ぶ声が聞こえる
時間的にそろそろカイルが俺の家に来る時間だろう
だが俺は自宅にはいない、寮にまで送り飛ばされてしまっている
家族総出での企みによってまさに監獄に送られた受刑者のような感じだ
まさに隔離生活、スパイスが効いてる感じが何とも言えない

「なんつーか家追い出されて寮暮らしだよ」

『寮かよ! 何だ、俺はてっきりついに家を追い出されたのかと思ったぞ』

「追い出されてるんだよ…」

人の話を聞いてないのかボケてるのか…
今のこの状態では笑うに笑えない。本当に追い出されたわけだし
まぁこんな時にWISが来たのも何かの縁だ、このまま荷物の整理を手伝って貰ってもいいだろう
カイルはマジシャンをやってており、そんなに力がある訳じゃないが一人でやるよりいいだろう
今は猫の手すら借りても問題はない筈だ

「あ、そうだカイル、今時間空いてるか?」

『俺は何時でも暇だけど?』

予想してた答えだ
こいつに予定や何かを期待するのは無謀って事だ

「じゃあさ、引越しの荷物の整理のてつだ」

『ツーツーツー…』

用件を言う前のWISを切られた
動物的勘で逃れたか…あなどれん
今度はこちらからWISを飛ばす
だが、IDカードの画面にはこう表示されていた

『お客様のお掛けになった…』

「拒否かよ!!」

何てことだ、WIS着信拒否を使われた
つまりそれは俺一人でこの山のような荷物を片付けろという事か…
何だか途方も無い作業のように思えてきた
まぁもうそろそろ昼食時になるし、その後からでもいいだろう
俺は荷物を見なかった事にし、部屋を出て行った
今日の昼飯は何にするかな…

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