「さて…」

サルバはお茶を飲み終えティーカップをテーブルへと置く

そして手馴れた手付きでティーセットを片付け、保健室の扉へと歩いて行く

そのまま鍵を閉めると俺達の方へと歩いてきた

「…変な気起こさんでくださいよ…」

ありえないとは思うが一応言っておく

生徒と先生のチョメチョメな情事とかすっぱ抜きになんてされたくないからな

まぁ、そんなスキャンダラスな事を記事にする新聞部がいるかどうかは別として…

「変な気…?」

「あ、いや、何でも無いです」

サルバの言葉に間髪入れずに即答するカイル

ついでに『あんまり長引かせるな』的視線を俺に送ってきた

へいへい、さっさと終わらせましょうかねぇ

「で、何で俺達を呼び出したんですか?」

俺は率直な疑問を言った

雰囲気からして説教とかそんなんじゃ無い様に思える

いや、思えるだけなのかも知れない

もしかしたらこの先生は、普段は仏のような性格なのだが一旦怒ると全てを破壊する鬼のようになるかもしれない

人間見た目じゃ解らないものだしな

「まず…君達が帰った後に校舎を調べてみたんですが…」

そう言ってサルバは閉めてあったカーテンを開いた

ベッドに寝ている奴を隠す為に備え付けられているカーテンを開くと、そこには一人の少女が眠っていた

「資料室の中で倒れていたのが見つかりました。あぁ、見つけたのはユツキさんですけどね」

資料室の中で…

もしかして噂にあった消えた女子生徒なのか?

バースリーに襲われた…とか…

「幸い命に別状は無いんですが…ひとつ気になる事がありまして」

「もしかして、それで俺達を呼んだんですか?」

カイルが尋ねる

サルバはゆっくりと無言で頷いた

しかし気になる事がある

「何でジュリアンと円慈がいないん?」

そう、昨日の事に関して呼ばれていたのなら、ここにいるべき人間の数が足りない

ジュリアンと円慈がいないのだ

「それは昨日いた他の二人ですね?」

と、サルバが聞いてくる

俺達4人は、昨日この場所でサルバに治療を受けていた

カイルが呼んであるものかと思ったがどうも違うようだ

「それは…私からは言えません…なので」

そう言ってサルバは一通の封筒を差し出した

ピンクを基調とした可愛らしい封筒だ

俺はそれを受け取ると裏面を見たり表を見たりした

「後で読んで置いてくださいね」

「はぁ……」



教室に入り改めて封筒を見つめる

ピンクだ、思いっきりピンクだ、これをピンクではないと否定出来ないほどにピンクだ

これもサルバの趣味なのか

「何だろな、これ」

まだ俺達以外に生徒がいない教室でピンクの封筒を見つめる男二人

シュールだ

「あー、そだそだ、聞きたい事があったんだよ」

俺はカイルに封筒を投げ渡した

カイルはそれを慌てて受け取る

「聞きたいこと?」

「…何で朝も早くから学校なんかにいたんだ?」

「いやぁ…昨日の事が気になってさ…」

「あれはもう終わっただろ? っつーか俺はもう関わりたくないんだが」

「ふつーーーーーに疑問に思わないか? 何で魔物が校内にいたとかさ…」

しまった、それは盲点だった

というか何でそんな基本的な事に目が向かなかったんだ俺は

何か原因があってこその結果なんだ

何が原因かは解らないが実際に魔物はそこに居た

確か魔物を召喚する枝の話を聞いた事があるが…

「枝…か?」

「その線もあると思うんだけど、あの部屋は本当に使われていなかったらしいんだ」

じゃあ鍵はずっと前からしてあったって事か

そうなると誰かが中に入って枝を使ったとかそういうのは無さそうだ

じゃあ何が原因なんだろう

「うーん……」

「むぅ……」

男二人が教室内で悩むの図

まったくもってシュールだと思う

しかしいくら考えたって何が原因かなんて解る筈もなかった

「ま、考えたって解る筈もないか」

カイルはそう言うと鞄から芋を取り出し頬張る

「朝食ってないから腹減ったよ」

「あ、そう…」

そんなカイルは放って置いて俺は机に置かれているピンクの封筒を手に取る

そしてその封筒を開けると中を確認した


〜次回へ続いてみる〜