そう大して時間は経っていない筈なのに、随分時間が経ったように思える

今飛び降りてきた階段を睨み付け武器を構える

1秒…まるで1分にも感じる

10秒……まるでそれが10分のような…

―――ヒュィン!

「しまった! 後ろだっ!!」

俺は隣にいたカイルを突き飛ばし、その反動でカイルとは逆方向に飛ぶ

その瞬間、今までカイルがいた場所に振り下ろされる棒の様な物

それは乾いた音を発し、床へと叩き付けられた

「散れ! 散って囲めっ!」

ジュリアンがダブルストレイフィングを素早くソイツに放つ

しかしジュリアンの放った矢はソイツにかすりもせずに後方へと流れていった

「何だよこいつっ!!」

今まで雲によって隠れていた月が顔を出し、辺り一面を淡い光で覆った

月明かりは俺たちを照らし、そしてソイツを照らす

「…バース…リー…?」

そこに現れたのは魔法のローブを着て箒に跨っているバースリーだった

だがそれは普通のバースリーとは違っていた

それもそのはず、老婆の姿をしておらずどう見ても20代程度の姿をしていた

「今日は4人もいるのねぇ…」

喋った

今までバースリーが言葉を発したという報告や資料なんてものは無かった筈だ

そもそも人間の言葉を喋る魔物は限られている、と聞いていた

だが目の前にいるバースリーは言葉を発した

「昨日の子は美味しかったわ…しかも今日は結構な男前がいるじゃないか」

バースリーはそう言うと、カイルの方へと視線を向けた

「ありえねぇ! こんな奴に食われてたまるかっつーの!」

カイルは杖を構える

それに反応するかのようにジュリアンと円慈も武器を構える

「食べるのは魔力だけ、何でか解らないけど…飢えてくるん……だぁぁぁぁ!」

突如カイルに向けて突進してくるバースリー

カイルはそれをギリギリで避けてファイアーボールの詠唱に入る

カイルが詠唱をしている間、俺と円慈はカイルの前に出、時間を稼ぐ

狭い廊下を上下左右、縦横無尽に飛び回り俺達に襲い掛かってくる

「てめえっ!」

俺は迫り来るバースリーにメイスを叩き込む

が、それは虚しく空を斬るだけで手応えがなかった

円慈の一撃も、カイルのファイアーボールも素早い動きのバースリーには当たらず外れるだけ

「あ…ぐっ…」

「ジュリアーーン!!」

手にした弓を落とし崩れるジュリアン

その場所にはバースリーかゆらゆらと揺れていた

バースリーはゆっくりとこちらに振り返ると、またもや驚異的なスピードで迫ってくる

先程よりも更に速い

「ちっ!」

俺は何とかバースリーの攻撃を避ける

だがその直後、円慈とカイルが声も上げずに倒れこんだ

間髪入れずに次の攻撃を繰り出してくるバースリー

俺は何とかメイスで受け止めようとするが、それも弾かれる

だが、それだけでは勢いは衰えず、バースリーの攻撃は俺の脇腹の当たった

「ぐ…げふっ」

そのまま壁際まで俺は吹き飛ばされる

その衝撃で口からは少量ではあるが、赤い雫が零れ落ちる

「あ…ぐ…ぅ…」

何とか起き上がろうとするが激痛が走り、体を動かす事さえも出来なかった

倒せなくてもいい、あいつを追い払う事さえ出来れば

それだけを思い、激痛の走る体を無理やり起こし、壁にもたれ掛かりながら立ち上がった

そんな俺に対しても容赦なく襲いかかって来るバースリー

死の間際に立たされた人間の力ってやつなのだろうか

バースリーの動きが物凄くゆっくり見える

「おああぁああぁあぁぁぁあぁぁあぁあああ!」

俺は床に転がっているメイスを手にすると最後の力を振り絞り、向かってくるバースリーに対し

メイスを力いっぱい叩き付けた

その時だった、メイスが白い光を放ち、辺りを光で覆いつくす

いや、そのように見えただけなのかもしれない

次の瞬間にはその光も止み、迫ってくるバースリーが見えたのだから

「あぁああああぁぁぁぁあぁ!」

しかし俺のメイスは乾いた音を発しながら床に叩き付けられただけだった

ゆっくりと、自分が床へと倒れこむスピードさえもゆっくりと感じられた

しかも不幸な事にバースリーの攻撃が迫ってくるのもゆっくりと感じられる事が出来た

あぁ、ここで俺は死ぬんだな、そう思った瞬間だった

俺の頭部に当たるはずだった攻撃は命中せず、代わりにバースリーが横方向へと大きく吹っ飛んだ

俺とバースリーとの間に入り込むひとつの影

それが誰だかを確認する事もなく、俺の意識は遠退いていった

〜次回を待て〜

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