「そいやカイゼル、最近妙な噂が立ってるの知ってるか?」

朝、教室に入ると先に来ていたカイルが俺に話しかけてくる

「はぁ? 噂?」

「結構話題になってるんだけどな…」

カイルはそう言うが、俺は話題とか流行には疎い方だった

やれこれが流行ってるだとか、今人気の物はどれだとか

自分の興味のあるもの以外には目が行かない性質だ

「で、それがどうかしたのか?」

どうせカイルが持ってくるような話題だ、たかが知れてる

もしくは何かの厄介事、どっちにしろ関わらなければいい事だ

「開かずの間って知ってるか?」

「開かずの間? いや」

「何でも夜な夜なその部屋から物音が聞こえてくるんだと…」

聞いてから思ったがまったくもってどうしようもない

いきなり開かずの間とか言い出した割には何の捻りも無い話で終わってしまった

「で、その開かずの間ってのはこの校内にあるらしいぜ?」

「ふ〜ん、ありきたりな怪談話っぽいな、それ」

何かを期待するような眼差しを向けてくるカイルから目を逸らし、窓の外を見た

解る、俺には解る、こいつが次に何を言い出すのかが解った

夜な夜なその部屋から物音が、って…

そりゃ人がいれば物音ぐらいするだろ、何か問題が起こったとかだったら別だけど

「んでさ…」

「俺は行かない関わらない」

カイルの言葉を遮って俺が先に言いたい事を言い終わる

絶対に『調べてみよう』とか言い出すはずだ

こいつはこの手の話が好きだからな、何回こいつに巻き込まれたことか

だから早めに手を打っておくのが懸命だ

「まだ何も言ってないだr」

「言わなくても解る、嫌だ」

「ちぇ…新たな発見をしようとか考えない奴ぁ嫌だねぇ」

そう言ってカイルは自分の席に戻っていく

俺は言いたい

お前は今までに何回その手の話で俺達を巻き込んだんだ

そう言いたい

けどそろそろ授業が始まるし、めんどくさいんでやめる事にした

結構俺って適当なんだな、とか気がついたけど別にいいだろう



その日はあの後もカイルによる『開かずの間』の噂を聞かされ続けた

いくら聞いても噂は噂、たまに『それはありえねぇ…』という話も出てきたくらいだ

で、カイルは休み時間になる度に…

「見に行こうぜ」

だとか

「調べてみねぇ?」

とか言ってくる

しかも俺だけにではなく、エルリラやジュリアンに対してもだった

エルリラはどうもその手の話が苦手らしく、顔面強打の刑で強制終了

っていうか開かずの間の話を聞いてた時のエルリラのあのどこか不安げな表情…

あれを見てるとカイルの顔面に綺麗なストレートが入ってもまぁいいかな、と思った

そしてジュリアン…

こいつも俺と同じで昔からカイルの厄介事に巻き込まれていた奴だ

カイルの話を聞いてるうちにいきなり弓を取り出し矢をカイルの喉元に当てていた

ジュリアンもジュリアンで面倒な事に巻き込まれたくないらしい

有無を言わさず却下な方向で解り易い

「ま、どうせそんな話なんてすぐに忘れ去られるさ」

人の噂なんてすぐ消え去るものだ、きっとこの噂だってそのうち誰も話題に出さなくなる

「カイゼルは気にならないんか?」

ジュリアンに一体何を言われたのかは知らないが、生気を失ったような顔をしたカイルがこっちを向く

「何度も言うようだが気にならない」

「んなはっきり言わなくてもいいじゃんかよ」

ふぅ、と溜息をひとつついてカイルは机に突っ伏した

その意欲をどうしてもっと他の事に使えないのか、と俺は思う

ファイヤーボールを極めるとか変な方向にばっかり力を使ったりする辺り、こいつにそれを期待しちゃ駄目かもしれないが

「どうせお前は後数日もしたら他の事に興味がいくんだろ?」

「ん? 何か言ったか?」

「別に…そろそろ次の授業だぞ、準備しとけよ」

多分そう言った時点で俺はこの話の事を忘れて次の授業の事を考えていたかもしれなかった

次の授業は武器学、俺の好きな授業だったからだ

カイルはまだ机に突っ伏して寝たままだった

ジュリアンも次の授業の為に準備をしていた

カイルの話なんて微塵も考えていない様子だった

そしてエルリラも同じだった

だけど…

その噂話がこの後あんな出来事を引き起こそうとは…

あの日の出来事がこんな風に関係してくるとは…

今の俺には知る由も無かった

〜ちょっと真面目な展開になるかも〜

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!