教壇の上では見た事もない教師が何かを説明している

この授業は薬識学らしいのだが、まったくもってさっぱり解らなかった

俺の肌に合わない授業だ

俺はもっとこぅ…

戦術理論とか戦略概念とかの方が好きなんだけどなぁ

テストの事もあるし、単位の事もあるから蔑ろに出来ないわけで…

ここが学生の辛い所だ

俺は授業なんてそっちのけで窓の外に目をやる

「ぬぁ!?」

「どうした?」

窓の外の光景に驚いて俺は声をあげてしまう

それはもう教師の声しか聞こえてなかった教室に響き渡る

「いえ、何でもないっす!!」

一気に注目を浴びてしまった…

俺はそう言うと視線をまた窓の外に向けた

見間違いじゃあ無かった

「うっわ……」

その光景の凄まじさに俺は小さく声を上げた

そりゃ驚く

校庭には高さ何十mとある銅像が立てられていた

今日登校してきた時には無かったはずなんだが…

完全に俺の頭の中はその銅像の事だけで一杯になった

いつ運ばれたのか

どこでこんなもん作ってたのか

何の目的でこんなものを校庭に立ててるのか

「じゃあ今日はこれまで」

教師の声を共に授業が終わる

起立、礼の号令の時にも俺はその銅像に視線が釘付けになっていた

というか…

何で他の奴らはこんなのがあるのに気にもしてないんだ

もしかしてみんなこれが何なのか知ってるのか

教師が教室を出てくるのを見送った後、俺はすぐさまエルリラのもとへと駆け寄った

「ありゃ何だ」

「あれって?」

俺は窓の外を指差す

その先にはさっきと変わりなく巨大な銅像が立っていた

「あぁ、そっか、そうか、うん、そうだったねもうそんな時期だったね」

と、エルリラは一人納得している

俺には何の事かさっぱり解らなくて頭の上に?マークが浮いていた

「そんな時期ってどんな時期…?」

俺は首を傾げながらエルリラに問いかける

どーでもいいから今俺の頭の中にある疑問を全て晴らしたい

「あー、そっかカイゼルってプロンテラ出身じゃないんだっけね」

「あぁ」

「んっとね、この時期になると決まって開催されるモノがあるんだよ」

開催されるもの…

少し解ってきた

確かこの時期は全国でとある祭りが開かれるはずだ

確か農作物の豊作を願って行われる祭り、豊穣祭

って事はこれはその祭りの為のモニュメントか何かなのか

「ひとつは豊穣祭なの」

「ひとつは?」

「そう、で、後ひとつが…」

エルリラは窓の外に目をやると銅像を直視した

その眼差しは何処か寂しげにも見えたが、すぐにまた普通の目へと戻った

「王立学園対抗式バトルロワイヤル」

王立学園対抗式…?

あ、あぁそうか、確かそんなのをやるって事を聞いたっけ

学園で最も強い1チームを代表として選抜し、他の4校と学園1位を決める大会

確かそんな感じだった

「じゃあこの像は…」

「確かこの像が出来上がってから1ヵ月後に代表選抜戦があるんじゃなかったかな?」

エルリラは窓を開けると巨大な像を見上げた

俺も後について像を見上げる

かなり巨大な像だったがまだ胴体部分までしか出来上がっていなかった

しかもよく見るとその像に張り付くようにして作業をしている人がいた

「っはぁ〜、改めて見るとかなりデカイな〜」

胴体部分までしか出来上がっていなかったがそれだけでも校舎の3階分の高さがあった

全部完成した時には校舎以上の高さになるんじゃないか?

「でも1年の私達には関係ない事だと思うよ」

「まあ、な」



「なぁカイゼル、今日帰る前にちょっと付き合ってくれない?」

全ての授業が終わり、教室を出ようとしたところで円璽に声をかけられる

「ん? 別にいいけど」

この後特に予定は無いし別に断る理由も無い

俺は円璽の申し出にOKした

「んでどっか行くん?」

「ちょっとね、仕入れときたいモンがあるんだけどさ、今日カート持ってきてないんだよ」

つまりは荷物持ちって事ね

別にいいけどさ

何気ない会話をしながら下駄箱へ向かう途中、久しぶりに来た

廊下を歩いてる時の視線が痛い

「…なぁ、俺ってどこか変か?」

隣を歩いている円璽に聞いてみる

ここ最近はそうでも無かったが街中とかを歩いている時に、結構見られてる感じが多かった

「いきなり何で?」

「いや、なーんか視線を感じるっつーか、見られてるっつーか…」

そう言うと円璽はいきなり笑い出した

「何だよ…」

「いやいや、考えてもみろって、っていうか自分の顔を鏡で見た事あるか?」

「は?」

俺は円璽の言っている意味が解らなかった

朝顔を洗う時も歯を磨く時も見てるけど

「お前は男ん時からどっちかってーと女顔だったろ?」

「うっさい、気にしてる事をっ」

「怒るなって、それがさ、女になってからこう磨きがかかったっていうか?」

「つまり何だ?」

「お前の事を知らない奴から見れば、お前は可愛いオンナノコ、って事だ」

「やめてくれよ…っどぁ!?」

円璽の話を聞きながら下駄箱を開けるといきなり雪崩が発生した

俺の下駄箱から起きた雪崩の正体は…

「何だこれ!?」

大量のソレを見て俺は驚く

「…いわゆる…らぶれたぁってやつだな」

「これも、これも、これもか!?」

色とりどりの手紙を手に取る

これが全部ラブレターっていうのか

しかも俺にか!?

「よっ、モテモテ」

なんて円璽は言うがこれは違うだろ

絶対違うだろ

男からのラブレターって!!

〜どうやって銅像を作ってるのかって疑問は吹っ飛びました〜