「いいか! こいつと同部屋になっちまったのは偶然! 解る? 偶の然と書いて偶然!」

俺はジュリアンとカイルを廊下に引き摺り出して、色々と説明する

そう、色々と…

「年頃の若い男女が同じ部屋って…いいのか、それは?」

と、ジュリアン

それは俺も解る、力いっぱい解るぞその言い分

だけど何つーか、あの寮の中の寮生じゃ俺以外そんな考えを持ってる奴がいなかった

エルリラも最初の内は口も聞かない程に警戒していたが今じゃあれだ…

何も気にしてん

俺が女の身体になっちまったってのもあるかも知れないが

「…出来れば俺は一人部屋のがいいんだよ、今でもそう思ってる」

「はぁ!? 何で!? もったいないじゃん!」

カイルは俺の肩を掴んで離さない

それどころか何やら力説まで始めてしまった

「だってよ、エルリラってよく見りゃ可愛いじゃん、そんな子と同じ部屋だなんて…」

お前は何も知らないからそう言えんだよ

俺の左頬を見やがれ、まだ痛みが引かなくて赤いんだぞ

「ったく、決まったもんはしょうがない、で片付けられちまったんだよ、まだ当分このままだろ…」

「ん? 当分、って?」

ジュリアンはそういう所ばっかり気が付くんだよな

アーチャーとしての注意力や洞察力が現れてるのか…

「あぁ、新しい建物、まぁ寮の増設みたいなもん始まってたからな」

「ふ〜ん…」

「や、そんな事よりもっと気になる事がるんだよ」

「何だよ、カイル」

「…言い難いっちゃあ言い難いんだがな…」

と、カイルは後ろを振り向いてしまう

もう何言われても大丈夫だろう、色々あり過ぎて疲れたし

どうやら耐性もついたみたいだし

「カイゼル…」

カイルは俺の方へと振り向くと、カイルにしては珍しく真面目な顔をしていた

「お前…下着はどうしてるんがっ!?」

「黙れど変態」

俺は今までに無い鋭いストレートをカイルの顔面に叩き込む

短く低い悲鳴にも似た声を上げてカイルは膝からゆっくりと倒れる

「うっわ……世界レベル…」

と、横でジュリアンの声が聞こえたが俺はさっさとここから離脱をする為に

教室に入り、荷物を纏めた

「何かあったの?」

円璽と話をしていたエルリラが俺に問いかける

「いや、何で?」

「何か…そう、ロッダフロッグが潰れたような音が聞こえたから…」

きっとそれはカイルの断末魔の声だろう

だけどあいつにとっちゃこんな事は日常茶飯事だしな

特に気にする事もないだろ

「どっかで馬鹿で間抜けなカエルが潰れたんじゃね? じゃなかったら空耳だろ」

俺はそう言うと机の横にかけてあったメイスを装備する

円璽とエルリラにゃどうせ後で会えるけど、2人に別れの挨拶をして教室を出ようとする

「あ、ちょっと」

が、そこでエルリラに呼び止められる

「ちゃんと私のワンピース、クリーニングして返してよね」

「あぁ…解ってるって」

あぁ返してやるよ

っつーかこんな服2度と着るか!

なんでミニスカワンピースなんだよ、服広げた時にビックリしたぞ

まさか…狙ってやったんじゃないよな…



「…おかえりなさいませ」

「あ、あぁ…ただいま…」

寮に付くと、門の所に立っていたプリーストが挨拶をしてくる

このプリーストは、いわゆる寮の警備員だ

常にシルクハットとオペラ仮面を装備しているので素顔を見た事は無かった

名前は知らない、ただ、きつねさんが『男爵』と呼んでいたのを聞いただけだ

だから俺達寮生も男爵、と呼んでいる

以前、『男爵さん』と呼んだら『さんはいいですよ』と言われたので男爵というのは本名ではないんだろう

怪しいけど悪い人ではない、と俺は思う

じゃなきゃ警備員になんてなってないと思うからな

「あ、カイゼルさん…」

「うぉ!?」

男爵の横を通り過ぎようとした所で呼び止められる

そして男爵は手に持っていた封筒を俺に差し出してくる

「カイゼルさん宛の物です。どうぞ…」

「はぁ…」

確かに俺宛の封筒だ

裏を返してみたが差出人の名前が書いていなかった

一体誰だろう…?

「…大丈夫ですよ。この寮にはプリーストが大勢いますから」

「…どういう意味っすか?」

「いえ、爆発には注意してくださいね」

マテコラ

何不安になるような事言うんですか

空けるの怖くなってきたんですが…

「冗談です。変な反応は無かったですよ」

あ、なら大丈夫…

って反応って何だ

「ま、まぁとりあえず、ありがとうございます…」

「いえ…」

一刻も早くこの場から去りたい

そう思い、色々浮かんだ不安と疑問を押し殺して自分の部屋へと向かった



「きゃあーー!」

寮に入るといきなり聞こえる叫び声

それと同時に一斉に各部屋の扉が開く

帰ってきてる寮生のほとんどはこの声に反応したのだろう

2階と3階に居た者は一斉に1階に下りてくる

俺を含め、1階に居た者は一足先に声のした部屋の扉の前へと集まっていた

嫌な感じだ、この感じ

物凄く嫌な感じだ…

俺の鼓動は速まり、身体が震えてくる

違う筈なのに、あの日とは違う筈なのに

「は、早く開けろ! 早くっ!!」

俺は叫んだ、腹の底から声を張り上げた

不安だ

不安でたまらない

あまりにも不安過ぎて気が動転してしまってる

訳も解らず俺はドアノブを激しく回した

だが鍵がかかっていて扉が開かない

「くっそぅ!」

少し後ろに下がり、扉を蹴破ろうとする

が、その寸前で扉が開く

「うぅ…ひっぐ…えぐ」

中から涙を流したアコライトの少女が出てきた

何でだろう

俺は酷く胸が痛くなった

それと同時に全身の力が抜けていった

「……良かった…なんとも無くて…」

少女の無事な姿を見た俺はその場に崩れるように座り込んだ

〜次回へと続く…〜

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