薄暗い通路を歩いている
周りの壁、今歩いている通路、そして天井、何もかもが石造りの室内
かつて栄華を極めた王国があったと思われるその象徴の建造物はひどく朽ち果てていた
グラストヘイム古城…
ここ最近、グラストヘイム古城では血生臭い噂が流れてた
それを調べる為に派遣されたエージェント――それが俺、カイゼル・FC・グリディアだ

「う…ぐっ!?」

突然腹部に激痛が走った。それと同時に込み上げてくる嘔吐感
視線を下げるとそこには鎌のような湾曲した鉄の塊があった
その塊からは赤い液体が流れている。……俺の血だ

「う…ごふっ……」

俺は嘔吐感に堪えられなくなり、胃の中のものが混じった血液を吐き出す
俺の吐き出した血液が石造りの床に飛び散るのが…俺の見た最後の光景だった


第1話


「い…いだい…」

朝目覚め一番に感じた事は『痛い』という事だった
腹部に何かが突き刺さるような感覚、それしかなかった
いつもなら眠い目を擦りながら、覚醒しきっていない頭を目覚めさせる為に洗面所で顔を洗うか
とでもなるのだが、今日はそんな毎日の習慣を通り越して一気に目が覚めた
頭の方は完全に目覚めていたが体の方は完全に起きてはいなく、体を起こすのが一苦労だ

「これか……」

布団の上に転がっているメイスを見て呟く
棚の上に置いといたはずなのだが、どういうわけかベッドの上――の俺の上に転がっていた
鉄の塊が俺の上に振ってきたんだ、正直痛い

目覚めの悪さはベッドの上に放り投げて俺は部屋を出た
今日は昼から昔っからの友人と食事に行く予定だ
二度寝して遅れでもしたら延々とそのネタで強請られるような気がしてならないので軽快に目覚める
一階に降り、リビングのカーテンを開けると眩しい朝日と共に雲ひとつない空が目に映りこんでくる
そして穏やかな青い青い大海原が眼下に広がっている
シーサイドとは良い言い方で、はっきり言ってこの家は断崖絶壁とも言える所に建っている
今でこそこんな場所に家が建っているという状況に慣れてはいるが
突風やら台風やらが来ると吹き飛ばされるんじゃないかと以前は心配だった

「ま、気候が安定してるイズルートでそんな事もあるわけないか」

俺は台所の冷蔵室から水の入ったビンを取り出し、夜のうちに失われた水分を補給する
…いや、以前読んだ本で人体の中の水分は寝ている間に現状する、ってのを読んだってだけで…
本当にそうなのかどうなのかは解らない
だけど昨日の夜は、春にしては暑い方だったし、まぁきっと寝起きに水分を補給するってのは間違っちゃいないと思うが
水分を補給したらしたで今度は腹が減ってくる
さっき冷蔵室を覗いたから俺には解る。何か無いものかと探すのは無駄な努力だと解る
だって何もないのだから

「ちくしょう! 何か食材くらい残していけよ!
それが無理なら食事代をちょっと置いていくとかさ」

「クウェ! クウェ!」

俺の叫び声を聞いたからか
庭の鳥小屋からはうちで飼っているペコペコの泣き声が聞こえてくる
2ヶ月ほど前に兄貴が捕まえてきたペコペコだ
そういえばこいつの餌の時間もそろそろだったっけ
俺は庭に出ると『サイドバッシャーの餌』と書かれた箱からペットフードをひとつ取り出す

「お前はいいよな、飯食えて…俺はお前よりも扱いが下かよ畜生!」

「クウェ?」

何とも嬉しそうにペットフードを啄ばむバッシャー
俺の言葉はまだ理解出来ていないのか、一瞬だけこっちを向きまた餌に噛り付いた

「バッシャー、うまいか」

「クウェッ! クウェッ!」

理解してるのか理解していないのか…
バッシャーは目の前の餌に夢中で今度は俺の方すら向こうとしない
仕方ない、自分の金で何か買ってこよう
中央市場に行けば何か売ってるだろうし

俺は出掛ける準備をして、IDカードに表示されている『所持金額』欄を見る
冒険者として登録されると俺の持っているような薄型のIDカードが支給される
これには所属ギルド、所属パーティー、WIS登録、所持金額などの色々なパーソナルデータが表示される

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