「寒っ」
二人で転がり込むように入ったそこは。
こちらを拒むような頑なさを持っていた。
ぽかぽか
ついこの間まで暑くて暑くて、
半袖でバイクに乗っていても平気なほどだったのに。
ちょっと風が冷たくなってきたかな、とか思うともうこれだ。
どれだけ部屋を暖めていても、どれだけ自分たちが恒温動物だとしても、
冷たいものは、冷たい。
「寒……」
そう呟いて身を縮ませる一条さんを、思い切り、抱きしめる。
前だったら暑い、とか言って怒ってきたのに。
「あったかい?」
「ん…」
あ、いいみたい。
……でもそれって、俺カイロ代わり?
「…何だかなぁ」
「んー?」
抱きしめ返してくれるのが嬉しいから、まあいいけど。
そのうち段々と、溶け込むように触れる布が心地よさを増していく。
あー、あったかいなー……
……って思ったのもつかの間。
「……五代」
「?」
「……暑い」
「…………」
……やっぱり、カイロなのかな。
fin.
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