疲れ果てた身体を何とか動かして、マンションのロックを解除。

本格的に冷え込んできた夜の空気に手をかじかませる。

いつものように無言で自分の部屋のドアを開けるとそこにはいきなり暖かな光と空気が満ちていて、一条は目を瞬かせた。

何となくタイミングを外したような気がしながらも、ぽつりと一言呟く。

「…ただいま」

けれどもそれに返るべき返事は無かった。







「……五代?」

いないのか?

と不思議に思って一条は狭い玄関から部屋の中へと入る。

入ってすぐのリビングには暖房と電気が点いているだけで、彼の姿はどこにも見えない。

しかし台所からはいい匂いが漂ってきていて、それに釣られて除くと電気は点いていないもののガスコンロに鍋が置かれていた。

ぴた、と鍋蓋に手を置くとほのかな暖かさが伝わってくる。

蓋を持ち上げると白い湯気が立ち上って視界を一瞬埋めた。

中に入っているのは美味しそうなおでん。

「……五代、だな」

こんなものが自然に出来るものなら世の中の一人暮らしは苦労しない。

だがその犯人とも言える彼の姿が見えないのが少々不思議であった。

リビングにも、キッチンにもいない。

それに自分が帰ってきているのに気がつかないことなんて今まで無かった。

以前に今日は来ていないと思っていた瞬間バスルームから顔をひょい、と出して泡の着いた顔ですみませんお掃除してましたと笑ったときはあったが……

ふ、と考えて一条は寝室へと向かった。

まさかとは思いつつもそのドアを開けると、ひんやりとした空気が流れてきた。

ぱちりと電気を点けるとベッドには丸まった影一つ。

「……」

苦笑しながら一条が近寄ってのぞき込むと、無警戒に眠り込む雄介の姿があった。

気持ちよさそうな寝顔に躊躇いながらも、軽く肩を叩いて呼ぶと、すぐにぱちりと目を開けた。

しかしその瞬間すぐに目をしっかりと閉じてうなりはじめた。

「……眩しかったのか?」

一条が問いかけるとこくこくと頷かれる。

そのうち自分で目を擦りながら何とか雄介は起きあがった。

「……おはよ、ございます……」

ぼうっとしながら懸命に顔を擦っている雄介。

その様が何かに似ているな…と何となく思いながら、一条はお早うと返事を返した。

「あ、あと」

「?」

まだ少し寝ぼけた目で雄介がひょい、と一条を引き寄せる。

「……おかえりなさい」

嬉しそうに顔を崩して、やわらかく口づけた。






fin.






……だから何だと言われたら何も言えません(汗)
とにかく!書きたかったんですよほのぼのらぶあま!!(開き直り…)
あと、何かとワンコ扱いされる(私もしますが)五代くんをちょっと猫扱いしてみたかったとかそれくらいで。
…でもあまり猫っぽくないですね、ううむう。
それにしても久しぶりに二人を書きました(汗)
何という管理人………(汗)





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