……何といえばいいのだろう
 分かるのは、実はこんな自分もいたのだということ。



ひしひし



 「一条さん?」
 「あ、ああ……」
 目の前で不思議そうに笑う五代に何とか応えを返す。
 「大丈夫ですかぁ?何だかぼうっとしてますよ?」
 「いや、大丈夫……」
 こつん
 「ですね、熱もないし」
 「…………こら」
 不意に額を合わせて熱を計られる。
 何だか気恥ずかしくて苦笑しながら引き離すと、ほんの少し不満そうな瞳がそれでも素直に離れていった。



 時折自分の部屋に急襲して、食事を作って掃除をして…………見事に家事を手伝ってくれる。
 一通りのことは出来るつもりでいたが、彼には全てかなわないと知るのにそう時間はかからなかった。
 「特技ですから」
 すごいな、と言うたびに少し照れたようにそう言って微笑む彼の表情は嫌いじゃない。
 「器用貧乏なだけですって」
 「そんなことはないだろう」
 心からそう言うと、また微笑まれる。
 「そうですか?」
 「ああ」
 何でもない会話なのに、こんなにこころが和むのは何故だろう。



 何時の間にか隣にいることが当たり前になっていた。
 それを不本意に思うときもしあわせに思うときもあるが、今のところ後悔することはない。
 どちらも、自分たちが選んだ結果なのだから。
 「……やっぱり、どこか調子おかしいんじゃないですか?」
 「そんなことは」
 「……分かった、寝不足ですよきっと!」
 「………君が言うか、それを」
 原因の一部である彼自身がそう言い切るのに苦笑すると、困ったように頭を掻く。
 「……だって……ねえ?」
 「何が『ねえ』だ」
 「うう」
 軽く睨んで彼が鼻白んだ隙に、すくりと立ち上がる。
 「一条さーん……」
 情けない声を背後に聞きながら振り返ってまた苦笑した。
 「……シャワー浴びてくるだけだ」
 「あ、じゃ俺も」
 「……あのな」
 性懲りもなく起き上がろうとする彼を視線で制して浴室へと向かった。



 そういう、間柄になってから……予想していたよりも自分たちの関係に変化は見られなかった。
 気まずくなることも、変に気遣うこともない……それはそれでおかしいのでは、と思うこともあったが。
 「いいんじゃないですか?だってそれが俺たちなんでしょうし」
 そう言われてからはあまり考えないようにした。
 有りの儘の自然体……意識すればするほど不可能なその状態を、彼のそばだと無理なく維持できる。
 「……不思議なものだな」
 少し熱めのシャワーを浴びながら、呟く。
 だがそれに悪い気がしない時点で、もう何もかもが決まってしまったのだろう。
 きゅ、と蛇口を締めた。



 「……やはり、な」
 浴室から戻ると。
 「予想はついていたが……」
 小さく呟く………五代は健やかに寝息をたてていた。
 何しろ今日は緑になっていたから……疲労はいつもより増していただろうに。
 それでも自分が帰るのを待ち伏せしていたあたり、もう流石としかいいようがない。
 ぐた、とその身を俯せにしたままでベッドに沈んでいる。
 こうなると何をしても起きない……それこそ耳に息を吹き掛けても、とは彼の努める店の主人も確認済みだ。
 悪いとは思いながらも彼が下に敷いてしまっている掛布を引っ張り出して広げる。
 そして自分もベッドの上に上がって自分と彼にその布を掛けた。
 ……以前同じような状況のときにソファで眠ろうとしたことがあるが、五代が起きてからかなり拗ねられて……
 それ以来、狭くても彼の隣で眠ることにしている。
 ………………本当に、自分は一体どうしてしまったのだろうか。
 ふと悩み掛けると暖かな腕が回されて、
 「………」
 ひし、と抱きつかれた。
 起きたのかと思い覗き込むと、ひたすら眠り込む無警戒な寝顔がある。
 ……目を覚ましたのではない無意識の行動。
 「………まあ、いいか」
 ふ、と笑って目を閉じた。
 軽く、五代に腕を回して。



 今の自分がおかしいのかどうかは、誰も確かめることは出来ない。
 ただ自分に分かるのは、とりあえずはしあわせだということ。
 「十分じゃないですか」
 そう言って微笑んでくれる彼がいるということ。




fin.





ドリーマーデカ大暴走2000(謎)
………御免なさいスーパー刑事………
どうにも私が書くキャラはドリーマー決定のようです (死)
……実は私にしては珍しい一条さんの独白。
………今まで書かなかった理由が自分で何と無く分かりました……止まらないんだ、私が(殴)
……しかしいつのことなんでしょうね、これ。




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