「非番!?」
 「………そうだが?」
 「じゃ、じゃあそのあの……!」
 デートしましょう!!
 勢い良く詰め寄る雄介から一歩引きながら、それでも一条は首を縦に振った。
 「あー、ええなぁハンサムさん……五代さんとお出かけですかぁ」
 カウンタに頬杖をつきながら奈々が羨ましそうに口を尖らせる。
 「はあ……」
 どこか虚ろに返事を返す一条。
 「だって一条さん普段すっごくお仕事忙しいからさ、たまには……」
 「……息抜きも必要ってことですか?」
 「そうそう!」
 ぴっ、と指を立てて顔の前に出し、雄介は笑う。
 「……んもうほんま五代さんっていい人!!」
 「うぐぅっ」
 ばん、と奈々に胸板を叩かれ、雄介は苦しげに声を上げた。
 「けほ……ごめんねー奈々ちゃん……留守番頼める?」
 「はぁい、そろそろみのりさんも来ますよね?」


きみがいたなつはとおいゆめのなか


 「……いいのか?」
 かちゃん、とシートベルトを締めた雄介に一条は声をかけた。
 久しぶりに休みがとれて、とりあえず夕飯だけでもご馳走になろうとポレポレに足を運んだ結果…… ……済し崩しにここまで来られてしまった。
 「だって、デートするの久しぶりですよ」
 小学生が遠足に行く前のような上機嫌さで笑われる。
 外出を承諾した瞬間も似たような笑顔だったことを思い出した一条は何となく照れを覚えた。
 顔を横向けて軽く鼻を掻く。
 「……その……デートっていうのは……」
 「?間違ってました?」
 「……いや」
 「じゃ、いいじゃないですか」
 「………」
 明るく言い切る雄介を横目で見て、一条は小さくため息をついた。
 「……まあ、そうだな」


 行き先は、と聞くと俺ちょうど行きたいところあったんですよ、と言われる。
 「いかにもデートっ…て感じのところですよ?」
 「……構わない」
 「本当ですか?」
 嬉しいなぁ……と呟いて雄介は体をシートに沈めた。
 「で、どこに行けばいいんだ?」
 「あのですね……」
 どぉん
 「あ、始まってますね」
 遠くから響いてきた音に目を細めて、雄介は笑う。
 「……了解した」
 そういえば、今日は。


 目的の河川敷には大勢の人が集まっていた。
 華やかな浴衣を纏った女性や親子連れが多く見られ……にぎやかな喧騒の中で、ときおり歓声が上がる。
 「たぁまやぁ〜…って、言う人少なくなりましたね」
 「……そうか?」
 人込みの中から上を見上げて、夜空に広がる大輪を眺めて雄介は言う。
 「そんな気しません?」
 でも見にくる人の数は変わりませんよねぇ。
 通り過ぎざまにぶつかった人に謝りながら困ったように笑う雄介の腕を掴んで、一条は人込みを抜けた。
 「一条さん?」
 「……まだ、時間はあるから……」
 頭の中で地図を描いて。
 「移動しないか?」
 「あ、はい」


 「こっからでも見れたんですねー……」
 会場から少し離れた海浜公園。
 同じ目的の人は少なくはなかったが、芋を洗うような会場に比べればましであった。 その点、一条の判断は正しかったのだが。
 「……アベックの博覧会だな」
 「俺たちも展示物ですか」
 「………」
 親子連れがいないわけではないのだが、それ以上に目立つのが恋人同士と思われる男女。
 外れの方に一つ空いていたベンチに腰を下ろして……夏でも変わらない彼らの距離に軽く眉をひそめながら、
それでも一条は空に視線を転じた。
 多少小さめになってはいるものの、見事な大輪が次々と花開く。
 どぉん
 「お、時間差」
 距離のために遅れて響く音に、嬉しげに雄介は声を上げた。
 一度に幾つも上がったことで、音も続く。
 どぉんどぉん……どぉん
 「花火自体もそりゃ好きですけど」
 どぉん
 「この音も好きなんです」
 変ですかね?と首を傾げる雄介を見て、一条は苦笑した。
 「……そういうことはないと思うが」
 「そうですか?」
 「だが、俺はやはり……」
 次に咲いて消えた花火を見て、雄介が目を丸くする。
 「おー、今の新しくないですか?」
 「……そうなのか?」
 ふ、と考えて……ここ数年、落ち着いて花火を見ることなどなかったことを思い出す。
 ときおり夏に響いてくる音で、その存在を知っていたのみ。
 「………」
 どぉん
 「一条さん?」
 どうしたんですか?と顔を覗き込んでくる雄介に一条は何でもない、と笑い返した。
 すると、ぴたりと雄介の動きが止まる。
 「……どうした?」
 「……いや、きれいだなって思って」
 「?」
 「あーほら、次上がりますよぅ」
 雄介はくる、と花火の方に身体を向けた。


 空に上がる華と水面に映る華。
 次々と咲いては消えていくそれをしばらく眺めて、気が付くとかなりの時間が経っていた。
 「……そろそろ、終わる時間か?」
 「そうかも………あ、これきっと大きいですよ」
 一筋の光の線が夜空を切って上がっていくのを雄介は指差す。
 かなりの高さまで上がったそれは、一瞬の沈黙の後に大きく花開いた。
 「うわ………」
 そして黄色の光が地に幾筋も落ちていく。
 「……これ一番好きです」
 柳の枝のように長く伸びていく光の筋。
 「他のも綺麗だけど……すぐに消えちゃって」
 もったいないですよね、と言って雄介は笑った。
 どぉん
 「ん、いい音」
 そう呟いた雄介の方を一条はちら、と見る。
 少し大きめに響いた音に目を細めて微笑んでいるのが、意外に大人びていて………。
 そういえば大人だったな、などと場違いなことを一条は考えた。
 「……どーしたんですか、一条さん?」
 「いや………」
 ぽん、と肩に手を置いて引き寄せる。
 「んぐ」
 雄介の色気の無い声を聞きながら、それでも一条はそのまま離れようとはしなかった。
 どぉんどぉん……どぉん
 音が響く。
 「…ぷはっ……あー、見そびれちゃいましたね」
 「……終わりだったかもな」
 「…もったいなかった、かな?」
 「………来年、また見れるだろう」
 「…………そうですね」
 お互いの顔もよく見えない程の近距離で、それでも雄介が笑ったのを一条は感じ取った。
 「じゃ、アベックらしく続けましょうか」
 「………それは、ちょっと」
 そのことばに、冷静になって考えるとここは他の人も集まっている公園。
 離れようとした一条をがし、と雄介は捕まえる。
 「先に誘ったのは一条さんですよー?」
 「わ、こら」
 お返しとばかりに雄介はしっかりと一条に抱きついた。




***





 どぉんどぉん……どぉん
 振動と共に響いてきた音に驚き、一条はブレーキをかけた。
 昼間だとしても異常に明るさを増した外が気になったが、ビルの山に囲まれているために何が起こっているのか分からない。
 封鎖されている道路だが念のために脇に駐車して車から出た。
 どぉん
 見上げると、空を飲むように赤い光が広がっていた。




fin.





…………ええと。
途中でデカが暴走して驚きました(死)
更に後を追うようにわんこ(笑)も暴走しようと
したので紐を引っ張るのに大変でした……
結局引きずられましたが(泣)
……公共の場所でいちゃつくのはちょっと……
でもこの二人なら(ばきゃ)

本当にどうなるんでしょうね、本放送……(>_<)


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