敵はだんだん強くなり、ひーろーには新なる力が加わりました。 
そして皆を守るために繰り出された正義の鉄拳は、何と逆に皆の迷惑となりました。 
さあ、困ったのはひーろーです。 
ボクは皆を守りたい、でもこの力は皆を傷つける。 
…一体ボクはどうすればいいの?


ひーろーの条件


「…一条さん…」 
「謝罪はお断わりだからな」 
「うぐ」 
雄介は喉元まで出掛けたことばを止めた。 
「……本当に謝るつもりだったのか……」 
呆れた声を一条は上げる。 
「君が何か悪いことをしたのか?」 
「したじゃないですか」 
ほら、とテレビを指差す雄介。 
『被害甚大』『警察に抗議殺到』 
深夜のニュース番組でも、声高に続報が届けられる。 
「……確かに、事後処理は多いが」 
「……すみま」 
「言うな」 
「…うう」 
ごろ、と雄介は床に転がった。 
クッションを抱えたままこて、と動きを止める。 
「……未確認生命体をどうにかすることが最優先事項だったことは警察内部でも意見は一致している」 
「……」 
「だが一部では被害のあまりの大きさに4号の身柄確保も提案されているからな」 
器物破損などという可愛いものでもないしな。 
「……前科ものは嫌ですねぇ…」 
「もうあるだろうが、公務執行妨害」 
「…ぎくり」 
「……俺が怒っているのは」 
「ああやっぱり怒ってる」 
「……そういう状況下でありながら君が堂々と俺の部屋に来たことを怒っているんだ」 しかもまた不法侵入。 
「あ、大丈夫です…きちんと見張りの人には眠ってもらいました」 
「…………」 
「ああ、眉間の皺がついに一センチの深さに」 
「……あのな……」 
戯ける雄介につられて一条は苦笑した。 
「…だって、どうしても会いたかったんですよ」 
「………殺し文句だな」 
「そうですかぁ?」 
ごろん、と床で転がって雄介は起き上がった。 
「夕飯食べましょう?」 
「ああ」



「……平気か?」 
「まあ、兵器ですけど」 
「……?」 
「?どーかしました?」 
「………いや」 
微妙なイントネーションの違い。 
気がついて欲しくて言った訳じゃないし。 
むしろ気がつかないで、本当。 
食事が終わって二人でぼうっとテレビを見ている。 
もういい加減その報道に飽きればいいのに、どこもかしこも同じ話題。 
『警察は4号の単独行動と発表』 
『4号の真意とは?』 
ぶちっ 
「あ………」 
「………俺は、平気じゃない」 
「……すみません」 
「だから、謝るな」 
リモコンでごつ、と頭を叩かれた。 
「…痛いですよぅ」 
何するんですか、と頭を両手でおさえて。 
「いたいのいたいのとんでけしてください」 
上目使いで訴える。 
「……何で幼児帰りしてるんだ」 
「さあ?辛いことあったからじゃないですか?」 
無音の部屋。 
「……平気じゃないんだろう」 
「だから、兵器ですって」 
「………………!」 
「あ」 
やば。 
もう眉間の皺どころの騒ぎじゃない。 
「五代っ……!」 
「…………すみません」 
「……謝るな、と言っただろう」 
「だって、これは」 
俺の弱音だから。 
言っちゃいけないんですよ?ひーろーは。 
……だからそんな目で見ないで、一条さん。 
「……冗談ですよ、ほんっとにすみません」 
ぱん、と両手を顔の前で合わせて頭を下げる。 
だから一条さんの顔は見えない見れない。 
「………ほんと、すみません」 
「五代……?」 
ぽん、と肩に手を置かれる。 
そして顎に手をかけられて持ち上げられる。ぐえ。 
「………」 
ふっと目元にキスしてくれて、そのまま唇に。 
……………あれ、しょっぱいや。 
「……幼児帰り?」 
「……だろうな」 
軽く離して呟くと、今度は指で目尻を拭われた。 
「う……」 
「………泣けるときに泣いておこう」 
「はい……」 
ではおことばに甘えて。 
あちゃあ、シャツに染み付いちゃうかな。 
……いいや、後できちんと洗っておきますね。



どうしようどうしようどうしよう。 
やらなきゃいけないことはただ一つで。 
いちいち考えている暇も無いわけだけど。 
それでもやっぱり考えてしまう。 
一体ボクはどうすればいいの?



でもとりあえず今だけは。 
肩、貸してくださいね。 
きちんとレンタル料払いますから。





fin.






英雄の条件:肝心の場面で泣く。
……ごめんなさいスタンガンってきっとかなり痛いと思うのぎぃやぁ。
そうそう、このお話の一条さん怪我してませんねぇ(死)
強化弾の反動で怪我ぐらいしててもよさそうなんですが……
これを書き上げたあとにそれに気がつきました………駄目じゃん。






↑以上の文章を発掘(死)
……埋め込んでいた理由も何となく分かりますが…いつかは上げてみたいと思っていたので……
実はこれ、以前上げた「空に…」の元になった文章なんです。
この前の段階もあって……それを真面目に(あれでも)書き進めていったのが「空に…」なのです。
基本的に雄介イタイですねえ(汗)
というかやはりこの時点で泣かせてますねえ(死)
うーん……でもほら、泣き方が違うと思うので……(言い訳)





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