ごろごろ
ころ、と寝返りを打ったら腕が一条に直撃した。
それも手の端っことかそういう可愛い部位じゃなくて、思いっきりお腹の真ん中だったものだから……。
「……痛い」
「あ、すみません」
ちょっと、響いてしまったらしい。
「…そう思うんだったら、退いたらどうだ?」
「イヤですぅ」
「こらっ」
ひたすら布団の上で二人でごろごろ。
二人で過ごすには決して広いとは言えないベッドなのに、雄介はそこから離れようとはしない。
「んー…」
ここしばらく雄介の出番がなくて…それはもちろん喜ぶべきことなのだけれど…自然、二人が会う機会も減っていて。
「久しぶり、でしたしねぇ」
「……そうだな」
ごろごろごろ。
「…ちょっと張り切り過ぎたんじゃないか?」
「やっぱり?でも良かったでしょ?」
「……まあ、な」
ごろごろ。
「……次はもうちょっと押さえてくれると助かる」
「んー、善処します」
がばっ。
「こらっ」
「いちじょーさんあったかーい……」
「……それはそうだろう……」
普通、体温は上昇しているはずだが。
「知ってますよ、それぐらい」
「だったら離れるんだな」
「……やです」
「……というか暑いんだが……」
しっかと一条の体に抱きついたまま離れようとはしない雄介の肩をぽんぽんと叩いて、一条は苦笑う。
「……そんなこと言うんだったら、もっと熱いのにしますよ?」
「……頼むからもう止めてくれ…」
先程までのことを思い出して、一気に体温が下がるのを感じる一条。
「しばらくは遠慮願うよ」
「えー、俺の腕の見せ所が……」
「それは店の方で振るってくれ」
よいしょ、と雄介を押し退けて一条は身を起こした。
「さて、いい加減片付けないとな」
「いいですよ、俺やりますって」
「作ったのは君なんだから、俺が片付ける」
「ぶー」
そうして一条は食器がここぞとばかりに散乱しているテーブルを見る。
「……まさか全部の食器を使われるとはな」
「だってそうでもしないと盛り付けできないほどの量だったんですよ」
久しぶりに二人で食事を摂るということで、雄介は思い切り張り切ってしまった。
彼がその勢いに任せて作った料理はもちろん美味しかったのだが。
「……まだちょっと苦しいな」
食べ終わる頃には二人とも行動不可能状態。
「だったらお腹が落ち着くまでもうちょっとごろごろしてましょうよ」
ね?と笑って雄介は一条を押し倒した。
終わり
しばらく前に書いた山が無くてオチが無くて意味が無いお話。
………深読みした人は何人いるでしょうか…。
はじめから引っ掛からない人もいらっしゃったでしょうが、
引っ掛かった方、ご安心ください。
……書き始めた当初はそのつもりで書いてましたから(苦笑)
どうしてここまで逃げるのでしょうね……自分……。
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