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さあっと軽い音を立てて、勢い良くカーテンが開けられた。
「夢がないって、言われたんですよ」
「…誰に?」
「いや、みのりんとこの女の子」
背中から返ってきた声を聞いて、一条は思わず苦笑する。
「…夢をたくさん持つ年頃だからな」
「そうですよねえ」
うーん、と唸りながら夜空を雄介は見上げる。
そこには黒く垂れ込めた雲が一面を覆っていた。
「晴れたらいいね…って言ってて」
「ああ」
「でも、天気予報じゃまず…」
「…ああ」
窓辺との距離を埋めるために、座っていたソファから腰を上げて彼の横に行く。
変わらずに空を見上げる彼と同じように見上げてみるが、すぐに首が痛くなってやめた。
「…きっと晴れるよ、なんて言えなくて」
「……」
首を擦りながら頷くと、苦笑して雄介が肩を揉んでくれる。
「…年かな」
「ちょっと、まだその台詞は無しですよ」
くすくす笑いながら、はいおしまい、と軽く叩かれた。
「で、晴れなくても大丈夫だよ…って言ったら」
「…夢がない、と」
「はい」
空から視線を離して一条を見ながら雄介が微笑む。
「…理由は、きちんと言ったのか?」
「言ったんですけどねえ…どうも、分かってもらえなかったらしくて」
「…まあ、いつか分かるだろう」
「ですね」
もう一度、雄介は雲の隙間を探すように空を見た。
「…でも、こっちの考えの方が夢があるって思いません?」
「……確かに、そうかもな」
この雲の上には、一面の星空。
地上からの眺めはどうであっても、一年ぶりの再会を妨げるものは何も無く。
「返って人目につかなくて最適だと思うんですけど」
「…それは、女の子に言ってないだろうな」
「もちろんです」
伝説の中の男女は、多くの人々の願いを糧にして今も生き続ける。
「こうゆう考えは、夢を持っている大人限定です」
「…そうかもな」
自分の願いだけでなく、遠い空にいる二人のしあわせも祈れる日。
いつもは見上げにくい空を、ちょっとは見ていられる日。
「さって…あんまり見てると怒られちゃいますかね」
「…雲がかかっているから見られないだろう」
「気分の問題です。…一条さんだってカーテン越しに見られたら嫌でしょう?」
「…そういう問題だろうか…」
真剣に悩み始める一条を、雄介は何より暖かく見つめる。
「ええ、そういう問題なんですよきっと」
そう言って彼はカーテンを元に戻した。
fin.
リハビリに書いた小説…とは言い難い文章。
七夕に書き始めているあたりでかなりの逆フライングです。
こういう文章は書いている本人は非常に楽しいんですけど
読んでいる方々にはわかりにくくてちょっと申し訳ないです…
…あ、あと書いている途中でまたデカが暴走しかけてたいそうホホエマシカッタです。
(必死こいて止めました。何で窓辺で抱きしめてちゅーしようとするかなこの人)
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