たまに。ごくたまにだけど。
僕は。
「楊ゼン!今日はわしだからな!!」
この人に抱かれる。
互
「この間も、ではなかったですか?」
「嘘をつけ嘘を!この間はおぬしだったろう!?」
「覚えてません」
「くぬう」
ぎり、と襟元を掴まれる。
まあ身長差のせいでそんなに強い力は加わっていないけれど、それでも。
「苦しいです」
「だったら今日はわしの番だな」
「何故」
もはや前後の会話が繋がらない。
仕方がないし、人目も気になるので僕は不請不請首肯いた。
最初、言い出されたときには驚いたけど。
……そんなに嫌な気がしなかったということは、どうやら僕は心の底からこの人に骨抜きらしい。
それに、
「不公平であろう!?いつもおぬしばかりというのは!」
この台詞はやけに説得力があった。
夜がくる。
「楊ゼン、寝るぞ」
「はいはい」
ぎゅっと抱き締められ、寝台に引き落とされる。
「わっ……」
ごろ、と寝返りをうたれて視界が逆転する。
約束どおり、僕が彼の下。
赤みがかった黒髪がぱさ、と胸元に降りてくる。
「んー……あたたかいのう」
ぺた、と顔を押しつけて……心音でも、聞いているのだろうか?
「あなただって、あたたかいですよ」
「むう」
そっと腕を彼の背に回す。
そんなに力を入れずにぽん、と背を叩くと、不満そうに頬を膨らませた。
「……おぬしはいつも余裕よのう……」
「もっと焦って欲しいですか?」
「…いや、こうでなくばおぬしではないな」
ふっと笑って、瑠璃の瞳が近付いてくる。
静かに瞳を閉じるとすぐに優しい口付けが降ってきた。
「すう……す…」
「楊ゼン」
彼の愛撫は丁寧で。
絶対に僕を傷つけない。
でも、ちょっと焦らしすぎるきらいはあるかも。
「も、う……」
腕を伸ばすと、僕の思ったとおりに抱き締めてくれる。
「楊ゼン……」
優しく僕の名を呼んでくれる。
そう、この声が聞けるのがいい。
「でも、次は僕ですからね」
「ぬう……まあ、仕方があるまい」
fin.
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