起き抜けに広がる蒼にもいい加減慣れてきた。 
「あ、お早ようございます、師叔」
そして目の前で微笑むむらさきにも。 
「……お早よう、楊ゼン」


はぴぃはぴぃ


どこか軋む身体を誤魔化して書簡の山に向かう。 
「うー……」 
誰もいないことを確認して太公望は軽く唸った。 
「………ったく、楊ゼンのやつ……手加減というものを知らんのか………」 
本当なら昼間にはあまり思い出すものではないのだろうが、こうも身体が訴えてくるとそれも難しい。 
それでも近ごろは慣れた方で、それこそ初めのころは楊ゼンに仕事を全て押しつけてサボるなんてことはしょっちゅうだった。 
くるくると持っている筆を器用に手の中で回す。 
ふ、と思い当ったことをそのまま呟く。 
「………もしかして手加減してこれか?」 
「何を、ですか?」 
「ぬう?」 
声に振り向くと幾つかの書簡を持って楊ゼンが横に立っていた。 
「……いきなり現われるのう……」 
「………扉から入りましたよ」 
ご自身の唸り声で聞こえなかったのでは?と言う楊ゼンを太公望は軽くにらんだ。 
「………では何を手加減してほしいのか分かるであろう………」 
「して欲しいんですか?」 
「………ぐむう」 
楊ゼンのさらりとした物言いに反論も出来ず、太公望は机に突っ伏した。 
「ああ師叔……墨ついちゃいますよ?」


「お早ようございます、太公望師叔」 
目の前に広がる蒼やむらさき。 
「……うむぅ」 
回される腕や触れてくる指先。 
「……まだ目、覚めてないですね……」 
微笑む吐息と 
「むぅ」 
触れてくるやわらかみとあたたかさ。 
どうにもまだ慣れないことは山積み。







fin.





書いた日付は今から二年前、00年の夏になっておりました。
書いた当時はあまりのラブさに逃げ出してしまったものです…(遠い目)
それでも書いているときはほぼノンストップで書いてしまった辺り、
ラブラブも書けるのかと自分に大変驚いた記憶があります。
…いや、いっつもラブラブですけどねあのお二人は(涙)





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