イーストシティの中心で愛を叫ぶ
24氏

『愛情』という感情を、持ったことなんて一度も無かった。でも弟のアルフォンスには、姉弟以上の想いがある。
けれどそれは『愛情』ではなかった。しかし、自分が片思いをしてて、その人物に『愛情』という感情を抱いていると、知ったのは、つい先日。その相手とは、東方司令部司令官のロイ・マスタング大佐だった。

「はい、報告書。」
「いつも、すまないな。」
雨が降る、いつもの夜のことだった。東方司令部のロイのオフィスにエド子が報告書を届けに、訪れていた。
エド子の弟のアルフォンスは、軍が経営している宿で休んでいる。
決まってここには一人で来たかった。いや、一人で来る必要があった。細く微笑む彼に会うためには・・・・。
「で、今回はいつまで居るのかね?」
「ちょっと休養しようと思って。最近疲れてばかりだから。」
「体調が悪いなら、医務室で診察した方がいいんじゃないのか?」
「いや、別にいいよ・・・・・・・・。」
ロイから目線を逸らしてエド子は答える。そして疲れてるというのは嘘。本当は、彼と長く居たかっただけ。
それを『恋』とか『片思い』とかと気付いたのは、最近で。
彼にはたくさんの女性が居ることなんて知っていた。それにロイと付き合う人は皆、綺麗で美しい人ばかり。だから自分という存在はふさわしくないと、エド子があきらめながら思っていた。
自分なんか、男勝りで口が悪くてあまり素直じゃない。格好には結構自身があったけれど、胸が小さいというコンプレックスがかなりあった。だからいつも遠くから彼を見ていたのだ。

「あ、大佐。」
「なんだね?」
「図書室借りて良い?読みたい参考書があるからさ。」
「別にかまわない。好きにするがいい。」
「・・・・・・・・・・・・・ありがと。」

そっけない彼が、とても光って見えた。
エドワード・エルリックという少女に、どんな想いを抱いて良いのか、はっきり言ってわからなかった。でも、強い子だとは思う。大きな罪を背負いながら、まっすぐ生きている彼女。
弟を助けたいと願う、純粋な想いを持つ少女。
確かに惹かれているのはその通りであるが、15歳という自分よりものすごく年齢が離れている彼女に、『そういう』想いを抱くことは、だめなんだと・・・・・強く決心していた。
「じゃあ、俺行くね。」
「ああ。また来たまえ。」
「うん。そうするよ・・・・・・・・・・。」
カツカツとブーツをヒールの音を立てながら、エド子がオフィスを出ていこうとした。
ブロンドの長い髪が、ゆらゆらしていた。
「鋼の。」
「えっ・・・・・あ、何?」
出ていこうとしたら、突然ロイが声をかけてきた。ドキンとして後を振り向くと、ロイが真剣な目でこちらを見ていた。
「何?」
「君は最近、おかしいと思うが?」
「な・・・・・なんで?」
「何故私の前だけでは、そんなに顔が赤いのかね?」
「はあ・・・・・・?」
「言いたい事があるのだろう?はっきり良いたまえ。」
ズキンと、心が痛んだ。まさかこんな形で言われるなんて。
「い、言いたいことなんてないよ。」
「あるのだろう?」
「な・・・・ないってば!!!」
「なら、いい。」
彼が、自分から離れていくように思えた。
「い・・・・言いたいことなら、たくさんあるよっ!!!」
なんだか後悔するような想いで、エド子は思いっきり叫んだ。
このままではいけない。このままだと絶対後悔する。
「そうか。なら言ってみたまえ。」
「その・・・・・さ・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「俺、アンタの事好きなんだ・・・・・・・・・・・・。」
悔しくて、だからエド子はちゃんといった。恥ずかしいし、この場にいたくなかったけど、言いたかった。ちゃんとして想いを言えばすっきりするとおもっていた。
けれど・・・・・・・・・・。
「冗談は、やめたまえ。」
「えっ・・・・・・・・・・・・・。」
「大人に冗談を言うのはよしたまえ。」
「な、なんでっ!!俺は本気だよ!」
「大体年齢が離れすぎだろう。」
「そ・・・そんなのっ!!!」
「いいかげんにしたまえ、それが君の言いたかったことなのかね?」
「っ・・・・・・・・・・。」
「さあ、ちゃんしたことを・・・・・・・・・・。」
「なんで・・・・・・・・・。」
「?」
「こっちは・・・・こっちは本気なんだよっ!!なのに・・・なのに、なんで!!!」
すでにエド子の目には涙が浮かんでいる。
「・・・・・鋼の。」
「もういいよ。アンタを信じた・・・・・俺がバカだった。」

ずっと信じていたんだ。
「鋼っ・・・・。」
「ごめんっ。」
エドは、まるで自分の顔を見られたくないかのように、この場を後にした。
ロイはただ、そこに立っていることしかできなくて、やりきれない気持ちで拳を握り締めた。

途中、廊下でもう何人の人とぶつかったのかわからない。それぐらいエドは、必死で走っていた。大佐のあの言葉だけが頭の中で何回もリピートしていて、とても悔しかった。
悲しかった。切なかった。
断られるとは、覚悟していた。けれど、あんな言い方をされたのだ。
胸の奥が熱くて、エドは泣くことしかできなかった。

「兄さん?」
「っ!?」
ふとかけられた優しい声。その声の主はもちろんアルだった。
エドはハッと立ち止まり、アルを見続ける。涙がとめどなく流れていた。
「に、兄さんどうしたの!?」
「アルゥ・・・・・・・。」
泣いている姉など、最近見たことがない。アルはびっくりしてすぐさま、愛しい姉の元へと駆けつける。
「兄さん、一体・・・・・?」
「俺・・・・・・。」
「え?」
「もう、国家錬金術師やめたいな。」
泣いているのに、一生懸命の笑顔でそう言ったエド。アルはそれをただ事ではないと悟り、姉の体を抱きしめた。
「姉さん・・・・・・・。」
「俺・・・もうっ・・・・こんなのっ!!」
自分の腕の中で必死に泣き続ける姉。一体、何があったんだろうか?
多分今は聞いても無駄だと思う。だからアルは、姉をなだめることしかできないでいた。

その後、泣きじゃくる姉を誰にも見られないように抱いて部屋に戻ってきた。
寒い部屋の暖房をかけて、姉にタオルと暖かいココアを渡した。
どうやら泣き止んだらしく、顔はもうぬれていなかった。
「アルは、優しいな。」
「そんな、僕たち姉弟でしょ?」
「そうだな。」
ははっと笑うエドに、アルは少し罪悪感を覚えながらも自分も笑いかけた。
事情は多分、姉自身からいつか言ってもらえるだろうと信じて、アルはあえて、何も言わなかった。
「今日は寒いから、ちゃんとお風呂で温まってね。」
「ああ。そうするよ。」
「髪はちゃんと乾かしてから、寝るんだよ?」
「アル、母さんみたいだ。」
いろいろと心配しれくれるアルに感謝しつつ、エドはココアを見つめていた。










楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル