『たった一つの贈り物』
>251氏

あと5分で終業時間だ。
銜え煙草のハボック少尉は、時計を確認しながら溜め息をつく。
今週の当番は彼なのだ。当番というのは、ロイコ・マスタング大佐の送り迎えのことで朝は超低血圧の彼女を叩き起こし、朝食を用意して車で司令部へ。
帰りは車をまわし、出待ちをしているお嬢さん達からガードしながら自宅まで送り届ける。
これをリザ・ホークアイ中尉と週替わりで行っているのだが、非常に疲れる仕事なのだ。
ちなみにフュリー曹長とファルマン准尉は、上司を叩き起こすことが出来ず、ブレダ少尉はお嬢さん方に犬が苦手だと、ばれているので役に立たない。
時間が来たので、仕方無しにハボックは銜えていた煙草を灰皿へと押し付けた。
「大佐〜!車回しときますよー」
正面玄関前に車を止め、ロイコを迎えに戻る。
玄関から車までの間には、すでにお嬢さん方が手作りであろう差し入れやプレゼントの大きなクマのぬいぐるみなどを持参して良い子に整列して待っている。
ロイコが顔を出すと一斉に黄色い声が乱れ飛んだ。
「キャー!ロイコ様〜、今日も素敵ー」
「あ、あのマスタング大佐様、これ受け取って下さい!お仕事頑張って下さい」
「ロ・イ・コ!ロ・イ・コ!L・O・V・E、ロ・イ・コ!」
右をハボック、左をホークアイにガードされながらも、にこやかに婦女子達へ反応を返すロイコ大佐。
対女の子用の王子様笑顔を浮かべている。
そのロイコを後部座席に押し込み、ハボックは運転席へ、「後はお願いね」との言葉を残しお嬢さん方へ解散を促しに行くホークアイ。
車を発車させ、一息ついたハボックは器用に胸ポケットから煙草を取りだし火を付ける。
本来ならば上司の前で銜え煙草など以ての外だが、ロイコはあまり気にしていないようだ。
窓を開け、「煙いっすかー?」と尋ねれば「もう慣れている」と返ってきた。
「私はいいが、他の女性の前では控えた方が無難だぞ」
「彼女とのデートで吸ったことはないですよ」
その言葉にロイコの表情が曇ったのだが、ハボックはまったく気付かない。
「…そうか、私は眠い。家に着いたら起こせ」
表情を隠すかのように先程送られた巨大クマに顔を埋めて眠る。
その姿をバックミラーで確認したハボックは、可愛いなーと呑気に思っていた。
「腹が減った。私がシャワーを浴びている間に何か作っておきたまえ」
家に着くなり、用事を言いつけるロイコ。
部下の仕事は彼女を家まで送ったら終わりのはずなのに、いつも余計な仕事を押し付けられる。最早それに慣れてしまったハボックは、不満の色も見せずに「へーい」と返事をするだけだった。
一人暮らしをしているハボックは、大雑把な料理くらいなら作ることが出来たが彼の上司は、料理音痴であった。美味くもなければ、不味くもない。それは一番食欲を減退させるもので、彼女の食事は外食か部下に作らせたものが多い。
部下と言ってもこの家に足を踏み入れるのは、ハボックとホークアイだけだが。
女でありながら女性好きの上司は、ひょっとしてデート相手にも作らせているだろうか?
ハボックはその考えをすぐに否定した。焔の大佐殿は用心深いので会ったばかりの人間を信用したりはしないだろう。不思議なことに一人の女性に対してデートは一回きりなのだ。
相手がどんなに美人でも、話が合ったとしてもそれは変わらない。
彼女が心の底から信頼しているのは、今はもういない親友と一番大切な部下であり恋人であろうリザ・ホークアイ。
直接、恋仲だと聞いたわけではないが、ハボックはなんとなくそう思っている。
ふとした時に感じる二人の絶対的な信頼関係に嫉妬心が芽生えていることは自覚済み。
グルグルと考え事をしながらも料理の支度を終わらせたハボックは、また煙草に火を付ける。
上司が風呂場から戻るまで勝手に帰るわけにもいかないのだ。
シャワー後のロイコは、薄紫のバスローブ姿だ。暑いからと言って、困ったことに下着を着けていない。
ハボックのことを恋愛対象として、また男として意識していないから出来ることだろうと
ちょっと落ち込むが美味しい状況であることは、間違いない。
胸元が大きく開いているデザインのため、綺麗な胸の谷間を拝むことができるのだ。
役得役得。
「ハボック、爪が伸びた。切れ」
綺麗な手を差し出して、横柄な態度で頼むロイコに近づきその手を取ると「よし!」と満足気に微笑まれた。この笑顔のためならなんでもしたいと思う程、ハボックは彼女にベタ惚れなのだ。煙草を灰皿に押し付けた後にフカフカの絨毯に座り込み向かい合った状態で、爪を切って丁寧にヤスリをかけ仕上げる。
両方の爪が終わるとロイコは、足をハボックの膝へと差し出した。
視界には、彼女の白く艶めかしい太股から爪先までが晒され、知らず生唾を飲み込む。
パッカリと開かれたバスローブの合わせ目は、絶妙に下着で覆われていないはずの部分を隠している。
『やべぇ、俺、鼻血出そう』などと考えている部下のことなど、気にもしていないだろう上司は両手を床につけて不安定な体勢を支えているのだが、その姿がまた色っぽかったりする。
なるべく平常心を保とうと努力しながら、全ての爪を綺麗に手入れし終わった。
「ご苦労、ハボック少尉。もう帰っても良いぞ。…遅くなったからここに泊まっても構わないが、どうする?」
挑発的に誘うロイコだが、これはいつもお決まりのからかい文句。ハボックは鼻で笑いながら答える。
「そりゃ光栄っすねー。でも研いだばかりの爪で引っかかれちゃ堪りませんから、おやすみなさい」
軽く敬礼して自宅へと戻って行く。
やはりここでもロイコの悲しげな表情に気付かない鈍い男だった。
早朝、軍服を着たハボック少尉はロイ子・マスタング大佐の家に来ていた。
彼女を叩き起こして、無事に司令部へ出勤するためにポケットから合い鍵を取りだし「しっつれいしま〜す」と一応小声を掛けて入るが、勿論ロイ子は夢の中だ。
キッチンに直行すると上着を脱ぎ、椅子に掛けてさっさと朝食の支度をする。
食卓にそれなりの料理が並ぶ頃、丁度彼女を起こす時間。
ハボックは寝室へ向かい、ドアをコンコンとノックした。
こんなことで起きてくるならば苦労はない。
返事がないのを確認すると遠慮無しに部屋へ入り、ベットに近づく。
薄いタオルケットを掛けたロイ子の体のラインは、なだらかな曲線を描いている。
何と言っても彼女は寝間着を愛用しない人物なのだから。
最初の頃はそうと知らずにひっぺがしてしまい、えらいことになったものだ。
肩の辺りに手を掛けて、揺すりながら声を掛ける。
「大佐、起きて下さい。朝ですよ」
もぞもぞと動きながら顔を出し、寝ぼけ眼の顔で言う台詞はいつも決まっている。
「〜おはようのあいさつはぁ?」
「はいはい」と言ってロイ子の頬にキスを落とすと彼女はハボックの首に腕を巻き付け起きあがりながら唇を奪う。そして天使のような微笑みで「おはよ」と言うのだ。
その時に薄い布越しに(時には布が落ちて直に)柔らかな膨らみを感じてかなりの役得だったりする。
恐ろしいことにこの流れの間、ロイ子は寝ぼけていて洗面所で顔を洗うまで朝の記憶がない。
ハボックは、自分のことを家族か彼女のリザと間違えているのだろうと考えているのだがそんなわけはない。いくら寝ぼけていようともハボック以外にキスを強請ったりしないことを彼は知らない。
まぁこんな具合に朝の当番は行われるのだ。
いきなり時間は過ぎて本日の職務も無事終え、大佐殿を送り届ける車中。
「なんか今日はやけにお嬢さん方が多くありませんでした?プレゼントもいつもの5倍くらいありますよね、大佐」
黄色い声の中、上司を抱えて死に物狂いで車まで辿り着いたが、彼女はにこやかにファンへ手を振り、わざわざ窓を開けてプレゼントを受け取るのでなかなか出発できなかった。
聞き分けの良い女性が多かったため、贈り物さえ手渡したら車から離れてくれて今は大佐宅に向かっているのだが、助手席と後部席の半分は色とりどりの贈答物が所狭しと溢れかえっている。
「お前の耳は飾りモノか?彼女たちの祝いの言葉が聞き取れなかったとは…良い耳鼻科を紹介してやろうか」
「『お誕生日おめでとうございま〜す!』ってのですか。ついに三十路っすね…グフォ!」
女性に対する禁句を口にしたハボックは、背後から鉄拳をくらった。
目的地に着いて車を止めたタイミングでの攻撃は、狙ってのものだろう。
「全て運び込みたまえ、ハボック少尉。それから腹が減ったぞ。何か作れ!二人分だ」
おいおい、またかよ。と思いながらも「アイ・サー」と答えるハボック。
二人分って事は、今から本命の彼女が来るのだろう。
それなら当番を代わって貰えば良かった。そうしたら複雑な想いを抱えなくて済んだのに…
女性が大好きなロイ子にとって、手先が小器用で力持ちのハボックは差し当たって便利な下僕といったところだろうか?余程の命令でも彼女が言えば、否とは答えられない。
適当に考えていたはずなのに、今の状況って本当に下僕じゃんと勝手に落ち込んでいると黒いノースリーブのワンピースに着替えたロイ子が、訝しげな視線を向けていた。
「何をしている?誕生祝いなのだから、それなりのモノを作りたまえよ?」

リビングのソファーにふんぞり返りながら、新聞を読む上司の背中にばれないように舌を出す。
なんだって自分が彼女とその恋人のためにディナーの準備をせなばならないのか。
好きな人の誕生日に二人分の食事を作らされる下僕ってつらい…
そうハボックは、ロイ子に惚れている。上司としても命を預けて良い相手だが、女としても惹かれる。
現に今、ソファーの影からちらつく白い脹ら脛に目がいって仕方がない。
それになんだかんだと甘えてくる彼女を愛おしく思っているのだ。
だが、自分は下僕…もとい只の部下。大きな溜め息をつく。
「大佐ー、出来ましたよ。オードブルとデザートは冷蔵庫、スープは鍋の中、パンはかごに入れてあります。
メインはオーブンっス。こんなもんでいいでしょ。後で温めて下さい。じゃ、失礼します」
簡単な料理(?)を準備し終わったハボックは、上司に軽く敬礼して玄関へ向かおうとすると軍人とは思えない細い腕に捕まる。
「何を言っている?今から食べるぞ、ハボック」
「へっ?誰とっスか?」
「お前以外誰がこの場にいると思っているのだ。馬鹿者」
滞りなく食事を終えるとロイ子は、ケーキを取りだした。
「あんた、自分で買ったんですか?」
「これは中尉が作ってくれたのだ。お前のジッポでローソクに火を付けろ」
彼女の恋人は、この場でお祝いできない代わりにケーキを作ったのだろうか?
となると自分は、来られない本命のピンチヒッターなのかと勝手に納得しつつ
言われるままに火を灯すとロイ子は部屋の灯りを落とした。
幻想的な雰囲気に息をのむハボックの目には、普段の自信満々な姿と違った儚げなロイ子の微笑みがうつる。
蝋燭の炎が揺れているせいだろうか。
「おまえから祝いの言葉はないのか?」
「あ、すいません。俺、プレゼントとか用意してなくて…あの、誕生日、おめでとうございます」
「ありがとう」
本日、大勢の人々から贈られた言葉だろうに、目の前の女性は、それは幸せそうにふんわりと微笑む。
普段見ることができない表情に思わず見とれてしまうハボック。
そんな彼に、今度は艶やかな笑みを浮かべて流し目をおくる彼女。
「元々贈り物など期待していないのだが、そんなに気になるのなら一つだけ欲しいのだが…」
「なんですか?」
「おまえを私にくれ」
ハボックはその言葉の意味を理解できなくて間抜けな面を晒した。
「は?」
「えーとぉ〜、既に俺はあんたのモンでしょ?部下なんだから」
頬を引っ掻きながら上司を見れば、明らかに不満げである。
レズであるはずの彼女がそっちの意味で自分を欲しいとは思えないのだが…
ハボックが考えていたことがわかっているのだろうか。
「そんなこと当たり前だろ。私は女として男のお前が欲しいのだ。こっちに来い」
ケーキの火を簡単に吹き消して、その場に放置し、ロイ子はハボックを連れて寝室へと向かう。
見慣れたシンプルな部屋には、大きなベット一つしか置いてない。

ベットに腰掛けさせられたハボックは、ロイ子が投げた箱をキャッチした。
ムードも何もない、未開封のそれは避妊具だ。
「俺がプレゼントを貰っちゃっていいんですかね〜」
ことの流れに付いて行けていないハボックは、凡庸に気のない台詞を吐いてみた。
ロイ子はドレッサーから青い色のリボンを取りだし、ハボックの首に結んだ。
「私が欲しいプレゼントはお前なんだ!…駄目か?」
さっきまでの勢いはどこへやら、急にしおらしくなった彼女にやっと質問するタイミングが見つかった。
「あの…つかぬ事をお伺いしますが、大佐はバイっスか?性欲処理は、取り敢えず俺で済ませておくとかなら、お断りしたいんですけど」
ハボックだって男だから好きな女が抱ければ万々歳だ。
しかし甘い話に考え無しに飛びつけるほどでもない。
後で泣きを見ないためにも確認は重要だ。
上司と関係を持つというのは、簡単なことではないのだから。
ハボックの問いに暫く黙って俯いていたロイ子だが、やっと口を開いた。
「…お前、帰って良いぞ。いや、即刻帰れ」
「嫌ですよ。答えを下さい、大佐」
ベットから立ち、ロイ子の側に寄り、顔を上げさせると彼女は泣いていた。
声も上げずに水滴が白い頬を伝っている。
「大佐!?なんで泣いてんですか!」
指で涙を拭い、細い体を抱きしめるとくぐもった声が聞こえてきた。
「お前に…性欲処理で部下を使う、はしたない上司だって思われていたんだな、私は…」
「なっ!だってあんた女の人が好きなんでしょ?男は駄目だって…」
「…あれは軍のセクハラ対策にヒューズが考えたのだ。まぁムサイ男よりは、可憐なお嬢さんの方が好ましいが、私が女性と付き合っているように見えたか?」
見えた…というかデートは結構していたような気がするが、あれはフェイクだったのか。

「でも男が好きなようにも見えませんでしたが」
ハボックがそう言うと黒い瞳の彼女は、顔を真っ赤にして睨み付けてきた。
「それはお前が鈍いからだろう!どれだけ私が…」
「あれ?あんた俺のこと好きだったんですか?」
「なんでこの流れでわからないんだ!」
ハボックを突き飛ばし、ベットに潜り込んだ彼女は、本日三十路を迎えたとは思えないほど、幼い拗ねっぷりである。
「たいさ〜、顔を出して下さいよ。素直に出てきてくれたら良いモノあげますよ?」
その言葉に反応したらしくモゾモゾと動いて顔を出した。
その瞬間、チュッとハボックはロイ子の唇を奪う。
そして自分の首のリボンを指し示した。
「俺はあんたが大好きですよ。良かったら俺を貰って下さい」
「…仕方がないから貰ってやる」
そして二人はまた唇を合わせた。
「……」
「…ふっ…ん…」
ハボックが舌を侵入させ、ロイ子の舌を探すがなぜか彼女は引っ込めてしまう。
舌先でつんつんとつついても、無駄だったので唇を離す。
「大佐、キスが嫌いですか?…もしかして俺が下手とか?」
歴代の彼女には上手いと言われたことはあっても、下手と判断されたことなどないのだがロイ子が自分のキスを不快に思うならショックである。
「すまん。違うのだ。その…ちょっとびっくりして…」
「?何いってんですか。初めてでもあるまいし…さて、大佐に満足して貰えるように頑張りますか。
あ、せっかくだからさっきのケーキ使いますか?」
「つ、使うって何にだ?あれは後からきちんと食べるぞ」
ハボックは、生クリームプレイもいいのになぁ〜とか思っていたのだが、中尉からの贈り物であることを思い出しその考えを捨てた。
先程からどうも話がすれ違っている二人。

暫くの沈黙後、動き出したのはロイ子の方でハボックの上着を脱がせた。
そして彼女は黒いTシャツ姿の彼をじっと見つめ、徐に脱がせたばかりの上着を今度は自分が羽織って見せた。
セクシーな黒のワンピースにブカブカの厳つい軍服が不似合いなのに、その姿は何故かハボックの心を揺さぶった。
「やはりおまえのは、でかいな。ほら、私の指先すら出ないぞ!」
ガクーン 急に視界が反転したことに驚いてつい「おうっ!?」と間抜けな声を上げてしまった焔の錬金術師。
無邪気に袖から出ない手を振ってみせる彼女を、ハボックは押し倒したのだ。
「あんま我慢出来ないかも知れません。大佐」
上着をずらして首筋にキスすると痒そうに首を竦める彼女の反応に首を傾げるハボックだが、次に耳朶を甘噛みし、上着を脱がしてベットの下へ落とす。
その間中、小刻みに体を震わせていたロイ子だが、彼の手が背中に回った途端。
「ヒャッ…ック…止め…ヒャハハハー!」
盛大に笑い出した。萎えるハボック。
「〜〜〜たいさぁ?ヤル気ないんスかぁ〜?」
「いや、悪い。そのくすぐったくて…我慢するから」
「さっきから疑問に思ってたんですが、あんたもしかして…処女だったりします?」
ハボックの質問に頬を染めて俯くロイ子。
「だっだって、今までそんな風に好きになったことなかったんだ。おまえが初めてだから」
元来、ハボックは交際相手の恋愛遍歴に興味を持ったことなど皆無だが、ロイ子に恋愛経験がないとは、素直に驚いた。巷の噂では、恋の達人で百戦錬磨だと聞いていたためだ。
「そっすかー。なんか大佐の初めてが自分で嬉しいっす。じゃ、まぁ遠慮なく」
本当に遠慮なく、ロイ子の体中に花弁のようなキスマークを散らしていく。
後ろから抱きしめ、彼女の豊満なバストへと手を伸ばすと手に余るほどのそれは服の上からでも柔らかく、下着を着けていないので形の変化がよく見える。
おっぱい愛好家のハボックは殊更胸への愛撫を施した。
「あっあん…ハボッ…クッ…おまえ…ボイン好きだろ」
「大好きっス!ボイン。でもあんたの胸が抉れてようが好きですよ?」
「調子者が…ばか…ひゃ…あっあ…」
「ねぇ大佐、ノーブラってことは、下も?」
ロイ子は徐にワンピースの裾を握り締めると恥ずかしそうにおへその辺りまで持ち上げ、サイドが細いリボンで結ばれた黒色の紐パンが晒された。シンプルなデザインのそれは、大人の色香と共に彼女の可愛らしさも表現されていて似合っている。
ハボックはその紐の先を銜えるとゆっくりと外し、目の前に黒い茂みが現れた。
ワンピースを脱がせて、ロイ子の体をじっくりと観賞する。
「あんたの裸を見たのは、俺だけ?」
あんまりニヤニヤと笑うので、ちょっと面白くないロイ子は意地を張ってしまう。
「中尉と一緒にシャワーを利用したことがある。…ヒューズにハプニングで見られてしまったこともあるし」
それを聞いてムカツクのは…中尉はともかくハプニングって何だよと思ったが、雰囲気が壊れそうなので今は余所に置いておくことにする。
「ふーん?こんな所も?」
指を茂みに沈ませ、閉じたラインを優しくなぞり、中指と人差し指でパッカリと開かせた。
そこに顔を近づけ、ペロリと一舐め。途端にロイ子の体が跳ねた。
「ひゃあああん…なっ何だ!今の!」
今まで触れられたことのない場所を舌で弄ばれて、困惑する。
ハボックは構わず舌を尖らせ中へ中へと侵入させ、ロイ子を乱そうと縦横無尽に動かせついには良いポイントを発見。そこを粘着質と思われる程攻め立てた。
「あっあああ…ふ…うう…やっ…ヒャァアアア…!」
シーツを握り締めながらも声を抑えることなど出来ないロイ子は、喘ぎ声を響かせハボックを更に煽る。唇を離し伝うのは唾液と彼女の快楽の証。
初めてイッたので放心状態になり、体からはすっかりと力が抜けてしまった。
十分に潤っている箇所に指を一本、抵抗はある物の何とか入っていく。指を増やし、中で折り曲げれば大きな反応が返ってきた。
「ハァ…ボック…ん…苦し…い」
「大佐、どうしたら苦しくなくなると思う?」
「教えて…おねがい…」
「…Yes sir」
ロイ子のふっくらとしたほっぺたにキスを一つ落とすと一気に貫いた。
「!……………」
ほっとした後の急激な痛みに目を見開いて、声にならない悲鳴を上げる。
自然と涙が出てしまいそれをハボックが舐め取っていった。
「もうちょっと我慢して下さいね」
痛みに震えるロイ子に口付け、艶やかな黒髪をゆっくと手櫛ですく。
黒い瞳の彼女は青い目を見つめ、微笑んだ。
「愛しています、大佐。あんたにこの命をあげます」
「おまえが…必要だから…命なんかいらん…生きてずっと側にいろ!」
「はい」
ギュッと抱きしめた後、ハボックはゆっくりと動き出した。
ロイ子の方も痛みよりも勝る物が沸き起こっている。
「ハボ…ク…どうしよう…おかしくなりそう…」
彼が動くたびに新たな快楽が生まれ、それに慣れていないロイ子は不安げに縋り付く。
一方、ハボックも自身に絡み付いてくるロイ子の中の気持ちよさに耐えるため必死だ。
「気持良い?大佐」
「んっ…いい…いいよぁ…ハボックっぅ…」
そしていっそう激しく腰を揺さぶった時、ハボックは果て、ロイ子は意識を手放した。
ロイ子が目を覚ますともう朝の眩しい光が射し込んでいた。
隣のハボックは、どうやら彼女の寝顔を堪能していたらしい。
まぁいつも見ているのだけれど…
「おはようございます。大佐」
「起きていたのか、おまえ」
「ええ、幸せを噛みしめてたんっすよ。まさか大佐と朝を迎えられる日が来るとは思ってなかったんで…ところでレズじゃないのは、わかったんですけど女好きではありますよね?」
「ああ、否定はできんな」
その即答に項垂れて枕に頭を突っ込むハボック。
その様子をロイ子はこっそり笑っていた。
「俺の立場って一体…」
「おまえは…特別だ!私の恋人はおまえだけなんだからな」
ハボックに覆い被さったロイ子は、彼の唇を塞いだ。
「おはよ…私のジャン」

終わり






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