川べりで
>23氏

「大佐、マスタング大佐」
何だ、冷たい。それにこの声…香水の匂いからしてこれは、ホークアイ中尉か?
「もう、ずぶ濡れじゃないですか。ぼけっと歩いてるから川にはまるんですよ」
ロイの両脇を抱えるようにして、先に川辺に上がったホークアイは後ろから上官を引きずり上げようとした。
どうやら川にはまって、浮かび上がったところで、助けてくれたらしい。
ずぼらな上官に比べて、面倒見のいい部下なのだ。こういうときは有難い。
それにしても体がだるい。
「頭がくらくらする…」
「溺れかけて酸欠なんですね」
足元に気をつけるように散々忠告したのに、上の空だったロイは、案の定川に転び落ちた。
浅瀬に見えたが、水深が深くて引きずり上げるのにホークアイは随分ひやひやしたことだろう。
「ん…?」
途端、引きずり挙げた拍子に、勢い余って後方へ向けてホークアイが尻餅をついた。
どたんと、地面に軽いロイを膝に抱えて二人は共に仰向けに重なりながら倒れこむ。
「いたた」
「悪いな、中尉…」
「平気です。大佐は大丈夫ですか?」
「なんともない。君がクッションになってるから」
はあっとため息がホークアイの口から漏れた。
川にはまったときは驚いたが、こうして呑気なところは健在らしい。
「良かった…いつもの大佐ですね」
そのとき、動かした自分の両手に柔らかい乳房があたったのを覚えホークアイは固まった。
見た目に想像していたとうりのものだった。
こうも密接しているのだから、あえて考えないふりをしていたが、触られても動じない無防備ぶりにかえってこちらが動揺してしまう。
「どうした?もう大丈夫だ。離せ」
「あ…はい。すみません」
「何で謝る?」
「大佐、…やっぱり大きい」
ぐにゅっと突発的にホークアイが重なる上官の胸を揉んでしまった。
「アンッ…や、痛い」
「い、いいえ!失礼しました」
地面を後ずさりながらホークアイは、上官を横へと転がした。
だるそうにロイが前のめりになってかがみこむ。
なんとも言えない空気が流れる。
「何なんだ。中尉…落ち着け」
「はい…、はい」
咳払いをして、ホークアイはこう言った。
「その、他の者達は皆分散して行動しています。合流するまで、時間がありますし、大佐はお休みになっていてください」
「濡れた」
「えぇ!」
何がだ、とホークアイは別の想像をしてしまった。
「服、気持ち悪い。中尉も、びしょ濡れだ」
「あ、ああ!…そうですね。自分は大丈夫です。こういうの、平気なんです」
リュックの中からホークアイはタオルをとりだし、取り合えず、上官の濡れ鼠の状態を改善しようと試みた。
「簡易用の毛布がありますから、火を準備するまではそれ、で…」
――しまった、変えの服なんてない
言いかけて困惑しだしたホークアイは、更に上官に向けた視線によって硬直しだした。
おもむろに、ロイが脱ぎだし、水滴で体に張り付いたシャツから胸の線が強調されていたのだ。
――やっぱでっかい
「中尉」
「……」
「おい、中尉!」
「はい?」
「…向こうむいててくれ」
不思議と見とれいてたらしい。
助けたはずのホークアイはそれを完全に忘れ、何度も謝りながら、火を起こす準備に取り掛かった。


しばらくして、変えの服がなくて、毛布で時間をすごしたロイはだるい体のせいかうとうとと眠りだした。
ときどき、はだけた毛布から巡る肢体が部下の目のやり場を困らせたが、なんとかホークアイはあるだけのタオルを上からかけてそれを凌いだ。
「少し湿ってるけど、しょうがないか」
ロイの服と、視線をそらしながらそろそろ触って確認した女物の下着からそう判断した。
自分のはもっと乾いていないが、とりあえず体に取り込んだ。
とにかくロイの物が改善されていれば動くことができる。
それにそろそろ、皆で合流する地点までいかなければ時間がなくなる。
だが、横に毛布一枚だけの裸の女がいるだけで、勘が鈍くなっていたことにホークアイは後々反省した。
このとき、ある予感を彼はようやく察知した。
火の光で目が上に注意しそこねていたのだろうか。
この上官が頼りにならないのだから、自分が気をつけておくべきことだった。
森林の上に望む雲行きが怪しいのだ。
雨模様の天候に目を顰め、彼はゆさゆさと上官を揺り起こした。
「大佐、雨が降ります。移動しましょう」
「ん、眠い。後で」
「いけません。ほら、早く!」
もたもたとしているロイを待つうちに、数的、雨粒が額に落ちだした。
急がなければ!
装備一式とリュックを急いで前にかけ、背中で着替えを手にした上官を毛布ごとさっさと背負い、…大きな荷物を抱えながらホークアイは走り出した。
「おい、下ろせって。服ぐらい着させろ」
「いいえ、この雨はすぐに激しくなります。安全なところに急ぎますから」
「あのなぁ」
やっぱり熱い、この人。
さっきまで気づかなかったけれど、熱あるんじゃないのか?
移動時、不意に触れた額が異常に熱を持ってことにホークアイは動揺していた。
大きな岩のくぼみがある所にたどり着いた彼らは、そこで雨を凌いだ。
完全に乾ききっていない衣類を切るのをロイは体調から本能的に避け、毛布にくるまり体を壁にもたれさせた。
彼女に解熱剤と薬剤をホークアイが飲ませた後、大きな雷雨が始まりだした。
こういう状況は以前に経験がある。
本当に、急激な体調の変化で危なくなるケースがあるのだ。
おまけに、着替えに目をそらしていたためか、川の中でロイが足を軽く捻っていたのに今更気づく自分に悔やむ。
呑気でずぼらな上官なのだから、こっちがしっかりしないといけない時があるのだ。
今回ばかりは自分の邪念を恨んだ。
この雨では他の同僚達も動けまい。
しばらく、天候が回復するまで動かずにいるほうがいいと彼は判断した。
数時間して、あたりが真っ暗な闇になったころ、寝ずの番をしていた彼は炊いた火が弱まっているのに気づいた。
少し仮眠していたが、時間はそれほど経っていないと落胆させるほど、相変わらずの豪雨だ。
寒さのせいか、密着してきた上官はいつのまにか自分の膝を枕にして寝ていた。
額に手をやった。
薬を飲む前よりは落ち着いた体温らしいのでほっとするホークアイ。
安堵めいた吐息に気づいた上官は、心配そうにしている自分にこう囁きだした。
「ん、大丈夫だ。休んだら良くなった」
「大佐、起きたんですか」
「薬が効いてきたみたい。まだ眠いけど、寝てていいか?」
「ええ、とにかく雨がやんで、明るくなるまで動けませんから」
「お前、脱げ…乾いてないだろ。これ」
躊躇したホークアイを見て、ロイは的確に言葉を連ねる。
「冷たいんだ。中尉も寒いのに、自分だけ毛布をかぶるのは気がひけるんだよ」
けだるげにも自分を脱がそうと手を煩わせだしたロイを横に、
ホークアイはさっさと服を取り払った。
守るように、ロイを引き寄せそうして自分も同じ毛布に含まれるようにした。
半乾きだった部下の服の感触よりずっと暖かくなったのを確認してから、ロイはより密着して眠りに落ちていった。
眠っているとはいえ、艶かしい女性の体が自分に重なっている。
こんな事態なのに、劣情だけは湧き上がってくる。
いやな生き物だ、男というのは。
加えて、数時間が過ぎていった。


仮眠に陥っていたホークアイはいつのまにか、ロイをしっかりと抱きしめていた。
彼女の暖かさをかみ締めながら横になって眠っていたようだ。
呼吸が落ち着いた上官の様子に、心から安心を見つけたがまだ雨と闇夜は困難に二人を立たせてくれる。
夜明けまであと数時間だ…
「あ…!」
火を足そうと、そっと動いた拍子にロイの胸を掌で包んでしまったことにホークアイは気づいた。
乳首にある突状の飾りが判って、彼がぎくりとする。
夕方、上官を引きずりあげてしまったときに揉んだものとは違う感触だ。
女の柔らかい生身の乳房…しかも互いに裸でいる。
「ん…」
瞬間、寝息まじりに、ロイが自分とは違う男の名をつぶやいた。
自分よりも階級のひとつ下の同僚…ハボック少尉の存在がホークアイの聴覚に刻まれたのだ。
なんだ、やっぱりできてたんだ…この二人
やや悔しそうにホークアイは脱力してしまった。
「ジャ、ン…」
続いて再び、妖艶な赤い唇から続いてハボックのファーストネームがでてくると、無性に塞ぎたくなった彼は無意識にロイに口付けしてしまった。
「ん…ッ」
「大佐…」
「……!」
ねっとりと唇に侵入していくと、さすがにロイは途中で目を覚ました。
戦いて、離れようとするが手を掴まれて組み敷かれて動けなくなった。
「や、だ…中尉」
雨の音と震撼がその場を支配する。
しばらくして、こちらをじっと見つめる自分の部下は、優しく額にかかった黒髪を撫でながら声を発した。
「すみません。先に謝っておきます…大佐を抱きたいです」
「中尉、何を言ってる!」
これまでに寄せていた信頼がこん浅ましい行為で消えてしまうかもしれない。
それもいっそ構わない。ハボック少尉のことなど聞きたくない!
「いや…だ」
押さえつけた華奢な体が微動に震えている。
可哀想に思って怯んだホークアイだったが、あえて行為を進めた。
「やだ…っ…やめ、て」
こんなことしたら、貴女は私を恨むでしょうね
女の都合も考えようとしない最低な行為…
「中尉、あぁっ…!」
「私のほうが、ハボック少尉よりもどんな体であるか覚えてください」
耳元で囁きながら、ロイの胸へ落とした愛撫を下半身へ進めていった。
ちろりと指の先で彼女の襞に触れた。秘部に伝う潤いが指に返ってくる。
「はあぁ…ぅあっ」
「もっと解すから、足を開いて」
首を振って、ロイは否と答える。
頑なに拒んで静止を呼び求めている彼女にホークアイが宥めて言い続けた。
「ね、無理に痛くさせたくないんです」
ついぞ、こうしているんだから自分を知ってくれと強欲な考えをホークアイは仄めかした。
指を蕾みの中に幾度か割り入らせ、悪戯を残して引き抜く仕草をしだした。
ねちゃねちゃとした蜜が自分の中からくみ出されてしまうのを聞きながら、ロイは涙を流してしまった。
信頼と安心を預けていい部下で、自分に反するような行為はしないでいてくれると思っていたのだ。
気持ちに整理がつかなくて…彼女は行為に流されながら嗚咽をこぼすが、同時に封印していたものが溢れそうになるのを感じた。
これ以上、掻き回さないでくれ…そう願っていたことなのに!
「駄目、だ…中尉、やめろ…」
「いいえ、大佐…楽にして下さい」
自分をこのまま受け入れるようにホークアイが震える体に望みだした。
口付けで舌を無理に交じわせてきた部下に、ロイは顔を必死で背けて呟いた。
小さな、力ない彼女の言葉…だが衝撃だった。
「…受け入れられるわけないだろう」
「大佐?」
「ホークアイ中尉だけは別なんだよ…君と寝たら、私は…」
辛そうに瞳を濡らした上官の姿に、ホークアイは身体が強張った。
涙を浮かべて、諭すロイにこう言われたのだ。
――精神の一体感だけでなく、体までひとつになったらますます部下にならなくなると…
甘えすぎて、負担をかけてしまうのではないか、と…
「あえて、ハボック少尉を選んでいたと…?」
「ち、違う…でも、違わないかも…」
だが、そんな努力も無駄であることにロイはやりきれなくなっていった。
そして、同時に心を持て余していたのも事実だった。
ハボックに甘えて、少しでもホークアイに仕事以外の面倒を減らすことにしようと目論んでいたが、段々と収集がつかなくなったらしい。
ハボックは自分が甘えるほど優しくなる。
女の扱いにこなれている分、初めは心地よかったが、それを許容してしまうとホークアイに甘えられなくなるのをますます実感するのだ。
――なんて、不器用な人…
この上官は、ハボックのことも別の意味で好きなのだろう。
隠し続けるはずの、昔からの継続した恋心と、ハボックとの新規の恋心…ふたつも所詮は自分で交わしきれるはずもなかったのだと、ロイは自己嫌悪に陥っていたらしい。
だったらいっそ、ハボックを好きでいて、ホークアイとはなるたけ性別を超えた繋がりの信頼で居続けようと彼女は自分に言い聞かせていた。
――でも、嬉しくなる…大佐は私を嫌いではなかった
「だ、…だから、中尉…私は…」
「大佐、目を閉じていてください」
「……?」
「早く…」
言われた通りにすると、しばらくして熱い口付けが自分に重ねられたのをロイは覚えた。
「んうっ…ふぁ」
「目を閉じて、その中に私はいますか?」
「あぁんっ……」
濃厚な愛撫を、しなやかな肢体に落とすとロイの体が紅く蒸気してきた。
強姦や無理強いのない体の悦びがびくびくと反応を返してくる。
先ほどまでの耐え抜いていた身体の揺らめきとはどこか違う。
「大佐、私は貴女の中にいてもいいですか?」
「ァッ…中、尉…」
「お願いです。答えて、まだ間に合うなら…いないなら、ちゃんと離れますから!」
言われた瞬間、ロイは心臓を捕まれたような気がした。
そして、ゆっくりと目を見開いてホークアイの首に両手を回した。
行かないでほしい。中尉もいなければ、私の中は成り立たない
「いて、くれ…」
体の緊張が途端に抜けて、ロイが足を開いてくれたのをホークアイは感じ取った。
「好き…だ」
「大佐、私もです。愛しています」
嬉しさのあまり、ホークアイの表情が今までと比べ物にならないくらい豊かになった。
「ん…ぁ…恥ずかし、い…」
露になった蕾に舌を練りこむと、溢れ出す液が返ってくる。
羞恥に体を染め、びくびくと体を逸らせていく彼女の下肢…
「ひゃっ…ぁ」
息も切れそうなほどに、巡った部分に当たる男の舌が彼女の神経を麻痺させていった。
だがまだ全てが押し寄せてはいない。
ホークアイ自身を受け入れてそれは最上の官能となるのだ。
「あ…」
「大佐、力抜いててくださいね」
両脚がぐっと広げられた。抱えられた腰が予感している。
次にくる興奮への扉を開こうとしているのだ。
「……っ!」
あそこがとろりと潤って、受け入れる準備が整ったと同時にホークアイは体を繋げた。
ハボックとも幾度か経験したことなのに、まるで彼女の反応は色褪せない。
それは、処女を預けてくれる悦びで、ホークアイを錯覚させてしまうほどだったのだ。
「あぁ…はぁんっ…!」
嬌声を帯びた声が回りに飛び散る。
粘液の交わる音が抱え上げた細い腰から伝わり、二人の耳を振るわせる。
貪るようにロイの中で蠢いて、内部で伝わる快楽にホークアイが恍惚となっていった。
「大佐、すごく…綺麗です」
「あぁ、中尉…!」
「貴女も、動いて…もっと感じてください」
ややきつい角度に達した部分で、内奥で別の刺激が加わり、ロイが声にならないほどの快良さで官能に入った。
紅潮した彼女の頬、感じ入って痙攣する体の振動…
「アァッ…中尉、中尉…!」
「愛してます、私が貴女を守るから…!」
二人が溺れ、達した頃より、夜の闇は天候と共に開放された。
朝の光で目覚めたロイは、やや無茶をしすぎた体の残滓に苦笑した。
夢中になったら、先も考えず勢いがとまらなくなるのはお互い様ってことか…
「これまでの自分もそうだったからな」
「え、何か言いました?」
きっちりと服を着替え、用意を整えている部下を見ながら彼女はくすくすと笑い出した。
にこにこしてる上官を尻目に、ホークアイはなかなか準備に取り掛からない彼女に話しかけた。
「大佐、出かける準備をして下さい。服を、早く…着て」
情を交わしても、豊満な体を明るい場所で見るのは恥ずかしい。
そんな気持ちも知らずに未だ服も纏わずにいる上官は、手でホークアイをこまねいた。
そして耳元で悪戯っぽく囁いた。
「これから、仲良くな」
「大、佐?」
「前向きにいこう」
「だから、何をです?」
「ハボックのことだよ。…3人でする時は、手加減してくれよ」
「は、あ…」
想像もせぬうちから、ホークアイの耳が赤くなっていった。
そして、言外の言葉を補うように自分の上官は、こう述べた。
どうやってハボックに説明するかが問題なんだがな…と。

ー終了ー。






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