好きです
>383氏

ハボ子少尉に、撃つ気がなかったのは解っている。
俺が近付いたら、銃を下げてくれたし。
でも、傷付けた。驚いた顔をしていた。
フュリー曹長も、顔を押さえてた。
驚いて、逃げてしまったけど。
あとで大佐に捕まった時に聞いたら、「心配ない」って言ってたけど。
今はそれどころじゃないって解ってる。
他にやるべき事がある。
でも、アイツは、…少尉は女なんだぞ?(俺より身長がでかくても!)
曹長も頭の出血は案外軽傷との事だけど。
せめて、見舞いに行こうと思う。
顔を見て謝って、元気な所を見て、安心したい。

ハボ子少尉とフュリー曹長は村の家の空き部屋で静養していた。
扉を空けると真っ先に掛けられたのはハボ子少尉の声。
「うわーなんて顔してんですか、大将」
元気そうだ。嬉しい。
「あ、エドワード君。もしかしてわざわざお見舞いに来てくれたの?」
笑顔で迎えてもらえるなんて思わなかった。
「あの、あの。ごめん、なさい。怪我させて悪かった…です」
「何言ってんですか大将。これは自業自得ですよ、な、フュリー曹長」
「あっ、ハイそうです。エドワード君が気にするような事じゃないですよ」
「むしろ俺が曹長にあやまなきゃ。悪かった、曹長」
「いやいや、少尉が気にする事でもないですよ〜」
二人とも笑ってくれる。
「あ、お見舞いのお花ですか?じゃあちょっと失礼して花瓶に活けてきますね」
はぁ〜と力が抜けて部屋の床に座りこむ。
「…二人とも元気そうで気が抜けた。よかった。ありがとう」
「大丈夫っすか、大将?」
椅子を出してくれながらハボ子が言う。
「何が?」
「よくわかんないっすけど色々大変なんすよね?」
と言って怪我してないほうの手で頭をポンポンと叩いてくれる。
その感触じゃ嫌じゃない。
気持ちいい。
「今じゃなくていいから…また話、しましょうね」
「いま何が起こってるかの話もいいですけど、いつものたわいのない話でいいっスから」
そう言ったハボ子少尉が儚くみえて、いつもと違う感じがして、ドキドキした。
だからつい口が滑ったんだ。
ちょっと照れくさくて下を向いて。
「傷が残ったら『責任とる』って言えたのに」
なんて。
元気だったからこそ言える台詞。
よかった。ホントによかった。
そう思ったエドワードが顔を上げるとハボ子少尉の顔は真っ赤で。
つられて俺の顔も赤くなった。
(え?これもしかしてチャンス?脈あり?)
「少尉!あの…ホントはこんな時にこんな事、不謹慎だと思うかもしれないけど!」
俺は真剣だ。東方で会った時からずっと…ハボ子の瞳を見つめる。

「好きです。俺の彼女になってください」
「え、あの。大将。俺で、いいんですか?」
一気に恥ずかしさが来る。
「俺、これから、あの、もしかしたら帰ってこれないかも知れない。
 だから返事はその時でいいんで……」
ああ、なんだかだんだんしどろもどろになって来たぞ。
「じゃあ!」
と行って逃げ出そうとすると、部屋に入ってこようとしていたフュリー曹長とぶつかりそうになった。
「エ、エドワード君?もう帰るの?」
「お邪魔しました!」
「少尉、何かしました?エドワード君、耳まで真っ赤でしたけど」
「あー俺の顔も赤いよ?」
「なんか機嫌よさそうですね」
「次に会うのが楽しみだ」

微妙に会話が繋がらない上官と、二人きりのフュリー曹長が胃も痛めたのはまた別の話。

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