ぼくらの恋
>533氏

たくさんの事実を前にし
自分を抑えられなかった時に抱きしめてくれたロス少尉
彼女に何か母親のようなものを感じながら過ごしていると
ある日、リボンに包まれた小箱を渡された
「あっ…コレって」
自分には似合わないような薄い桃色のマニキュア
ロス少尉は何故このような物を俺に?
「エドワードさんに似合うと思って」
「でも…俺は…こういうの出来ないよ。きっと似合わないし、変に思われる」
「たまには女の子に戻ってみるのも良いんじゃないですか?きっと似合います」
「あ…」
「こういう物を身につけられるのも女の特権ですよ。良ければ使って欲しいんです」
ウィンリィがつけていたのを思い出す。キラキラ光る爪と細い指がとっても綺麗だった
俺なら片方の指だけじゃおかしい。でも…ちょっとだけなら…
「ありがとう」
「こちらこそ」
誰も居ない部屋を確認してそっと小箱を取り出す
俺にこんな可愛い色、似合うんだろうか。震える機械鎧の右手で生身の左手の爪にそっとハケをすべらせる
ちょっと難しい。ズレてしまったりムラが出来てしまったり。でも塗る間、昔に戻ったみたいだった
「わぁ…」
塗り終わった左手をかざしてみる。ツヤツヤした爪がなんだかくすぐったい
今度、足にもやってみよう。ウィンリイやロス少尉にコツを教わろう
次はもっと綺麗に塗れるように。アルにも見てもらいたい。あと…

「鋼の?」
「うひゃぁ…!!」
転げ落ちるように椅子から落ちる。なんでこの男はいきなり現れるんだ
いそいでごそごそと小さなボトルを隠すといつもの笑みでニンマリ笑う。バレてないといい
「なんだぁ?大佐ぁ。サボリかぁ?言いつけるぞ!」
「おや?」
素早く左手を取ると手の甲にキス。この気障っぷりがサマになるのはコイツくらいだろう
「レディ、今日は可愛い指をしているね。見せてご覧」
「うわっ!コレは…」
急いで左手を奪い返すと身体の後ろに隠す。恥ずかしい。よりにもよってコイツかよ
どうしよう。きっと言いふらされるんだ。笑い者だ。どうしよう…
「そんな顔しなくてもいいじゃないか。ホラ、泣くな」
「泣いてなんかないよ」
たしかに少し目に水が溜まってるけど涙ではない。断じて
「自分で買ったのか?」
「いや、貰ったんだ」
「男からか?」
「いや、違うよ」
「……そうか。では、今度プレゼントさせてくれないか?」
「な、なんで?」
「君はこういう色も似合うんだね。赤などのイメージが強かったからね」
「そうかな…」
「恥じることはないよ。とても似合っている」
ぎゅっと抱きしめられて背筋がゾクゾクする。大人の腕って大きいんだ
そんなの前から知ってる。大佐、イイ匂いがする
それだって知ってた
指がゴツゴツしてる。手袋をはめた指だって全然違う
ずっと前から知ってる。ずっと見てたから
胸が広くてすっぽりだ。大きな俺でもな!ふふ、心臓の音が早いね

「エドワード、好きだ」
「アンタが、ずっと…ずっと前から好き」
「ああ」








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