逃避行
>386氏

「お帰りなさい!姉さんっ!」
扉が開くとほぼ同時に、僕は姉さんに飛びついた。
姉さんが家に帰って来たのは、約2ヶ月振り。
小さな家でひとりぼっちで待っていた僕は寂しくて
姉さんが元に戻してくれたちいさな体を抱きしめながら、涙の夜を何度も過ごした。
「ただいま、アル、」
そう言いながら少し腰を屈めた姉さんが、僕の頬を撫でてくれる。
久しぶりの姉さんの指は、少しくすぐったい。
「姉さん、お風呂沸いてるから、先に入ってきなよ。」
「うわーありがたいなぁー!実はここ3日位まともに水浴び出来なくてさー」
「見れば分かるよ。姉さん、ボロボロだもの」
髪や顔には女の子とは思えない程、塵や砂やが付いていて
さっき触れてくれた指はガザガザになってるし、よく見たら傷も沢山付いてるみたい。
機械鎧にも…、大きな傷が入ってる。
「じゃぁ入ってこよーっと!」
軍は姉さんに何をさせていたんだろう。
風呂場に向かう姉さんの背中を見つめながら、そう思った。
「あっ、姉さんが上がる前に食事の用意しとかなきゃ」
キッチンに用意してある小さな台に登って、作りかけのシチューをかき回す。
姉さんが取り戻してくれた体。
母さんの錬成に失敗したあの頃のまま、だった。
姉さんが機械鎧のままなのはその所為だ。
戻って来た僕のちいさな体を見て、諦めてしまった。
「戻ってきてもあの頃の手足じゃ、かたちんばだよな。」って、笑って諦めた。
姉さんは国家錬金術師はもう辞めると、銀時計を軍に返しに行ったけれど、「一度首輪をされた狗が、飼い主に逆らうんじゃないーってつっかえされた。」って、また笑った。
どうしてそんなに笑えるの。
どうして簡単に諦めるのさ。
僕はまだ諦めてないよ、姉さんを元に戻す方法がまだある筈だもん。

「姉さん…あのね…、」
シチューを美味しそうに食べてくれる姉さんに、勇気を出して話しかける。
「あの……」
「ん?…もしかして何か悪い物でも入ってるのか…?!このシチュー…」
「ち、違うよ!何も入ってないよっ!失礼しちゃうなー…もう…」
「じゃぁどうしたんだ?アル?」
俯いた顔を突然覗き込まれて、心臓が大きく跳ね上がり
「あっ、あのね、今夜、姉さんと一緒に寝ても…いい?」
言いたい事と全然違う事を口走ってしまった。
…でもこれも言いたかった事のひとつだからいっか。
「ん?いいよ。アルは甘えん坊だなぁ…」
真っ赤な顔の僕の前で、シチューを口に運びながら姉さんは笑った。
違うよ『寝てもいい?』って『そう言う意味』なんだよ、姉さん。
やっぱり、小さな女の子がこんな事言ったって、伝わらないのかな。
そうだよね、それに姉さん凄く鈍感だし。
いいや、姉さんと一緒に寝られるんだもの。
一緒に寝てたらそういう気分にもなってくれるかもしれないし。
あの頃みたいに。
…と思ってたのに、姉さんん…!!
僕が着替えてる間にどうして先に寝ちゃうの!
姉さんは大の字を書いてベッドの上で眠ってしまっていた。
僕が入る隙間無いかな…と一瞬考えたけれど、そういえばもう鎧の体じゃなくて小さな僕なんだ。
姉さんに毛布を掛けてから、開いている隙間に潜り込んでみた。
あったかい…。
元の体を手にしてから姉さんと過ごす夜は全部、こうやって一緒に眠ってきたけれど姉さんの暖かな熱を感じると、本当に元に戻れたんだなって安心して嬉しくなる。
僕は姉さんが起きない事を良い事に、姉さんに体をベッタリと寄せて、その寝顔をうっとり見つめる。

そのうちに顔の小さな傷を見つけて、思わず触れてみた。
もうかさぶたが出来てるけれど、いつの傷なんだろう。
僕が戻ってから姉さんは小さな家を借りて、僕に留守番をさせるようになったから…一緒に行動させてくれなくなったから、
姉さんが傷を負って帰ってきても、もう誰かの手によって手当てが施されていてまた、こんな風に治りかけていて僕の出る幕は全然無くて、少し寂しいような、悔しいような気持ちになる。
姉さんも何も言ってくれないし。
だから、今夜こそちゃんと言わなくちゃいけないんだ。
僕だって、姉さんの事を守りたいもの。
そっと頬の傷を撫でてから、唇を端からそっと撫でる。
それは鎧だった頃によくやっていた事。
こうやると姉さんはくすぐったそうに笑って、僕にキスをしてくれた。
そして急にうっとりした表情になって、僕の足に跨がると
「アル…アル…、」
小さく僕を呼びながら濡れたあそこを擦り付けて……

姉さん、それももうしてくれなくなったね。
僕が小さくなったちゃったから、だよね。
起こさないように注意しながら、姉さんの唇にキスをする。
柔らかくてふわふわしていて、もっと味わいたくなってしまう。
どうせもう少ししたら起きてもらう予定だもん。
疲れてるの分かってるから可哀想だけど…
この間みたいに、朝起きたら姉さんが書き置きになってたーなんて嫌だし。
姉さんさえ頷いてくれたら、これからぐっすり眠る事が出来るんだし。
ようし、と姉さんの鼻を摘んで、苦しそうに開いた口に唇を重ねて
…あれっ…ディープキスってどうやるんだろう…。
舌を舐めたりするのかな…。
唇を開いて舌を伸ばすと、姉さんの歯列をゆっくりなぞってみる。
さらに深く唇を合わせて舌を舐めていると、その異様な状況に下半身が疼いてきてしまう。
一旦唇を離して深呼吸をして自分のあそこに手をやると、思った以上にじっとりと濡れていて戸惑った。
どうしよう、下着まで濡れてるみた……
「あーるー…くるちい……」
「うわぁあ!ご、ごめんなさい姉さんっ!鼻摘んだままだったよ!」
「つーかどーちてはなつままれてるのかなもれー…。」
「ごっ、ごめんねっ、……ぷっ…」
「鼻声位で笑うなよ!」
「あはは、ごめん、ごめんなさい姉さんーっ」
指を外すと姉さんはプンプン怒った。
あーあ、雰囲気台無しになっちゃったな。と思ってたら姉さんの左手が僕の額や頬に当てられる。
「アル、お前顔赤いけど熱あるのか?」
「えっ…?」
姉さんは僕の額に自分のそれを当てて、子どもの頃よく母さんがしてくれたように熱を計ってる。
もしかしてさっきまで僕がしてた事、気付いてなかったのかな。
「姉さん、熱は無いと思うよ。」
「うん、良かった、無いみたいだ。」
「きっとさっき姉さんにキスしてたから…それで赤くなっちゃったんだよ。」
僕は自己申告にもの凄く恥ずかしさを覚えて、姉さんの胸に抱きついて顔を隠しながら続けた。
「普通のキスだけじゃ物足りなくって、姉さんの唇や、舌を舐めたり…」
「ちょっ、ちょっと待てアル、どうしてそんな事…?」
「姉さんの事もっと感じたいからだよ。折角元に戻れたのに、姉さんそれっきり全然僕に触ってくれないじゃない。
僕が鎧だった時はいっぱい触って、いっぱい乱れてくれたのに、どうしてはこっちだよ!」

あっ……
こんな事言うつもりじゃ無かったのに…。
姉さんきっと傷付いた顔してる…。
違うんだ、姉さん、違う、こんな筈じゃ……。
気付くと僕は姉さんの胸で泣いていた。
止めようと思う程ボロボロ零れ落ちてくる。
「…ごめん、アル…ごめんな…」
「どうして謝るの、僕がっ、我侭言ってるだけっなのに、っ」
鼻水を啜る音とか立てちゃって、これじゃ泣いてるのバレバレだよ。
姉さんの前では笑顔でいようっていつも思ってたのに、泣いて困らせちゃって、本当に我侭だよ。
「……触っちゃいけないと思ったんだ…」
姉さんがそう言って僕の背中をそっと撫でる。
「今までと同じ様に触ったら、アルの体に傷が付きそうで…、」
傷なんか…姉さんの方が沢山あるじゃない、って言いたいのに声が鼻声になりそうで恥ずかしくて出せない。
「傷が付いたらもう錬成で治してやれないし、それにアルが痛い思いするのもう、嫌、だし。」
「ねえさ……っ…」
「…もう泣くなよ…なっ、もう寝よう?」
それを聞いてもっと涙が止まらなくなって、僕は子どものようにイヤイヤをする。
「……あした、起きたら、ねえさんいなくな…っ…ちゃ…でしょ…。やだよ…ねえさん…一緒に居たいよ…っ」
「アル…」
「でもこんな小さな体で、今までみたいに姉さんの後ろをくっついて行けない事位分かってる。だからっ…だからね…姉さん……」
ぐい、と抱きついていた姉さんの胸を押し、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を手で拭い姉さんの目を真っ直ぐに見て、言った。

「姉さん、一緒に旅に出よう。」

今度は僕が姉さんを元に戻すんだ。
「国は此所だけじゃない。本には書いてない沢山の国を巡ったら、姉さんの手足を元に戻す方法がきっとあると思うんだ。
錬金術や賢者の石だけじゃなくて、もっと大きな方法があると思う。それが何かは分からないけど絶対に見つけられる。」
諦めるなんて絶対に許さない。
「このまま大人しく軍に頭を垂れるか、鎖を切って駆け出すか、決めるのは姉さんだ。」
姉さんは暫くの間黙ってた。
でも、僕には姉さんの答えが分かった。
あの時と一緒だ。
元の体に戻ると決めた時と同じ目。
「アル、まだ暫く俺の右手冷たいけど、触ってもいいか?」
「…うん!」

抱きしめた姉さんの小さな胸に顔を擦り付ける。
姉さんは僕のパジャマを捲って背中を撫で回すから、僕も姉さんのシャツをたくし上げて姉さんの胸を舐める。
姉さんも負けじと僕の未発達の胸…最近ちょっと膨らんできたかな…を揉み出す。
「あ、やぁ…っ…」
寂しくて自分で触れていた時とは感覚が全然違う。
背筋や太ももがゾクゾクする。
「ねえさ…、こっちでも触って…、」
僕が機械鎧の方の腕も自分の胸に誘うと、姉さんは少し戸惑ったけど、直にもう片方の胸を優しく撫で始めてくれた。
右と左の温度が全然違って、不思議だけど気持ちいい。
そのうち僕の乳首で遊び始めて、立ち上がったそれを口に含むと、舐めたり甘噛みされて
両胸にだ液がたっぷり塗り付けられた頃には、僕は今まで出した事の無いような声で喘いでいた。
僕が姉さんにしてた時、姉さんが出していた声に似てるかも、と思って少し嬉しくなる。

そうやってお互いを撫で舐め回しているうちに、僕と姉さんの足の間は透明の液体でぐちゃぐちゃになっていた。
気付いてしまうとどうにも不快になってきて、互いにパジャマと下着を脱がせ合う。
僕はパンツにしみが出来てる位で拍子抜けたけれど、姉さんは糸を弾く位に濡れそぼっていた。
おもむろに手を弾かれて、姉さんのそこに触れる。
ヌル、と指が滑って鎧の時にしていた様に上手くいかない。
それどころか、姉さんのあそこを触ってるのに、自分のあそこが更に濡れてきたようで気になって姉さんへの愛撫がおろそかになってしまう。
「アル、このまま触ってて、な…」
うん、と頷くと、姉さんの左手が足の間に割り入ってきて、薄く濡れた僕のあそこを探る。
初めは少し引っかかっていた感じが、段々とヌルヌルに変わって、同時に気持ち良くなってくる。
「…はぁっ、ぁあっ、…あん、ひあぁ、、、」
僕の手は快感を追うばかりになってしまって、姉さんへの愛撫を忘れて只、必死でシーツを掴むばかり。
耳を塞ぎたい程の大きな水音がぐちゅぐちゅと響き始め、見ると、姉さんも機械鎧の方で自分のそこをかき混ぜていた。
僕の目は、機械鎧の指を2本、大きく加え込んだ姉さんの花弁に釘付けになった。
「姉さん…っ、僕も…して、…はぁ、、…姉さんの指、入れて…?」
それは憧れとも似ているかもしれない。
あの大きく開いた花は僕が咲かせたものだから
僕も姉さんに同じようにして貰いたい、強くそう思った。

「…駄目だ、アル。」
「ねぇおねがい…、姉さん…」
「それだけは聞けない。」
いつも僕がお願いと言うと、しょうがないなと聞いてくれてたのに、さすがにこれには折れる気配がない。
理由は簡単。
僕が小さい子どもだからだ。
幾ら心が発達していても、幼い体には衝撃が強過ぎる。
「分かってるけど、でもしたいの!」
そうやってまた我侭を言ったら
「じゃぁ俺がアルの指を受け入れた年齢と、同じ歳にアルの体がなったら」
と折れてくれた。
というか姉さんは上手くはぐらかした、と思ってるみたいだけれど、僕はちゃーんと覚えているからね。
楽しみだな。あと5年か…ちょっと遠いな。1年位誤魔化そうかな。
そうやってニコニコしていたら、姉さんの指が僕の小さな実を擦り出した。
ぐりぐりと押しつぶしたり、摘んだりされて、僕はもうどうにかなってしまいそうに狂い喘ぐ。
気持ちいいよりも、怖いものに追われているような感覚の方が強い。
「あぁっ、やだ、や、やめて姉さん、怖いっ…から…ぁあ、っ、」
泣きじゃくっても姉さんは止めてくれなくて、縋るように姉さんの首に腕を回す。
「アル、怖くないから、何も考えなくていいから、一緒にいこう、アル、」
姉さんの喘ぐ声、一層大きくなる水音、自分の喘ぎ声、全てが一瞬鮮明になった後、あそこがヒクヒクと痙攣して、気持ちいいものがどっと襲ってきた。
「や、アァ……ッ!」
「アル、アルぅ……!」
僕が姉さんを押し倒すような形で、一緒にベッドの上に倒れ込んだ僕達は少し呼吸が落ち着くと、余韻を楽しむように笑いながら触り合い
キスを交わし、後始末もそのままに眠ってしまった。


次の朝
姉さんはナイフで銀時計に傷を付け、パン!と手を打ち鳴らすとその手のひらから銀色のヒヨコを産み出した。


エルリック姉妹は金髪の小さな少女と大きな鎧の姉妹です。
見かけたら軍までご一報下さい。

終わり






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