おやすみなさい
>935氏

あるべき筈の所にあるべき物がないと落ちつかない。
布団と枕を干していた。ただそれだけだったのに。
なんでこんな事になっているんだ――!!

家に帰ったロイ子・マスタング大佐は項垂れていた。
お気に入りの枕が裂けていたのだ。
羽毛枕なのでちょっとの裂け目が命取りだったのである。
そういえば猫の散歩コースだったか、等とちょっぴり涙を溜めながら枕の始末をする。
取り敢えず寝てみたが、枕がないという違和感で眠れない。
忙しい中せっかく寝に帰ってきたと言うのに。
…どうせ仕事は溜まってるし、と仕方がないので出勤する事にする。
出勤後、「寝に帰ったんじゃないんですか」とハボックに聞かれて事の顛末を話した。
「枕が替わって眠れないんですだあ?!
 こっちはー最近なんか激務で徹夜続きなんですけどー誰ですか寝れるのにそんな事言うのは―!」
眠いのか語尾が長い。枕が替わったのではなくて枕が…いや、いいか。
猛烈に眠そうな奴に何を言っても無駄だ。

しかし、それを聞いて中尉が動いた。
「ハボック少尉、もう仮眠室にどうぞ」
「ホントっすか中尉!うわ〜もう女神様みてぇ!」
「その代わり2〜3時間後には起きてね?」
「うあい…了解しました!!」
嬉しそうなハボック。
では私も一応仕事に…とデスクに行きかけた私の肩を掴む。
「あ…?大佐も眠いんでしたっけ?じゃ、一緒に」
「えぇっ?!そんな、待てハボック!」
「2、3時間あれば大佐もちょっとは寝れるでしょ?」
そのまま引きずられて仮眠室の扉を開ける。
「まー雑魚寝ですけど。あーなぁ、なんか大佐暖かいなぁ…」
気付けばハボックの左腕に抱えられてしまった。そのまま一緒に布団をかぶる。
すぐに寝入ってしまったハボック。
さりげなくロイ子に腕枕はしてるものの見事な熟睡振り。
眠たいながらにも暖かいものを求めて大佐の体を抱き寄せる。
「コレじゃ私が抱き枕みたいじゃないか…」
軍服の上からとはいえ抱きしめられるのは恥かしい、と体を動かして見るがリーチの差でハボックの勝ちと言うか。逃げられそうにもなかった。
ふと見ると嬉しそうな顔で眠っているハボック。
そんな顔を見てしまったらもう抵抗する気も起きなくて。
されるがままに転がった。
ハボックの規則正しい呼吸を聞いてるうちについうとうとしてしまったらしい。

約束の3時間が過ぎてすっきりと起きたハボックに寝ぼけまなこで「寝足りない」といったら
「続きは今夜俺の部屋で。…来ませんか?」等と囁かれた。

その晩ハボックの部屋で何が起きたかは二人のみぞ知る。
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