帰郷編
>862氏
【注意】鬼畜弟
エルリック姉弟が故郷リゼンブールに戻った直後爽やかな風が吹く。
それはまるで彼女達を置いて先立ってしまった母の「おかえり」の挨拶だろうか。
エド子は詩人のようなことを考えながら、唯一の肉親である弟を連れロックベル家への道のりを歩く。
懐かしい田舎の香りに高揚していたのか、普通にドアノブに手を掛けることなく機械鎧の足で強引に蹴り開く。勿論扉は半壊した。
「ウィンリィ、ばっちゃん!ただ今!」
「相変わらず色気のない大声で…しかもドアを蹴り壊しおって」
「はは…まぁ直すからいいじゃんか」
苦笑しつつ両手の平を軽くパンと叩けば電流のようなものが流れ一瞬にして元通りの玄関。
「な?しかも前より頑丈になったぜ」
「壊したら直せばいいってもんじゃないんだよ!」
「痛て!ば、ばっちゃんおたまで殴りかからないでくれよっ」
故郷に戻ってまず見る光景に、魂と鎧だけの少年は嬉しそうな笑い声をあげる。
その様相とは対照的な幼い少年の声に普通の人間なら驚くだろうが、苦楽を共にしてきた姉やエルリック姉弟の過去の悲劇を知っているピナコは全く気にすることもなく低次元(?)な喧嘩に集中していた。
「そういえばウィンリィは?」
無駄な小競り合いを中止させようとしたのか、喧嘩する前に彼女が居ない家内に首を傾げていたエド子が問おうとしていた内容を先に口にするアル。
「あぁ、あの子はね機械鎧のパーツの買い出しに出かけたよ」
「商売繁盛ってわけだ」
皮肉めいた口調のエドに呆れたようなため息を吐き、アルは姉の手荷物を客間へと運ぶ。
「あんまり嬉しい繁盛ではないけどね」
キセルを手に取りタバコを詰めながら淡々とした返事を返すピナコ。
機械鎧の普及は作業中の事故だけでなく、戦争によって身体の一部が失われることが大半ということを知らない者は居ない。エド子もそれを知っていたが、先ほどの喧嘩でムカムカしていたので真実ではあるが辛辣な言葉を口にしたのだ。
男勝りで負けず嫌いな彼女の性質を理解しているピナコはただ苦笑するのみ。
「姉さん。荷物置いたよ」
「おぅ」
2階の客間から顔を出すアルに軽く手を振り、そっちへと向かう途中エド子は小さくピナコに「ごめんなばっちゃん」と謝った。ロッキングチェアでくつろいでいるピナコは先ほどの怒髪天とは思えぬほどの穏やかな笑みを湛え、無言で頷いた。
その客間はエルリック姉弟専用とでも言っていいだろう。
壁には幼少時エド子とアル、ウィンリィが描いた絵が貼り付けられ、ベッドサイドの小型のテーブルの上には2人が錬成によって作り上げた青銅の女神像。根無し草な彼女達はこの部屋でくつろぐことに最初は困惑気味ではあったが、しばらくすれば心身共に養生する最適な空間として有用している。まだ9代前半の姉弟には家族のぬくもりはまだ必要なのかもしれない。
「ボク達の家があった所、草木で完全に覆われてる」
「……」
窓から身を乗り出し、エド子が焼き払ったエルリック邸だった場所を遠目で見るアル。
感傷に浸るのを良しとしないエド子とは対照的に、アルはあの家を未だ恋しがっていた。
しかし自分の身体を取り戻すために、年頃の女の子が世界を駆け回り、ありとあらゆる文献を読みあさって並み居る障害を排除している。その過程を目の当たりにしているアルはそれ以上何も言うことはせず音を立てないよう窓を閉じた。
鞄から取り出した書物を読む気にもなれず、ベッドで仰向けになるエド子にアルが鎧の身で口づけを施す。冷たい金属のそれは彼女にとっては何よりも甘く優しい感覚となり、照れを隠すため身を小さく捩る。
「ここは宿じゃねーんだぞアル」
「分かってる。だけど今の姉さんにはこうしたらいいかなと思って」
全身甲冑の目の当たりに見える小さな蒼い光、それは彼の魂を表しているかのように愛情に満ち、エド子のささくれ立った気持ちを和らげる。
何よりも誰よりも大切な相手にそのような目(?)で見られようものなら、拒絶は承諾へと変化するのは目に見えている。
「お前ほんとにずりー」
そう言いつつエド子はアルの無機質な背中にその細い腕を回して目を閉じた。
体温を感じずともエド子はこうしている時が一番幸せだと感じる。それは彼も同様で彼女の血の通った暖かく柔らかい体を甲冑越しの魂で伝わったような気がし、幸せに包まれる。
睡魔や食欲、痛みを覚えることのないその体ではあったが、何故か肉欲に関してはそれらの分までプラスしたようで、エド子の抱擁にかこつけて彼女のコートの中へ大きな手を侵入させる。革製の掌が黒の上着越しに乳首を一発で探り当て、指の腹でこねくり回す。
「な!何…してんだよっ」
「珍しく素直で可愛い姉さんに興奮しちゃった」
まだ13の少年らしい可愛らしい声で大人びた台詞を吐かれ、さっきの抱擁が彼のスイッチをオンにしたと理解したエド子はアルを押しのけようとしたが、元々の彼の重量に年齢に相応しない力が加重されているのかびくともしない。
「こんな所でしたくねーっ!」
例え2人の想いが揺るぎないものであっても、ここは幼なじみとその祖母の家。
禁忌をおかした体になった上に、血の繋がっている姉弟がより深い禁忌を犯していることを彼女達が知ったら…とエドが戦慄を覚えるのに対し、アルは飄々とした様子で彼女の衣類を脱がす。これがアル以外の男なら全力を尽くしての抵抗を行うのだが、恋愛感情以前にとことん弟に甘い性格が災いしてか今の彼女が試みる抵抗は猫のじゃれ合いと変わりない。下着も何も抜き取られ、そこに存在するのは生まれたままの姿の美少女。
「肌白いね」
壊れ物を扱うかのようにエド子の乳房に触れる。その瞬間電流が走ったかのように微かに身を震わせる。このような関係になったのは1年前で、その頃彼女は何も知らなかった無垢というか無知な乙女だった。だから当時、鎧の弟がのし掛かってきて体をまさぐる行為に集中してもくすぐったいだけだったが、度重なる愛撫によって性感帯を把握された今のエド子にはアルに施されるそれは甘い拷問になってしまったようだ。
「…ん」
アル同様血の通わない右手を口元に当て、半目で愛しい弟の手の動きを見る。
もし下肢にその指がたどり着いたらと思うと、想像しただけで興奮してしまう。
しかもここは自分たちをよく知る人間の住まい、もしあのドアがいきなり開いたとしたら…
「あれ?姉さん、ここ湿ってるよ」
まるで新しいオモチャを得たかのようにアルが楽しそうに言い、掌を下腹部からうっすらと生えた金色の茂みを通り抜ける。
「あ…アル!だ、駄目だ。そこは……ぁあっ」
制止を振り切り透明な粘液が溢れ出したクレバスに人差し指を軽く押し込める。
その時皮が被った小さな紅い真珠に指が掠ったのか、エド子は発狂したかのように全身をじたばたさせる。
「本当に弱いね」
背徳に満ちた忍び笑いを漏らし、掠った箇所の皮を優しくめくる。革製の指の腹がより大きな快楽を導き、エド子は咄嗟にベッドのシーツを噛み締め家の外まで聞こえそうなほどの嬌声を一生懸命かき消そうとする。
その努力に逆らうかのように、エド子の割れ目からは止めどなく愛液が溢れてはベッドのシーツに大きな染みを作る。無慈悲にもアルの指が執拗に彼女の肉芽を愛撫しては体を弓なりに反らしシーツを噛んで声を押し殺すエド子。その姿がアルの興奮を助長しているとはエド子は気づくことはない。
「やめ…てぇ……」
艶めいた声色で抗う姉に、ご褒美として一番の性感帯への愛撫を与えることにした。
ヌチュリという淫靡な音を立て秘所にゆっくりと挿しこまれる指に大きく身体を震わせ首を力強く横に振るエド子。「それ」をされたら理性が完全に昇華されてしまうから。
「アル…そこだけは……俺…駄目になる…もう…いいだろ…ぉ…」
両手で目を隠し、許しを乞うエド子の年相応の小振りな胸をもう片方の掌で揉みながら指先で乳首を弄ぶアル。
「駄目になった姉さんもとても綺麗だよ」
エド子の哀願を殺し文句混じりで拒否し、アルが愛液の源泉にゆっくりと指を差し入れる。
湿りも何も感じることの出来ないアルの体、だが視覚と聴覚で彼の魂は性的な悦びに打ち震えている。コートで身を包んだせいか愛しい人の身体はまるで雪のように白く、格闘術もかじってはいるもののその肢体は年相応の少女の柔らかい弾力がある。
いつもの少年のようなハスキーな声が、アルの与える快楽で女のそれへと変貌している。
例え自分の立場が弟でなく兄や息子や父であったとしても彼女の身も心も欲していただろうとエド子に愛撫しながら彼は思っていた。
「やっ…ぁっ!あぁぁっ」
活きの良い魚のようにエド子は身を震わせ、大人の男の指の2倍の太さはあろうそれに膣内を蹂躙される。愛撫で生み出されるのはもう快楽しかない。理性が米粒以下まで小さくなり彼女の心を占めるのはアルにイカせてほしいという本能だけ。
「アルぅ…」
「どうしたの?」
次の句を察しているアルのそらぞらしい台詞にエド子は涙ぐんだ双眸で無言の願いを試みる。
「言わないと分からないよ」
「いじわる……」
人差し指で秘所を抜き挿ししながらも姉との淫らなやり取りを楽しむアル。勿論切迫しているエド子には彼の心情を覚ることなど到底不可能だ。
「言わないとこのままだよ」
「……お願…い…指増やして…」
「増やすって?」
「分かって…るクセにぃ…」
「ボクに意味が通じるように言ってくれないと」
「ぉ…オレのあそこをぉ…グチュグ…チュしてるアルの指を増やして…」
「了解」
アルは一度指を抜いてそして人差し指と中指をじわじわとエド子の膣へと侵入させる。
その2本の指によって処女を失ったエド子は一瞬圧迫感で顔をしかめるが、完全に指が膣内に収まると安堵のため息を漏らす。
「1年経っても…最初は辛いな…」
一瞬戻った理性は2本の指のそれぞれ異なる動きによって殺され、止めどなく溢れる愛液の助けもあってか内壁への愛撫にプラスした淫靡な粘着質な効果音が聴覚をも刺激する。
「ひっ……いいっ…いいよぉ…」
両足をくの字にして足の指でもシーツを掴み、狂いそうなほどの甘い刺激に耐えるエド子。
その姿にアルも現実では射精は出来ないが、その魂が絶頂に達しそうだ。
感じる箇所を集中的に擦るとビクッと全身を何度も痙攣させ、もしかしたら何度も彼女をイカせているのかもしれないという感覚に駆られる。だがもっとよがり狂う姉の肢体に酔いしれていたいと、アルの空いている方の手が彼女の膨張しきった肉芽も愛撫しだす。
「あっ…ぁあぁぁ!駄目!だめぇ……駄目アルっ」
「駄目じゃないくせに…」
ぐりぐりと指の腹でこねくり回され、愛液の分泌量も増えていく。尿のようにだらだらと流れるさらりとした粘液はまるでアルに激しくして欲しいという合図のようだ。
「んっぅううぅ…んっ……んんん!」
しっとりと汗で濡れた体を震わせ、どんどん激しくなる指の動きに身をゆだねる。
自分の身も心も全てアルに陥落されている事実をこの時痛感しながら、オーガズムに向け恥ずかしげも無く嬌声を上げる。
「い…イクッ……イクぅぅぅぅ……アルっ…」
「愛しているよ…姉さん」
達する前に必ずアルは彼女にこう囁くようにしている。それが彼女と自分のの絶頂感を何倍にもしてくれる愛の言葉だから。
これ以上もないぐらいの痙攣に似た震えをおこし、その直後全身の力が抜け、両手両足で握りしめられていたシーツは解放された。
鞄の中からタオルを取り出し、優しくエド子の汗を拭う。そして脇にあるティッシュで下肢の汚れを拭き取りゴミ箱に捨てた。
「もし母さんが俺達のこんな姿見ていたら泡吹いて倒れてるだろうな…」
笑えないたとえ話をため息交じりに呟くエド子と「あははは」と乾いた笑い声を出すアル。
「アル!本当にお前こういう時だけブレーキきかねえな」
そう怒りの交じった口調で叱りながらショーツを履く。その様子もまた扇情的だね、と喉元まで出かかった発言をアルは飲み込んだ。理性の固まりに戻った姉は何言っても怒りに変換されてしまうからだ。
「もしあのドアからウィンリィとばっちゃんが入ってきたらどーすんだ。犬みたいに盛ってる姿なんて死んでも見られたくねえ!」
両手で頭を掻きむしるタンクトップとショーツのみのエド子にアルは後ろから抱きしめる。
「大丈夫だよ」
「な、何でそんな落ち着いてられるんだよ」
「だってあのドア、ボクが錬成して向こう側からは壁に見えるようにしておいたから」
「……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
よく見るとドア近辺の床には白チョークで描かれた錬成陣。
「いつのまに!」
「姉さんがボーッと本読んでる間」
「…お前、もしかして最初っからするつもりで……」
わなわなと怒りで身を震わせるエド子をアルはより強く抱きしめて、暴走を抑制する。
力ずくでは彼に敵わないと分かっていた小さな姉は脱力し、項垂れた。
「手合わせ夜まで付き合うから。ね?」
エド子がアルに甘ければ、アルもエド子に甘い。彼女のしたい事に付き合うという提案に暴走寸前の少女に刻まれた眉間の皺が解除される。
「わーったよ。だけどセントラル戻るまではエッチ無しな」
アルの方を振り返りニヤリと笑むエド子はまるで小悪魔のようだ。立場が悪くなったような気がしたアル、今度は苦笑い。
「もう十分だろ」
そう囁きアルの口のあたりにキスをした。
「やっぱり姉さん続きしようっ」
「な?…え?えぇぇぇぇ!!?おい!アル!!待てぇぇぇぇ!」
無機質なケダモノにまた押し倒され、夕飯だと自分達を呼ぶ声がするまでエド子は声が嗄れるまで啼かされたのであった。
おわり