吐息
>242氏

柔らかな金の髪が白いシーツの上に乱れ、ほどける。

極上のシルクを思わせる乳白色の肌を冷たい夜気に晒して横たわる姿をロイは寝台の縁に腰掛けたまま飽かず眺めていた。
ほっそりした手首を胸前で交差させて膨らみの先端を隠し、ぴったりと閉じ合わせた足を胸元に引きつけるようにして、ロイに背を向け身を縮こまらせている頑なな姿は、抵抗の意志よりもむしろ無力さを際だたせている。
そうした無防備な肢体を自ら差し出している事への恥辱を覚えてか、エド子は瞳を堅く閉ざして睫を震わせ、時折唇を噛みしめる。
月明かりに照らし出された少女の肌は、まだ汚れを知らぬ故の瑞々しさに張りつめ、陶磁器の人形のごとく白くなめらかだった。
しかし、細かく震える繊細な睫毛や小さな息を吐く薄く開かれた唇、腕の合間から、ちらっと見える薄紅色の乳輪、そして閉じ合わされた太股の付け根をほのかに覆う繊毛の陰りが目に入る度、ロイはここにいるのが冷たい白磁の天使像などではなく、熱い血肉と、それよりもなお熱い、自分を恋い慕う心を持った一人の少女である事を思い知らされるのだった。
軽く背を丸めたその姿は、虹色に光る貝に包まれて眠る清楚な真珠を思わせて邪な手を退ける一方、艶めかしく誘いをかけてくる。
矛盾した二つの想いのぶつかりあいはこの上もなく刺激的で、指も触れていないエド子の裸体は、過去に遊戯めいて肌を触れ合わせてきた女達の何千倍もロイの欲情をそそり立てた。
そもそもエド子の方からその意があることをほのめかされた時から、ロイは半ば夢に心を預けたような気分だった。
それを言い出すのは、何時になるかは解からなかったが自分の方でありこそすれ、まだ少女めいた幼さの抜け切らぬエド子からは、聞かされるはずのないものと信じていた。
そうして深夜、エド子を自分の私室に招き入れ、黙って白い夜着を薄い肩から滑り落とした裸身が手折られた花のように横たわるまでの間もロイは己の心をどこか離れたところに感じていた。

手を触れると消えてしまう幻を捉えるかのような心地で、ロイはそっとエド子の頬に指をおいた。
エド子はびくりと身体を慄わせ、ぎゅっと己が身を抱きすくめる。
雪白の頬はいま夜目にも鮮やかな紅に染まり、指先に感じる熱が確かな現実の証となってロイを次の行為へと駆り立てる。
指先で掠めるように頬を撫で上げ、ゆるく波打つ金糸の髪をさらりと払いのけて愛らしい耳を露にすると、ロイはかがみ込んで耳元近くに唇を寄せ、とろけるような柔らかい耳朶を甘く噛んだ。
「やっ……!」
まだ口づけを受けるだけでも身を強ばらせるほど与えられる快感には疎い上、緊張と興奮とで激しく神経を昴ぶらせていたエド子は、ほんの僅かな刺激にも過敏に反応して悲鳴にも似た声をあげた。
耳の後ろに口づけの跡を残し、ロイは羽織っていた夜着を脱ぎ捨てるとエド子の傍らに身を横たえた。
恥じらい背を向けたままのエド子のうなじに唇を押しつけて、首筋から肩先までをなぞる。
手は脇腹を通り、なよやかな腕に添わせ、隠された双丘の谷間にそっと滑り込ませていく。
辛そうに身体をくねらせて逃れようとするエド子を腕の中にしっかりと押さえ込み、ロイはその小さな身体を後ろから抱きすくめた形で丹念に愛撫を加えていった。
力を失いほどけていく腕を優しく払いのけて、乳房の丸みを下から押し上げゆるゆると揉みしだく。
声を押し殺し、むずがるように身を捩り続けるエド子の耳元に、囁きよりも甘く息を吹き込む。
固く尖った乳首を摘んで擦りあげられたエド子は、息を呑んで背筋を反らせた。
そのはずみで跳ねた腰が、熱を帯びたロイの半身に触れる。
すかさずロイは腰の位置をずらして、殊更にそれをエド子の丸みのある臀部に押しつけてその存在を誇示してみせた。
エド子はうろたえ気味に、押さえつけられ身動きのとれぬ身をそれでも必死に動かし、あからさまな徴から逃れようとした。
その動きにあわせて、ロイの掌の中の乳房が鞠のように弾む。
ロイはエド子を強引に仰向かせると、その上に覆い被さってエド子の目をくい入るように見つめた。
涙で潤んだ金の瞳の輝きは澄んだままで、逸らさずにロイを見つめている。

「いいのだろう?」
その一言が持つ重さをエド子の身体に刻むかのように、ロイは自らを支えようともせず、無造作に全身の重みをかけてエド子を押し潰した。
瞬時、エド子が苦しげに息を吐き出す。
「きみが私にもっと時間を与えてくれたならば、甘い夢を見せてやる事もできたかもしれない。
けれども今は、私の方が夢に囚われたような心地だ――」
ロイの声音に睦言の甘やかさはなかった。
エド子の耳に息がかかるほどのそばで、ロイは鈍色の独白めいた呟きを漏らしていた。
「これが私の身勝手な願いがみせた幻ではないと確かめたくて……きっと、私は自分を止められなくなる。
いや、もう既に……歯止めが効かなくなっている」
ロイの手がゆるやかに動き、掌がエド子の腕を伝いおりて、指と指とを絡め握りしめる。
その仕草には、堪え切れぬほどの愛おしさにかき消されそうになっている、残された優しさの全てが込められていた。
そっとエド子が、握られた手に力をいれた。
「おれにも、教えてよ――夢じゃないって……」
そう言った続きの、はかなく消えてゆく溜め息のような声は、抱いて・・・、という一言をロイの耳に届けた。
「エディ……」

名前を呼ぶ唇で、返される言葉を待たずに桜色の唇を塞ぐ。
口を閉ざしたまま受けとめたエド子を蕩かすように、舌先で唇の合わせ目をなぞり、徐々に割り開いていく。エド子の舌を探して濡れた舌が奥へと滑り込んでいく。
エド子の手に力がこもり、自分の手の甲に爪がくい込むのを意識の隅で感じながら、ロイは深い口づけをエド子に与え続けた。
きつく吸い上げていた舌を離すと、そのまま唇をずらして上気した頬をなぞり、そこから顎までの線を二人分の唾液で濡れた舌で辿る。
どちらからともなく握り続けていた手を静かにふりほどき、ロイは再びエド子に愛撫を加え始めた。
掠めるように軽く指先を滑らせてゆくのと掌全体で撫でていくやり方を使い分けて、ロイはエド子を翻弄し、熱っぽい身体を徐々に自分の体温へ馴染ませていく。
エド子が次第に艶やかな喘ぎを漏らすようになると、ロイの動きはいっそう力強くなった。
乳首の先端を口に含み、吸い上げられて、エド子は昴ぶるものを押さえきれなくなり、自分にのしかかるロイの首筋に腕を廻してしがみついた。

その抱擁からすり抜けるようにして、ロイは身体を下へとずらしていき、エド子の窪んだ鳩尾からなだらかな腹部へと唇を落としていった。
エド子の身体は溶け崩れながら震え、ロイを追い求める指が腕に肩にくいこみ、闇色の髪の間を滑って、やがて力を失い白いシーツの上に落ちる。
ロイは更に下へと唇を這わせ、愛らしい臍へ接吻してから上体を起こすと、おもむろにほっそりとした足首をつかんで繊細な足の指をくわえこみ、きつく吸い上げた。
「はうっ」
エド子は予期せぬ場所を攻められた驚きに、次々と突き上げてくる快感があられもない声となって洩れていくのを止められなくなった。
ロイは足の指の間までをたっぷりとねぶり、左の足を肩の高さに持ち上げる。
そうしてロイが、すっきりと伸びた魅惑的な脛から膝頭の裏の敏感な箇所、そして綺麗に肉のついた大腿へと丹念に舐めあげていくにつれ、エド子は、
「あっ、ふうっ……んっ、う……はあっ――」
と、一段と激しく声を響かせながら、ロイの唇や指や舌の微妙な動きに反応して、波のように身体をうねらせた。
ロイは唇を更に上へと這い昇らせながら、徐々に自分の身体をエド子の足の間に割り込ませていき、腿の付け根辺りまでに近づいたところでエド子の膝頭に手をかけ左右に大きく割り裂いた。
「や……っ!」
エド子は秘めやかな部位を晒け出されてしまったことを知って、思わずうわずった声を張り上げたが、ロイは意に介さず顔を近づけていく。
生暖かいぬめるような感触が潜り込んできて、エド子は悲鳴をあげた。
咄嗟に足を閉じようとするのを許さず、内腿にかけた手で強引に押し開き、一点に集中させて執拗な愛撫を舌で与えていく。
逃げることも許されず、初めての感覚に四肢を強ばらせて息もできずに喘いでいる彼女を
それでもここで手放す事などできなかった。

次から次へと溢れ出す蜜を吸い上げながら、やがて聞こえてくる嗚咽のような声に甘い響きが混じるまで、ロイは舌先だけでエド子を昴ぶらせていった。
次第にエド子の身体の震えが恐れだけではないものに変わっていくのを、ロイは直に触れた肌から感じ取っていた。
背を三日月のように反らせ、絶え間なく声をあげながら、エド子は全身を揺すぶった。
うねる腰の動きを煽り立てるようにしてロイは愛撫を続け、濡れそぼった花弁を今度は指でそっとほぐしていく。
幾重にも折り畳まれた柔らかい襞の層を一枚一枚押し拡げて、ロイはエド子のいじらしい花芽を露にしていく。
淫らな蜜に濡れそぼったそれは、さも羞かしげに慄えながら、花開く寸前の蕾のように固く立ち上がり膨らんでいた。
爪の先でそっと刺激を与えると、たちどころに奥底から零れんばかりの蜜が湧き上がり、指を濡らす。
エド子が自分のもたらす悦びに身を委ねきり、何もかもを許し与えてくれるのをみてとって、ロイは行為そのものよりも深い痺れるような喜悦を味わっていた。
これまでのどんな逢瀬でも得られたことのない、頭の芯が真っ白い炎に舐め尽くされるような官能と神経を麻痺させ腰骨を蕩かすほどの圧倒的な幸福感が、同時に押し寄せてくる。
愚かしいほどに逸っている心を押さえつけて、ロイは自分を受け入れさせるべく指でエド子の内側を慣らしていった。
時折苦しそうな声を放つエド子を、空いた方の手で温もりを与えて落ち着かせながら、充分に入り口を拡げていく。
そうして潤沢な熱い液の湧き出している蜜壺から指を引き抜くと、ロイはエド子の細い腰に手をまわして引きつけた。

その華奢な身体にこれから与える痛みを思い、微かに苦いものが胸にこみ上げる。
だが――エド子は既にそれを求めるほどに己への想いを募らせ、この時が訪れるのを狂おしいほどに望み、待ち焦がれていたのだ。
ロイが、男ゆえの過ちに目を曇らせているうちに……。

ロイはエド子の両足を持ち上げ、その中心にゆるやかに己を埋めていった。
痛みに刺し抜かれ悲鳴をあげるエド子を、それでもロイは割り開き、上へと逃れようとするのを押さえつける。
痛みを長引かせぬよう、そして出来る限り痛まぬように、一定の速さで腰を進めて根本までを収めきると
そこで一度動きを止める。
そのままの姿勢で動かずにいるロイの背中にしがみつき、エド子は胸を壊さんばかりにでたらめな鼓動を打つ心臓を整えようと喘いでいた。
破瓜の痛みにより自然に零れ始めた涙をしゃくりあげるような息遣いの度、異なる体温を埋め込まれた箇所が絞られてロイを締めつける。
エド子の荒く弾んだ息が僅かばかり落ち着きを取り戻したのをみて、ロイは容赦ない言葉を囁いた。
「――動くぞ」
新たな痛みを感じてエド子はまた小さな呻きをあげたが、一度陶酔に開かれた身体はロイの残酷な動きさえも受け入れて、逃れようとする腰を自らの意志で必死に留めていた。
まだ幾分幼さが残る面立ちを持つ少女の口から放たれる淫逸な乱れ声が、二つの身体が激しく交わり合う音に混じる。
そしてロイのわずかに荒ぶった息遣い、それだけが夜の中に満ちていく。
エド子の中がロイだけで満たされていくように。

意識が砕けて、自分の居場所も忘れ、いま二人を繋いでいる行為を表す言葉さえも忘れていた。
互いが触れ合い、重なり合い、交わり合う部分、そこだけが意識を持っているかのように、望むものを何処までも追い求め続けていた。
突然、エド子の身体が激しく跳ね上がった。
甲高い声で激しい絶頂を叫ぶ。
無我夢中でしがみついてくるエド子を最後に深くえぐり、闇に溶けていく陶酔のなかでロイはエド子の胎内に精を放った。
エド子が目を覚ましたのは、ロイの腕の中だった。
ロイは少し目を細めて、穏やかな笑顔でエド子を見つめていた。
「あ……あれ?」
エド子の声は、寝起きのせいかそれ以外の理由でか、かすれ気味だった。
「俺、寝てた?」
どことなく間の抜けた寝ぼけ声に、ロイはたまらず失笑を洩らした。
「まあ、寝ていたというよりは、あれだな」
意地の悪い笑みを口元に浮かべ、エド子の耳元で囁きかける。
「イッてしまった、というやつだよ」
かああっとエド子は頬を真っ赤にした。
我を忘れ、頭の中が真っ白に染まった後に急激に暗転するあの感覚がいわゆる恍惚感なのだと教えられて、初めての体験を生々しく追想しているのは明らかだった。
「充分満足してもらえたようで、私としても嬉しいぞ?」
「バカッ!」
一声叫んでエド子はロイの視線から逃れようと身をひねり、突然小さな悲鳴をあげた。

「ああ…、むやみに動くと良くない。要らぬ痛みを感じたくなければ、おとなしくしていることだな」
しゃべりながらロイはエド子を抱き寄せ、胸の膨らみをまさぐりはじめた。
「やっ……ロイッ!これのドコがおとなしいんだよ!?」
「私の方は、おとなしくしてなきゃならない理由はないからな」
忍び笑いをもらしながら、ロイはエド子に、今度はごく軽い愛撫を与え始めた。
「やめ……やだってば、ロイ――」
拒絶の言葉を並べながら、エド子は自分が拒んでいるのか望んでいるのか、とうに解からなくなっていた。
追いつめる為ではない、身体の芯をほぐしていくような穏やかな動きでエド子を愛おしみながら、ロイはそっと尋ねた。
「まだ、ひどく痛むか――?」
その言葉の持つ意味をうっすらと理解しながら、エド子は首を横に振った。
「…少しだけ…」
恥ずかしさに消え入りそうになりながら、小さな声で答える。

ロイの手がエド子の髪をなで、耳の後ろを滑り降りて顎を軽く持ち上げる。
唇を合わせながら、エド子は腕をロイの身体にまきつけた。
つい、とまだ濡れている秘部を指でなぞられて、エド子の下半身から力が抜けていく。
ほんの少しだけ差し入れた指先に新たな湿りを感じて、ロイは更に奥を求めた。
「ん……」
まだ熱の冷めきらない身体は、すぐに悦びをロイに伝える。
たった一度の交わりだけで、何かがひどく変わってしまったような気がする。
だがその変化は、それをもたらした行為の激しさとは裏腹に、明るい温もりと柔らかな心地良さを二人の間にもたらしてくれたような気がして、エド子は二度目の行為を喜ばしく受け入れることができた。
今度は心にゆとりがあったせいか、エド子はゆっくりと昇りつめ、長く余韻を味わいながらやがて潮が引くように静まっていった。

暫しの間、エド子に覆い被さったままでいたロイが満足げな息をもらして身を離す。
「参ったな……」
「え?」
「――前から本気だったが、どうやら今度こそ、君の魅力につかまってしまったらしい……
このまま二度と離したくないと思うくらいには」
ロイが腕に力を込めてエド子を抱きしめる。

……愛してる……
二人が共に口にした囁きは、優しく溶けて肌の上に降り注ぐ。
その言葉をロイは、エド子と重ねた身体の奥に深く刻み込んだ。







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