狗
>429氏
大総統府から焔の錬金術師ロイマスタング、そしてその副官に直々の出頭命令が下されたのは深夜の事であった。
深夜に警備上の事で叩き起こされるのは度々良くある事だったが大総統からの直々の召喚は…しかも深夜となるとよほど重要な任務なのだろう。
そう気を引き締めつつ、軍人らしからぬ細くたおやかな指を発火手袋で覆い…焔の錬金術師は歩みを進めた。
大総統府の総統官邸の前に辿り着いた時、先程迄無言だった副官の男リザ・ホークアイ中尉がいつもながらに淡々とした口調で言葉を紡いだ。
「大佐、分かっていると思いますが…」
その言葉を遮るように目配せをし、総統官邸のドアを数度決められた間隔でノックすると、飄々とした表情でその人「キング・ブラッドレイ」大総統と呼ばれる男が姿を見せた。
あまりにも無防備な行動に中尉の目がいぶかし気に見開かれるが、大総統の手に握られている一本のサーベルを見た双ぼうが一瞬薄く細められる。
「君たちか…入るがよい。」
迎え入れられたそこは豪奢では無いが荘厳で重厚な造りの内装の屋敷だった。
大総統婦人とは警備の関係で普段は住まいを別にしているとは聞いていたのだが客間に通されると算段でも前もってしてあったかのように中尉が立ち上がり茶の用意をすると言う。
自分さえ初めて足を踏み入れるこの建物の中を熟知しているかのように。
「不思議な顔をしているな、マスタング君。
戦場では焔の悪魔とすら恐れられた君にそんな顔をさせるのはそこの副官かね?」
紅茶をトレーに乗せ、二人の前まで運んだ中尉の顔は大総統の言葉の前でも揺らぎはしなかった。
まぁ、彼が表情と言う物を浮かべる事の方が珍しいのだが。
当方指令部でも中尉の入れる茶をいつも飲んでいる自分だからこそ言えるが…
彼の煎れる茶は本当に美味しい、この極上の茶の香りも中尉の手にかかればの物だろう。
大総統も満足そうにそれを口元に運ぶ。
「大佐!!」
そう中尉の声が聞こえた瞬間。
半分くらいそれを飲みかけた時…カップが手から滑り落ちる。
手が震え力が抜ける感覚と共に遠のく意識ごと身体をソファにぐったりと預けてしまっていた。
ひんやりとした感覚に目を覚ますと…
そこは見渡すとプレミアもののワインばかりがずらりと並ぶ光景。
石造りの壁と…何故か自分が横たわっているそこにはベルベットの床
そして信じられないが、自分の首に嵌められているのは鉄で出来た犬の首輪だ。
いつでも焔が起こせるように発火手袋を擦れるように腕を構える。
「ほう…?
ようやく目が覚めたのかね?
私の狗達の姿はいつ見ても愛らしい物だよ。」
大総統がグラスを 手にワインを堪能するかでもの様な口調で声を掛ける。
同じく後ろでガチャリと言う音がして…振り向くと自分と同じように鉄の首輪で繋がれている中尉の姿だった。
ただし、抵抗したのかきつめだが端正な顔だちの口の端からは血の痕。
そして…軍服はところどころ切り裂かれ恐ろしい程に美しい切れ味で皮膚一枚だけを切ったような傷跡から薄らと血が滲んでいる。
「私の眼には見えていたのだよ…
君の副官が私のカップに睡眠剤を仕込ませていた事を。
客用のカップを敢えて私が取ったのはその為だ。
ああ、それと…マスタング君。
その手袋はここで使うのは得策では無いと思われるがね?」
確かに地下のワインセラーだけあって…蒸発したアルコール分が空気中に充満しておりある意味、ここでは発火手袋を使うという事は自殺行為に値するものだろう。
この大総統と言う男はどこまでも用意周到でどこまでも歯痒い思いをさせてくれる。
サーベルを構えて中尉に堂々と突き付けるその覇気だけで側に居る自分の腰が竦んでしまいそうになる。
「言わねば…斬るぞ?」
その覇気を射抜くかのような鷹の眼で彼は告げた。
「本当に大総統に相応しいのは誰なのでしょうね?」
くっくっと喉で押し殺すような笑いを噛み締めた大総統は
「私を排してマスタング君の礎にしようとは…随分と思い切った事をする男だ。
気に入った。
このまま斬り捨てるのも惜しい。
確かホークアイ君と言ったな?
今一時私を楽しませる事が出来たら、命の猶予をやろう。
意味は分かっているな?」
喉元に突き付けたサーベルが横を薙いだ。
風圧も音も感じないのに鬼気とした憤怒が襲い中尉の喉元から微かな血の筋が流れた。
微動だにせず、その鋭い眼差しは1つの表情すら浮かべる事無く大総統の眼だけを見て。
「さぁ、どうしたのかね?
狗なら狗らしく振る舞ったらどうなのだ?」
そのサーベルの切っ先が自らの最も信頼する上官に向けられた時。
一瞬苦悩のような表情を浮かべた男は
「大佐、失礼します…。」
何時もより掠れた声で呟いた副官にいきなり口付けられる。
冷静なあの男の動きとは思えない急く様な舌に追い詰められて行く。
「や……ん…止め…ろ中尉!」
後ろ手に押さえ付けられた身体で叫ぶが、その手は征服の意図を強めて行った。
耳たぶを軽く舐められた瞬間
「大総統命令ですから。
大佐は私に身体を預けていて下さい。
直ぐ…済みます。」
身体を預ける?
大総統命令?
そんな理由で抱かれたく無かった。
気休めにしか成らないだろうけど…
「中尉、お前は私の事をどう思っているんだ?
中尉!答えろ!」
情けなく涙声の混じるのも構わず中尉の襟首に手をかけ揺さぶる。
「…好きでも無い女性とは口付けも出来ませんから。
この空間の中…鎖に繋がれて唯一の切り札すら使えぬ自分はただの1人の女。
もうこの際だ…この暴君に見せつけてやろうと自分から彼の方に腕を回しその先に座る男に挑発的な噛み付くような笑みを送ってやった。
「中尉、今ここで私を滅茶苦茶に抱け。」
途端、彼の動きが凍ったように止まる。
「聞こえなかったのか?もう一度だけ言う。
大総統閣下の前で狗の様に私を犯せと言っている!」
自分でも信じられない程の大声を上げた。
地下の空洞が震えるように反響するのを感じる。
軽く頷き中尉の手が乱暴に自分の身体を引き倒し乱暴に胸を揉みしだいた。
この痛みすらも彼の手によるものだと思えば嬉々として私は受け入れよう。
「やっとその気になったのかね。
さて、存分に鳴いてくれたまえよ。」
開けられたシャツの前を引き裂くように狙撃銃を扱う繊細な指が信じられない程の力強さで前を開け、ズボンを引き降ろす。
気が付いた時にはもう自分の身体を覆う物は無くなっていた。
乳房に歯を立てられくぐもった声を上げて挑むように彼の服を引き剥がすと白く無駄な筋肉の無い身体が現れる。
男にその言葉を使って良い物か躊躇われるが純粋に…綺麗だと感じた。
そのプラチナに近い金髪の頭が下に降りて行ったかと思うと太股をぐっと掴まれて吸われる。
痕が付いてしまうのも気にせず、喉から出る声に身を任せ頭をぎゅっとそこに押し付けると熱くぬめる舌がもう愛液の滲んだそこを浅く深く絶妙な間隔で踊った。
「うっ…んひぁ……っ!」
軽く達し敏感になったそこを重点的に責められて靄がかった意識。
このままだとまたイってしまう…
意識を別の方向に向けると上機嫌にあの暴君は2本目を開けているでは無いか。
全くもって憎らしい。
今すぐにでもその椅子から引き降ろしてやりたくなる。
そう思った瞬間身体が裏返されて……
「さぁ、早く狗のように交わったらどうなのだ?
焔の大佐。」
その言葉が靄のかかる中から即座に意識を覚醒させた。
中尉の腹に肘を入れ、動けなくさせた後手元に転がる発火手袋を拾い上げ手に填める。
「お前は誰だ?大総統は私の事を焔の大佐などとは呼ばないぞ?」
情事から引き戻された意識で咄嗟に頭の中で構築式を組み立て発火手袋の錬成陣を用い、空気中のアルコールを分解させ焔を発生させる。
大総統に模したそれは還暦の男の声等では無く、少年の悲鳴のような声を上げながら消し炭と化した。
焦げ臭い肉の焼けるような匂いを背に衣服を出来るだけ整え外に駆け出すと軍法会議所のヒューズ中佐達が慌ただしく到着した頃だった。
「ヒューズ?!どうしたんだ?」
向こうもこちらの状態を見て目を丸くしながら…
「大総統邸に不審者が侵入したって聞いてな、お前さん達も行方が知れないって事でこうしてこんな時間に叩き起こされて来たって訳だ。」
「ああ、その事についてなんだが…」
一部始終を説明しその件は片付いたのだが
不可思議な点が多く、迷宮入りとなってしまうに違い無い事件だった。
「あの姿に声…大大総統そのものだった。
一体奴は何者なんだ?」
首をかしげつつ中庭を右往左往するが答えはやはり見つからない。
「何か府に落ちない点が多すぎますね。」
その破れた軍服の腕をぎゅっと握る。
「まだ…続きが残っているだろう。
今度は……優しくしてくれるか?」
「あら、こんな所で一体どうしたのかしら?」
ワインセラー内の空洞に1人の黒いドレスの女が語りかける。
「まったく…容赦無いんだからさぁ…焔の大佐ってば。
消し炭だよ、消し炭…やんなるよホント。
再生に手間取っちゃってさー。
後さ、この姿見られたく無いし頼むからどっか行ってくんない?」
その言葉を完全に無視するように女は空洞の奥に歩みを進める。
「そう言えば…この姿のままヤった事無かったわよね?」
舌舐めずりするように長く伸びた爪をペロリと嘗める。
「へっ?………
それって…もしかするともしかして…………。」
口元が笑いの形に歪む。
「今日も存分に可愛いがってあげてよ。
覚悟なさい?」
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2004/05/14
虐められて
燃やされて
犯されて
ホントにもう駄目ぽ
<エンヴィ−>
2004/05/15
はらへった
らすとがえん・ぃーは
おいしいといってた
うまいのか?
<ぐらとにー>
2004/05/16
ラ−スが白髪に悩んでいるわ。
過老でぽっくり逝く前にもう一度食べておこうかしら?
それと、今日は特に異常無し。
<ラスト>
ウロボロ業務日誌2
(おしまい)