処女喪失
>906氏
情報収集の為、俺は今図書館に居る。
アルは手入れ用のオイルが切れたから、と少しの間別行動だ。
まぁ すぐに来るだろうけど。
こういう時、俺は
「よし! アルが来る前にすごい本を見つけてやる!」
と張り切ってしまう。
自分でも負けず嫌いなんだな、と思ってしまう時もある程だ。
自慢の集中力で、ひたすら本を読んでいく。
すると、本の中から何かがひらり、と落ちた
「…何だろう、コレ」
「!!!!」
それは、裸で繋がった男女の写真だった。
「な…な…何でこんな物が…
「あ 姉さん、居た居た」
突然アルに話しかけられて、思わず写真を懐に入れてしまった。
「あ…アル、早かったな」
「何言ってんの?店が込んでて、かなり遅いほうだけど」
「そう…かな?うん、本に夢中で気づかなかったよ」
「何かいいの、みつけた?」
「いやっ 特に目ぼしいモノはないな」
「そっ じゃあ早く軍部に行かなきゃ!」
「えっ 軍…?あーっっ 」
そうだった。大佐に呼び出されてここに来てたんだっけ。
約束の時間はとうに過ぎてしまっているが、とりあえず行ってみる事にした。
やはり司令部に大佐はおらず、中尉からはこっぴどく叱られた。
中庭のベンチに腰かけて、大佐への侘びの言葉を考える。
アルに相談しようと思い横を見ると、誰も居ない。
何処に行ったんだろう…
ふと、図書館で拾った写真を懐から取り出しジッと見る。
……スゴイ…スゴイとしか言いようがない。
「セックスって…どんな感じだろ…」
つい、声にしてしまった。
「ほう、鋼のはそんな事に興味をお持ちか」
「!?」
「やっぱり、年頃の女の子なんだな」
背後には今のセリフを一番聞かれたくない、アイツが居た。
次の瞬間、手の中の物を奪われる。
「何処で手に入れたんだい?」
「手に入れ…違う!図書館の本に挟まってたから…」
「これに興奮して、私との約束を忘れたのか?」
違う!と否定しきれなかった俺を、彼が見逃すはずがない。
急に手をとられ、引かれていく。
過去に何度か手を繋いだ事はあった。
でも、今の感触は過去のそれとは明らかに違う。
何処に連れて行かれるのか、何を思って彼はこの手を引くのか
不安を感じ…でも、期待してもいる自分がそこに居た。
行き先は、やはり仮眠室だった。
部屋に入るなり、大佐は身をひるがえした。
視界が暗くなったと思った時にはもう、唇を奪われていた。
何度も想像していたキスは、唇が戯れるようなもの。
こんなにも深く、熱くさせるものではない。
自分の知らない世界。…怖い
怖いはずなのに、知りたいと思っている。
どちらが本当の気持ちなのだろう。
ただ、誰にも内緒で心に決めていた事がある。
初めての相手は…ロイ・マスタングだ、と。
誰にも打ち明けた事のない自分だけの秘め事。
それが叶ったと思うと、胸が熱くなってくる。