first love lesson
>867氏

最初はただの気の合う喋り友達みたいな感じだった。
歳が離れてるせいもあったけど、男とか女とか気にしない関係っていうか。少尉だってオレの事『大将』とか男みたいに呼ぶし。
会ったらいつもバカ話して笑いあって、それが楽しかったし。でも東方司令部に寄った時に人づてで少尉が恋人にフラれて落ち込んでるって聞いて…ああ、少尉も特別な人を愛したり愛されたりするんだと。
そんなの当たり前の事なのに。少尉はれっきとした大人の男性なのだから。
でも何故かオレの心の中にはモヤモヤが沸いてきてその日は少尉に会わずに、報告書を大佐に渡すと逃げるように宿に戻ってしまった。オレが少しずつヘンになっていったのは…それから。
「で。また大佐がそこでイヤミったらしく…」
「あはは、そりゃムカつくよな〜」
エド子が居ない間に東方司令部内で起こった出来事をハボックがジェスチャーや声真似付きで大げさに話して聞かせる。それは何気ない、不定期ごとに行われるエド子とハボックのコミュニケーション。
エド子は自分の不在時の皆の状態が聞けるのが嬉しかったし、ハボックも軍部の仲間内では話づらい上司の愚痴なども聞いてもらえる為いつもより口数が多くなっているぐらいだった。
「でも良かった」
ひとしきり話終え、新しい煙草をふかしながらふと呟くハボックにエド子は首を傾げた。
「だって近頃の大将、帰ってきたと思えばでっかい怪我してて。皆で心配してたんスよ」
「え、そ、そっかな。ごめん…」
怒られたわけではないのにエド子が謝りたくなってしまったのは、きっと彼の表情があまりにも悲痛だったから。
しかしまるで自分の痛みを汲み取ってくれているかの様な、慈悲をも含んだ優しげなものでもあり…それは他人の傷に敏感なエド子には肉体的な衝撃をよりもダメージをココロに深く刻んでしまう。
「あ―…そんな顔すんな。心配したのは本当だけど怒ってはいないよ。大将達が手に入れたいモンが危険を伴うのは知ってるし、それは俺なんかが口出し出来る事じゃない」
ハボックは先程とは打って変わって情けない笑顔になると、今にも泣きだしそうなエド子の頭をくしゃっと撫でながら続けた。
「でもな、話を聞くぐらいなら出来る。なんか吐き出したくなったら頼ってくれていいんだぞ?」
そう穏やかに言って。それだけでもうエド子の胸は一杯になる。
いつも自分だけで突っ切ろうとして迷惑ばかりかけているのに、この人はこんなにも優しい…だから好きになってしまったんだ。
本当は凄くお人好しで面倒見が良くて、褒められるのに慣れてなくてくすぐったそうに照れる仕草だって、その一つ一つが自分の心を捉えてやまない。柄にもなく目頭も熱さを訴える。
「ありがと…少尉」
俯きがちにポツリと、か細く漏らしたたった一言の呟き。
それにどれだけの想いが込められているかなんて考え込むのも無粋で。ハボックはそんな彼女の精一杯の感謝の言葉を噛みしめる様に、先ほどよりもやんわりとエド子の髪に指を通らせながら撫でた。
「じゃあ。俺はそろそろ仕事に戻るな」
「うん―――ホント、ありがと」
結局あの後も傍でエド子の気持ちを落ち着けてくれたハボックは自分の休憩時間を潰してくれていたらしく、応接室に取り付けられていた無線によって中尉に仕事に戻るようにとの指示が伝えられた。
(まあ20分の休憩で30分過ぎも経っちゃあな…)

ハハと自分に苦笑を贈ると「後で他の皆にも会いに行ってやんな。会いたがってたぞ」とエド子に言い残し、仕事場に向かうべくそこを後にした。

「………はぁ……」
ドキドキした。いや違う、正確には今もドキドキしている。
とくんとくんと運動した時などとは違うリズムを鳴らす鼓動。自分の耳にこれでもかと届くのに不快ではないのは、あの人を想って鳴っているからなのか。
「少尉…」
はぁ…と再度漏らされた熱っぽいため息が一人になった、だだっ広い応接室に響く。
「――っ!」
だがそれから間もなくエド子は自分の身体の異変に気付き、それを確認しようとそろりと手を伸ばす。
―――じわっ―――
“そこ”は予想通り湿っていた。何の刺激を受けていないにも関わらず、少し触れただけで奥から滲みだして溢れてきてしまう程にしっとりと。
「ちょっ…ウソだろ?!」
(ちょっと喋っただけでこんなになるなんて…!)
エド子の身体はハボックへの想いを自覚し始めてから、急速に変化を遂げだした。
今まで風呂で体を洗う際などに何気なく触っていた乳房や秘部。以前はただでさえ性に疎いエド子にはどうという事もなかった。
しかし自覚してしまったあの日を境に、何がどうしてしまったのか自分が聞きたいくらいに敏感になってしまった。

彼の事を想えば想うほど乳房は苦しくも甘い痺れを起こし、秘部からはとろとろと必要もない粘液が溢れ出すように…いつの間にか、その感覚を沈める為に自慰までマスターしていた。
それからは小石が坂を転がっていくみたいに簡単に身体は快感を覚えていき、今ではアルに隠れて真夜中にシャワー室で週3回はしてしまう。

正直エド子は怖かった。ずるりと渦に飲まれていく様で……しかもあまつさえ自分の想い人を俗に言う“オカズ”にしてしまうなんて。
なんて汚らしいんだと散々自己嫌悪にも陥った。だが止まってくれないのだ、この無駄に若い貧欲さは。

「とりあえずコレをなんとかしないと…」

場所が場所だけに抵抗はあるが、こんなになったまま外を歩けるほど自分はポーカーフェイスが上手くはないから。
エド子は上着の留め具を外しインナーをたくし上げてそれを口に持っていき、身に付けたまま手を差し入れ乳房を弄ぶ。そして、かなりこねてしまっている筈なのに綺麗な桜色を保った突起を潰す。

「んむっ…んんぅ…」

布を口に含んだままだと少しは声が漏れるのを抑えられるもののやはり敏感すぎるらしい自分を叱咤しながら、近くを誰も通らない様にとエド子は願うばかりだった。

「んくっ…」

ズボンのベルトを解いてチャックを下ろし下着の中に片手を忍ばせると、くちゅりとすでに潤みきった音が聞こえ羞恥心を煽る。
エド子は以前に触れて感じた所を重点的に攻め、指をさら奥へと進めていった。
「…ひょう…いぃ…っ」
早くも快楽に翻弄され始めたエド子は、罪悪感をひしひしと感じながらも先程会ったばかりのハボックを思い浮かべる。

(ごめん少尉…オレ、最悪な女だよな…。でも…もう止められないんだ…!)

想像の中の彼にひとしきり謝ると、エド子は次第に行為を激しくしていった。



つづく







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