姉さんと僕
>629氏
元の身体を取り戻して、そろそろ一年。気が付けば僕は16になり。姉は、17になっていた。
半年ぶりぐらいに元東方司令部の人たちにあって、こそりと代わる代わるに言われたことは、姉が随分と綺麗になっただとか、女らしい体型になっただとか、そんなことばかりだった。
確かに、旅をしていた頃の姉は外から見れば少年のようだった。
けれど、姉は一年で大きく変わった。
一番の原因は、たぶん初潮が来たことなのだろうと僕は推測している。
平均から見れば随分と遅い初潮で、姉がいつまで経ってもそういう意味で『女』にならないことを、ピナコばっちゃんやウィンリィはひどく心配していたらしかった。
けれど、遅すぎた代償なのか随分と痛みに苦しんでいた姉は、二人が心配していたのだと告げれば、困ったように笑んだだけで。
おそらくは、二人が心配していたことなど、姉はとうに知っていたのだろうと思う。そして、姉は意志の力で『女』になることを拒んでいたのだ。
初潮が来れば、女らしい体型へと変化してしまう。それは旅を続ける僕らにとって、不利なことすらあれ、有利に働くことなど殆どないと悟っていたのだろう。
だから、姉はずっと意志の力だけでそれらを拒み続けてきたのだ。
女の人は、なんて不思議な生き物なんだろう。不思議で、尊い。
そんな姉は僕らが元の姿に戻ってすぐに初潮が訪れ、それに伴うように体つきもこの一年で随分と変わってしまった。それこそ、常にそばにいる僕すらもが戸惑うほどに。
腰だけが元のまま細く、肩の線や足が緩やかな曲線を描き。胸は綺麗な円を形作って、触れればふにゃりとどこよりも柔らかい。
抱き締めたら壊れてしまうのではないかと、そんな錯覚を抱かせるのに充分な身体になっていった。
変わらなかったものといえば、相も変わらず伸び悩んでいた身長と、真っ直ぐすぎる性格と、それから口の悪さ。
小さな身体に女らしい身体は男の庇護欲や征服欲を掻き立てられるようだけれど、反面、その性格と口の悪さで、近づいてくる男は少ない。
正直なところ、僕には万々歳だ。
あの僕よりも色鮮やかな金の髪も、金の瞳も。小さな身体も、それに似合わない結構なボリュームになった柔らかな胸も、細い腰も、形の良いお尻も。
全部全部僕が独占できると考えれば、これ以上に幸せなことなどない。
……はじめの頃は、なんで誰も姉の可愛らしさを理解できないのだとぷりぷり怒っていたものだったけれど、あの頃の僕は若かった。