Blue days note
>859氏
犬って云うのはこう…四つん這いで歩いたり走ったりして、眼がクリっとしてて、尻尾をパタパタさせて飼い主を追いかけたりする生き物だと俺は認識している。
と言うか、そんなのは今日日幼稚園児でも知っている。
少なくとも金髪で金色の眼で服を着てちょっと垂れた耳が可愛くて……じゃ無くて、頭を撫でると嬉しそうに眼を細めて擦り付いてきてそこが可愛い……いやいや!
まぁとにかく、犬って云う生き物は飼い主に忠実で…
『わんっ!!』
そうそう、こんな風に可愛く吠えて見上げて膝の匂いを嗅いだり…って!
「エド、大人しく隣に座ってろって!」
きゅ?と可愛く…いやいや、首を傾げて、分かったのか分かって無いのかひとしきり膝の匂いを嗅ぐと、エドは俺の太股に顎を乗せてくつろぎ始めた。
犬についての考察を邪魔したのはエドと云う名前の犬では無く、右手左足がオートメイルで最年少国家錬金術師になったと世間で有名な、うちの大佐のお気に入り登録されている、エドワード=エルリックだ。
ただ、今俺の足に頭を預けているエドには、犬耳と尻尾が付けられている。
一応断っておくが、これは間違っても俺の趣味じゃぁ無い。そもそも俺はロリ属性なんざ持ち合わせていないし。
まぁエドは幼女って歳でも無いが。
取り合えず。
こんな妙な事になったのも、うちの上官の無能のせいなのだ。
今日の仕事も終わって、家で飯を食って。食後の一服でもしようかと煙草に手を伸ばすが、中は空だった。帰りに吸ったのが最後だった事を思い出し戸棚を漁ってみるが、こんな時に限って買い置きも切れている。
こりゃ今から買いに行くしかないか。
しかし、確か家に帰り着いた頃に雨が降り出したはず。雨の中買いに行くと煙草が湿気てくるから厭なんだが、背に腹は代えられない。
買い置きは明日晴れたらやれば良いし、取り合えずは今吸う分だけ買えば良い。
そう決めて、財布と鍵と傘を持って近所まで煙草を買いに行ったその途中。
『あ!ハボック少尉、良い所に!!』
そう呼びかけて来たのは、エドの弟のアルフォンスだった。
傘も差さずに走り寄ってくる。鎧が錆びる心配は無用なんだろうか。
まぁ錆びたところで兄貴が錬金術で直すんだろうけど。
「おう、珍しいな一人で。どうかしたのか?」
『あの、兄さん見かけませんでしたか?この辺りに居ると思うんですけど…』
「いいや。さっき家から出たばっかだが、それらしい姿は見かけなかったぜ」
『そうですか…』
鎧だから表情は読み取れないが、残念そうなことだけは何となく分かる。
「喧嘩でもしたのか?」
『いえ…そう言う訳じゃ無いんです。実は……………
兄さん、犬になっちゃったんです』
………………何故だろう。
真面目な弟の言う事が、ちっとも全く意味が分からない。
つづく