女の会話
>877氏

「大佐、今日はまたいちだんと気合のはいった格好ですね」
ブラウスのボタンを外しながらホークアイ中尉があきれたようにロイ子をしげしげと見つめる。
「そうか?」
照れるような誇らしいような表情でロイ子がホークアイの方を振り向いた。
ロイ子がたった今はきかえたばかりのストッキングはいわゆるパンストではなくガーターベルトでとめるタイプのもので、黒地に繊細な柄の入ったもので少しでも乱暴にあつかうとたちまち破けてしまいそうな代物だった。
ロイ子は細心の注意を払ってそれをひっぱりあげていた。
ショーツとブラはそろいで、やはり黒地のレース。アクセントに赤が使われ妖艶な雰囲気を醸し出している。はちきれんばかりのロイ子の胸が窮屈そうに押さえ込まれていた。
「どうだ?これで今夜、ハボック少尉はケダモノのように私を求めてくると思わないか?」
ロッカーの扉にはめ込まれた細い姿見にうつる自分の姿をロイ子はうっとりと見つめた。

ホークアイ中尉はため息とともにブラウスを脱ぎ捨てた。一方のホークアイは薄いラベンダー色のシンプルなデザインでそれは彼女の体を品良く見せていた。
「少尉、それ似合ってはいるが少し地味じゃないか?」
スカートのホックに手をかけているホークアイにロイ子は言った。飾り気のないホークアイの今日の下着のチョイスはヌードブラと言われるものでアウターにひびかないと言うのがうりのものだった。
脱いだスカートの下はやはりシンプルなデザインだった。
「だって、大佐のようなタイプは今日の服には似合わないんですもの」
ホークアイはぴったりと脚にはりつきそうな細身のパンツを出して見せた。
「服に下着の線が出るのはみっともないですから」
ホークアイはパンツに足をとおして、上はざっくりと編み上げた春物のセーターをはおる。
ビビットカラーのトートバックをあわせたその格好は女学生のようだった。

ロイ子は膝丈のタイトスカートにワインレッドのシャツを合わせ、第二ボタンまで外し襟元をのぞかせていた。細い銀の鎖がきらきらと飾っていた。
鎖骨の上できらきらと光る銀の鎖をホークアイが目をとめる。
「それ。ハボック少尉からのホワイトデーのお返しですよね?」
上目使いでロイ子が頷く。
「そういう中尉こそ、そのバック。フュリーからだろ?
エルメスの新シリーズ。それの色調の暗いやつは私も目をつけていたのだが……」
ホークアイはふふっと笑って頷いた。
「私、そういうのあまり興味なかったんですけど。これ限定品なんですね。
今日来てたエド子がそう言ってうらやましがってました。
贈り物は金額じゃないって思うんですけど、やっぱり高価なものを贈られるとうれしいですね。女性のイヤな部分て言うか計算高くってヤな感じですけど」
恥ずかしそうにホークアイは肩を竦めた。
「それは違うぞ、中尉。やはり金額は大事だ。」
真顔でそう力説するロイ子にホークアイは思わず噴出した。
「等価交換の原則に反すると思いますよ、大佐。
ところで、今日はこれからハボック少尉のお家ですか?」
「ああ、今日こそ騎乗位に挑戦だ」
ロイ子はぐっと掌を握り締めた。
「大佐、もしかしてとは思うんですが今日一日そんな事考えてました?」
ホークアイは額に手をあててため息をつく。
「ああ、考えていた」
ふふんとロイ子が何が悪いと言うように胸をはる。
「ようやく迎えた週末だ。一週間も禁欲生活が続いたんだぞ。ハボックを書庫に誘わなかった私の理性を誉めてほしいくらいだ」
「それ、自慢になりません」
「中尉だって今日はフュリーのところだろ?」
ホークアイは恥ずかしそうに微笑む。
「中尉、上官ではなく友人として聞くのだが正直なところフュリーとはどういう関係なんだ?いや、言いたくなければ……」
「何って、大佐とハボック少尉と同じですよ。週末に一緒に過ごして。職場では知らん顔してますけど」
「一緒って、やっぱり夜の方もあるんだよな?」
一瞬、ホークアイの顔が朱にそまりそして弾けるように笑いだした。
「一緒だって申し上げたでしょう?もっとも大佐と少尉がどういう夜の生活を営んでいるかは存知あげませんけど」
「だってフュリーだぞ。想像できない」
「私だって、あの真面目で不器用そうなハボック少尉がどうやって大佐を悦ばせてるか想像できませんけど」
ホークアイは一旦言葉をくぎるとロッカールームに備え付けられたソファに腰をおろす。
ロイ子も隣に座った。バックからチョコの箱を取り出すと封をあけて膝の上にあける。遠慮なくホークアイもそれに手をのばした。
「私が話したら次は大佐ですよ」
まず、バスタブにお湯をはって今日はラベンダーオイルを数滴おとします。
もちろんフュリーは気づいてるんだろうな?
さあ?気づいてないと思います。ローズオイルの日はピンクって決めてるんですけど。ああ、この前なんて眼鏡かけたままバスルームに入ってくるから
湯気でくもちゃって。何か、そういうトコかわいいと思いまません?
湯船に浸かってる私の腕からマッサージしてくれて、で、髪の毛あらってくれるんですけどたまらなく気持ち良いです。人の手で髪さわられるとぞくぞくする。
それで?
お風呂からあがると私の体をバスタオルで優しくぬぐってくれて、パジャマを着せ掛けてくれます。
眠る前には一杯のホットミルク。
まさか、それでおやすみじゃないだろうな?
何言ってるんですか、大佐。そんあ事ありません。
今度は私が彼の体をマッサージして……
ホークアイが勝ち誇ったようにロイ子に視線をおくる。
うちは毎回騎乗位。だって彼ったら恥ずかしがって一緒のベッドに眠るとき私に背を向けるんですよ。
最初は仕方ないかなって思ったんですけど、いつまでたっても手も握ってこないんですもの。
仕方ないから襲っちゃいました。
やめてください少尉なんて言われて、実はちょっと気持ち良かったかな?
ああいうのってクセになっちゃいますね。一生懸命な彼を見下ろしているとすごい可愛らしくて、守ってあげなきゃいけないみたいな気持ちになるんです。
でも、それが物足りなくなるようになるのかな?
そしたら、私も大佐のコト見習ってそういう格好で彼の事誘惑してみます。
腕にはめた時計にホークアイは目をやる。
「私は裏門で待ち合わせてますけど、大佐は?」
「正面玄関時計のところ」
「次は大佐の番ですからね。首尾よく成功したらお話してもらいますよ」
ホークアイは立ち上がるとスカーフを器用に花の形にまきつけた。
シンプルないでたちが華やかにかわった。
「大佐、そうやってハボック少尉の気を引くのも良いですけど、たまには意外性で攻めてみても良いのでは?少尉はけっこう地味好きとふんでるんですけど。では、良い週末を」
ロイ子はホークアイに手を振って見送った。










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