鎧アル×エド子
>815氏
お腹の中でこっそり飼っていた猫が、変な声をあげて昨夜出ていった。
そのせいで姉さんにバレて怒られたのもショックだけど、猫の変わり様の方がもっと衝撃だ。
おとなしくて、めったに鳴かなかったのに。狂ったように身をよじって、大きく鳴きながら出ていった。
発情期だったんだね。気付かなくてごめん、苦しかったね。
人間にも発情期ってあるのかな、と姉さんに聞いたら、ンなもんあるかと一蹴された。
それがないから人は増え続けるんだと、一応は錬金術師同士らしく議論が交わされたけれど。
僕は、あると思うんだ。もちろん、体のない僕が実体験として持論を展開してるわけではなく。
ほかでもない、姉さんの体から発情期の有無を感じるんだ。
「……ん、っん、あ…アル、 もっと、もっとぉ」
「姉さん、僕はいいけど、大丈夫なの? …その、声とか」
「我慢する、我慢するから、アル……もっと、下も、して…」
街から街への列車の中、姉さんが僕を求めたことがある。乗客のまばらな客車の、一番奥の席で。
周囲にはいないけれど、ほんの数メートル先には他人がいるし、いつ誰がこっちへ来るか知れない。
列車の走行音が少しはかき消すとはいえ、女性の喘ぎ声って、けっこうわかっちゃうんだよね。
普段の姉さんなら絶対に、あんなことは望まない。あんな、危うくて何の得もなさそうなこと。
あの時の姉さんは普通じゃなかった。上着の留め金や二重のベルトを自分で外して、僕を誘った。
僕も少しは逡巡したけれど、姉さんのいつになく潤んだ目を見ると、何かが僕の中で沸いた。
赤いコート、黒い服、白い肌、その奥の薄い赤。今の僕には、それが目眩としてしか伝わらない。
体があったら、この目眩は何として感じられるんだろう。
「あっああぁ!」
「しー…、姉さん、声大きいよ」
「ぁ……ぁう、ん、くっ…」
「あれ、姉さんって、胸だけでそんなに感じてたっけ?」
「や、ぁ…気にするな…ぁ、どうでもいいだろ…んっ」
「いーや、気になるね、僕としては」
胸の突起を指の間で摘まみ上げるようにして、乳房を揉みしだく、というか擦り上げる。
揉めるほどないからなぁ、そのうち大きくなるといいんだけど。
姉さんは着ているコートを両手で広げて、僕の手の行く先と動きを隠している。
それは着ている服の前を広げて、僕を迎え入れてるようにも見える。その顔は淫猥の一言につきた。
こんな顔の姉さんは、絶対に誰にも見せられないから、座席に横にならせて膝を立たせた。
そのままズボンを下着ごと引き降ろす時も、姉さんは自分から腰を浮かせて手伝ってくれた。
合わさった太股にどうしても目がいく。そこには、もう愛液が流れ伝っていた。
まだ下には全然触れてないのに、この反応の良さはなんだろう。
男なら溜まってた、とか表現できそうだけど。女性だもんね…女性も溜まるのかな。
割れ目に指を軽く這わせただけで、姉さんは体を震わせて背を反らせた。
割ってみれば、もう液がとろとろと流れ出てきて、どれだけ前もって濡れていたかが知れる。
これなら慣らす必要もないかと、いきなり指を奥に向かって差し入れた。
「んぅ! んん…っふ、う」
「姉さん、すごく濡れてるよ、ここ」
「んん、ぅ、ん…ん、ふぅ、ん…んん!」
「いつから我慢してたの? これじゃ下着も濡れてるでしょ、もしかしてズボンまで濡れてる?」
姉さんは声をあげないように、コートの襟を噛み締めている。
飲みきれなかった唾液が、口の端から流れ出ているのを指で拭くと、姉さんがその指を舐めた。
そのまま指を銜えられて、僕はただ本能のように指をゆっくりと前後させた。
姉さんは、上と下の両方の口に僕を銜え込んで、両方から止め処なく雫を垂らしている。
少し眉をよせてはいるけど、気持ちよさそうな顔をして、目が合うと微笑んだ。
ぴちゃぴちゃという濡れた音や、姉さんが堪らず椅子の背を蹴る音くらいは、走行音が消してくれる。
奥の壁を擦り続けるのとは別の指の腹で、入り口の上の突起を押しつぶすように揉みたてた。
姉さんは背を反らし、右足をぴんと伸ばして体を震わせた。
中の指には激しいうねりが伝わってくる。
他の客席からは、姉さんの靴が座席からはみ出て見えてるだろうけど、寝てると思ってくれるはず。
唾液と涙とで、姉さんの顔はべとべとのくしゃくしゃになっていた。
こんなに乱れた姉さんを見るのは久しぶりで、昼間の客車の中で見るのはもちろん初めてだ。
あちこち拭いてあげようと思うのに、手元にあるのは小さく頼りない手拭いだけで。
顔はともかく、下はこれじゃ拭いきれないから、タオルを出そうと荷物に伸ばした手をとられた。
「アル、いいから」
「え? いいって言っても、拭かないと服が着れないでしょ」
「いいんだ、まだ」
「…え?」
「まだ、もっと…して、アル」
姉さんは、とった僕の手に顔をよせて、さっきみたいに指を舐めてから口に銜えた。
そのままの上気した顔で僕を見上げてくる。
…すごいね、完璧に誘う目だ。
これまで姉さんと、そういう行為は何度もしたけれど、初めて姉さんから『女』を感じたよ。
誘われるままに空いた手で膝を割って、濡れた内股を撫でると、姉さんの体がぴくんと跳ねた。
ぬるつく割れ目から指を差し入れてかき回すと、姉さんは反射的に僕の指に噛み付いて堅い音がした。
このままじゃ歯を傷めるかもしれないから、指を抜いて、代わりに手拭いを噛ませた。
抜いた指は、姉さんの唾液に濡れたままで、胸の突起を嬲る。
割れ目に差し入れた指は、さらに奥へと潜らせて、姉さんの好きなところを集中的に擦り上げる。
姉さんは体を捩らせながら、手拭いを噛み締めて、喘ぎ声を耐えてるようだ。
それでも時おり、列車の揺れのせいで指が予測できない動きをすると、高い声が少し漏れる。
慌てて周囲を見回すけれど、寝ている乗客も多く、誰も気付いた様子はない。
ほっとして姉さんを見ると、相変わらず濡れた目で、小さくごめんと告げてくる。
大丈夫だよと言うと、微笑みながら手拭いを銜え直す。
その仕種に、ないはずの僕の体がどうにも熱くなって堪らなくて、指を激しく動かしてしまう。
僕の指に合わせて姉さんの体が跳ねて、やがて背を反らして硬直し、ぐったりと脱力する。
それを、姉さんが求めるままに何度も何度も繰り返した。
目的の駅に近付いた頃には、内股と、下に敷くかたちになっていたコートは、どろどろになっていた。
とりあえず拭こうということで、二人がかりで体とコートをごしごしやって、どうにか身支度する。
駅に降りて今日の宿を探す。できれば、二人一部屋に泊まりたい。
列車の中でさえ、あんなに求めて乱れたんだから、今夜は存分に絶頂を味わってもらいたいんだ。
でも、そんな日に限って、あいにく宿が満室。
仕方なく野宿しようとしてると、宿屋のおばさんが気の毒がって、自宅に泊めてくれるという。
こんな図体の僕がお邪魔するのも気が引けるから、姉さんだけ泊めてもらうようお願いした。
二日間の滞在期間中、昼は一緒に調べものができても、夜は別行動になってしまった。
結局、次に僕が姉さんの体に触れることができたのは、あれから三日後の夜だった。
→中編