鬼畜ロイエド子
>278氏

左手が痛い。
エドは胸のうちで呪詛の言葉をさっきからずっと繰り返している。
自分を押さえつける男の顔を振り返って見るのも嫌で、だからうつぶせにされているのは都合が良いといえばそうなのだろう。
黒い皮のソファの光沢がやけにいやらしく感じるのは、普段軍のお堅い話に使われているはずの執務室のソファのその上でこのような行為に及んでいるせいだろうか。
それなりに上等な家具はスプリングが程よくきいていて、ロイが身動きするたびにぎしりと音を立てる。
「……っ……、ぐ」
そしてエドはますます左腕に立てる歯に力を込めた。
今日は絶対に声を出すようなことがあってはならないのだから。
ロイはエドの腰を引き寄せ、より深く己を突き挿れてくる。
それを受け入れるエドの身体がふるふると力なく震えて、男は笑った。
「強情だな、君は」
普段なら抵抗の言葉を投げつけてやるところだが、いったん唇を左手から解放してしまえば、とたんに嬌声をこらえきれなくなるのは目に見えていて、今のエドはそういった口答えすら出来なかった。
ソファと身体の隙間に手を差し込まれて胸を柔らかく愛撫されると、足と足の間がもどかしくなって思わず男を締め付ける力が強くなる。
そんな自分の反応に男がヨロコブのがわかって、エドは怒鳴りつけたいのを必死でこらえた。
ロイがくつくつと笑っているその身体の振動ですら、エドの膣は愛撫だと勘違いしてしまっているのか快感へと変換する。
とっくに硬くなった薄桃色の乳首は少し先端にかするだけで下肢へと影響を及ぼす。
脳の中をじんわりと浸していくような気持ちよさになにもかもぶっとびそうになるが、左手の痛みがかろうじて意識をドアの外へと繋ぎとめてくれていた。
そこに、ドア一枚隔てた向こうに、アルが。弟のアルファンスがいる。
だから何があっても、あられもない声をあげるわけにはいかなかった。
ことの起こりは今から少し前、エルリック兄弟が東方司令部からの呼び出しをうけたところから始まる。
「え? アルも一緒でいいの? 本当に?」
エドはどうせまたロイに抱かれなければならないのだろうと半ば諦めにも似た気持ちで軍に出向いたのだが、意外なことに
今回はアルの同行が認められたのである。
ひょっとして今日は軍としてごく普通のまじめな任務についての用事なのだろうかと、安心して二人連れ添って執務室に赴くと、そこにはロイの他にホークアイもいて、それでエドの警戒心はこの時点でだいぶ薄れていたのだ。
途中でロイに仕事を言いつけられたホークアイが退出したときもさしたる疑問は抱かず、錬金術師同士で一般人には小難しい会話を交わした後用事も済んだので帰ろうと立ち上がったときも、なにもなく東方司令部を辞せることに喜びを感じこそすれ、ロイが何かをたくらんでいることなんて微塵も考えなかったのだ。
ドアの方へ身体を向けたエドを、鋼の、と呼び止め、
「少し話があるのだが」
と言ったロイのあの顔は、エドに嫌な予感を抱かせるには十分だったが、後悔してもすでに遅かった。
二人きりにしてくれないか、とアルにドアの外で待つように指示したロイが、最初からなにもかも計算ずくだったというなら、これほど性質の悪い男に目をつけられてしまった自分の不運を呪う。
そして今、先に述べたようにソファの上で強姦されているわけだ。
どこまでオレをバカにすれば気が済むんだよ……!!
「っん、んんぅ」
怒りと快感による熱でのぼせそうなほど紅潮した顔に力いっぱい左腕を押し付けて、溢れ出しそうな声を我慢する。
どろどろに融けて絡み合う秘裂が卑猥な音をエドの耳へと届け、ロイが赤く柔らかな肉の奥を暴くとエドの背にぐっと力が入った。
「…………!!」
下半身の快感をやり過ごすことに意識を集中させながら、エドは扉の向こうを思う。
とっとと男を満足させれば、あの金属でできているくせにひどく優しい腕の中へと帰れるのだろうか。
もう少し力を込めればきっと左手の皮膚はやぶけて血が流れてしまう。
声を出すことと出さないことどちらが正しい選択なのか、どうすればいいのかわからない。
じんじん疼き、熱を持つ花弁にロイを咥えこんで、あまつさえそれが気持ちいいと思う自分を認めたくはなく。
「ふっ……ん」
肉がこすれ、今まで自分の中をいっぱいにしていたものがゆっくり抜けていくのにしたがって、エドは背をふるわせた。
一度ぎりぎりまで引き抜いた後に、にゅちっ……と、再び根元まで埋め込むように腰を進めてくる。
全身をびくんびくんとさせながらエドは限界が近いことを悟った。
開いた足の間に出入りするロイに高められて、下腹部で爆発を待つ快感を解き放つべくエドは膣を収縮させた。
「ん……んっ、んんんんぅん――――!!」
ぎりりと強く腕の肉を噛み締めエドは声を殺した。
快感の絶頂のエドの内でロイもまた熱くたぎっていたものをはじけさせる。
激しい波が去り穏やかな凪になる。エドはゆっくりと呼吸を繰り返して乱れた息を整えた。
ロイが互いの分泌した液体にまみれ役目を終えた己をエドの胎内からずるりと抜いた。
「んぅ……」
エドの鼻から微かな甘い息が漏れる。
全裸でソファにぐったりと横たわるエドを横目に、さっさと軍服の乱れを直す男。
(ほんとに、どこまでも軍人らしいよ、あんたは)
オレをいたぶってそんなに楽しいか、とエドは心中で毒づく。
だるい体をおして起き上がろうとすると、窓を開けて戻ってきたロイからティッシュケースを渡された。
これで拭け、ということなのだろうか。
いくら妊娠の心配が無いとはいえ、それをいいことにそのまま中に出されては、後がめんどくさい。
それに濡れた下肢ははっきり言って不快だ。
「お望みなら舐めとってさしあげるが?」
「ふざけんな……自分で、やるよ……」
憎まれ口にも力は無く、語尾は聞き取るのが難しいくらいに小さかった。
正直立ち上がるのも億劫なほど精神的にも身体的にも疲れていたが、だからといってこのまま寝ているというわけにもいかない。
左腕を見ると歯形がくっきり残り、その噛み痕のところどころにうっすらと血もにじんでいた。
アルの前で長袖を脱がないようにしなきゃなと思いながら赤い体液をぺろりと舐めとる。
その様はまるで小さな手負いの獣だ。
幼い性器に不釣合いな雄と雌の匂いをまとわりつかせたエドは、手の中の薄く柔らかな紙で丹念に汚れを拭いていく。 
太ももを流れた蜜の跡や、膣の中に吐き出された精液も出来るだけ綺麗にして、ようやくエドは散らばる服に手を伸ばした。
その間ずっと痛いほどのロイの視線にさらされどおしだったが、エドはあえてそのことを気にかけていない風を装った。
この部屋に入ったときと寸分の変わりもないように服を着込んで、エドは床に落ちている愛液を吸った紙くずをゴミ箱に捨てようと身体をかがめる。
それをロイの手が遮った。
「……なに」
ロイを見上げたエドの目に映ったのは、男のトレードマークである発火布の手袋。
ロイは紙くずを空中に抛ると指を擦り合わせた。
ぱちん。軽い音と共に炎が上がり、宙に舞っていた紙は一瞬で燃え尽きた。
残ったのは焦げ臭い、火のにおい。換気に加えて匂いをごまかせるし証拠隠滅になるかなとロイは笑った。
男の計算高さに、エドは薄ら寒いものを覚えた。どんなに走っても先回りされているような気がする。
不機嫌に踵を返しさっさと出口に向かうエドの背中にロイの声がかぶさった。
「別れの挨拶ぐらいあってもいいのではないかね?」
「……じゃあな」
これで文句ないだろ、とエドは扉に手をかけたが、そのときふと視界に影が差した。
不審に思って反射的に顔をあげた途端、キスをされて。
どういうつもりだ、なんで今こんな、大佐から離れないと、しかし扉はもう開いてしまった、早く閉めなきゃ、そこにはアルが――――。
めまぐるしく思考をめぐらせている間にいつのまにかロイの唇はどこかに行っていて、ドアの横にはこちらに背を向けたアルが立っていた。
見られなかったことに安堵した一瞬の後、エドの血は沸騰した。
アルには絶対に知られたくないのに、それをよりにもよってこの男は!!
考える間もなくエドはロイに殴りかかっていて、そしてこちらに気づいたアルの声で我に返った。
「兄さん! どうしたの?」
エドのこぶしを危なげなく避けたロイにもアルは尋ねる。
「た、大佐、兄さんに何か言ったんですか!?」
「いや、それにしても相変わらず背が伸びないね、と」
「あー、それじゃ兄さん怒りますよ……」
暴れるエドを羽交い絞めにしながら言うアルに、エドもだんだん落ち着いてきた。
ここはロイに話を合わせた方が、アルに変な疑いを持たせることもないかもしれない。
「誰が見るたび縮むどちびか!!」
「そこまで言っていないよ」
「兄さん、落ち着いて。どうどう」
「オレは馬じゃねぇ――!!」
自分の心に誤魔化しはきかないことを知っていて、でももうしばらくそのことから目をそらしていたかった。
いつになればこのくだらない演目の幕をおろせるのだろう。








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