エド子一人エッチ編
>前スレ89氏
「水はサイドテーブルの上、着換えはそこの椅子の上。僕はご飯買ってくるから、その間に汗かいたら着換えてね」
退屈だからって本なんか読まないように。大人しく寝てるんだよ。
釘を刺して部屋を出て行く弟の巨大な後姿に、べえと舌を出してエドはベッドに寝転がった。シーツにこもった湿気が不快に頬に触れる。
外はよく晴れているようだが、陽射しは閉じた鎧戸に遮られ、昼下がりの宿の一室はうっすらと暗い。
こんな昼間っから寝てられっかよとぶつぶつ言っても体はやっぱり重く、頭も霞がかかったようにぼんやりしていて、言われるまでもなく
本など読む気にはなれなかった。
一昨日から続く熱は体の中にわだかまったまま、いまだ下がる気配はない。
旅の途中で立ち寄った小さな町で、突然高熱を発して倒れたエドに下された診断は「風邪と過労」だった。だから睡眠はしっかり取ってってあれほどいったのに。夜なべして本読んでるから。良くなるまで絶対ベッドから出さないからね、と、安堵の反動で怒りまくったアルにはこってり油を絞られたが、倒れた姉に泣きそうなほど動揺する姿を見せられたあとでは、反論もできなかった。
肌触りの悪い毛布を頭から被り、エドはごろりと寝返りを打った。昨日は一日ぐっすり寝ていたから、今日はすっかり頭が冴えてしまっている。
まだ体がだるいし、弟が怖いから大人しくはしているが、それもそろそろ限界だ。
「退屈だってのー」
静まり返った部屋の中に響く声も、いつもよりかすれている。暑い、つまんね、腹減った。アルのバカ、さっさと帰って来いと呟きながらまたごろんと寝返りを打つ。少しもつれた金の髪が、氷の溶けた水枕の上にぱらぱらと散らばった。
熱のせいか、体がひどく火照っている。ぬるい水枕などではなくて、もっと冷たいものが欲しい。
少しはいいかと自分の機械鎧の腕を顔に押し付けてみたけれど、これも生ぬるいだけだった。
鎧戸は閉じてあったが窓は僅かに開いていて、涼しい風がこもった空気を揺らす。退屈しのぎの慰めに自分の腕にほお擦りしながら、エドは同じ感触を持つもっと巨大な手のことを考えた。
あの冷えた鋼の手。弟の、大きくて硬くて少しオイルの匂いがする手。あれならきっと、もっと冷たくて気持ちいいだろう。
あれが触れてくれたら、なかなか下がらないこの熱もだるさもまとめて吹っ飛ぶと思うのに。そう、あの時のように。
体の奥で、ふいに病とは別の熱が湧き上がった。だるさとぼやけた思考、自分の汗の匂いも拍車をかける。
急かされ、敏感になった肌の上を這いまわる、なめし皮の無骨な手のひら。耳をくすぐる優しい声、鋼と鋼が触れ合う鋭い音。
押し開いた足の間を探りながら、濡れた粘膜を掻き分けその奥へと潜りこむ硬く冷たい指。
足の先から頭まで突き抜ける、気が遠くなるようなあの快楽。蜜にまみれた冷たい指は、体の中であっという間に自分と同じ温度になってさらに熱と狂乱を引き上げていく。遠ざかっていく自分の嬌声。弾けとぶ意識。真っ白になる世界。
夜毎、この体に熱をかきたて、また冷ますあの鋼の手。
熱のせいではなく熱くなった顔を押さえながら、おいおいやばいって、とエドは自分に突っ込みを入れた。
欲情なんかしている暇があったら、とっとと風邪を治さなくては。退屈だし旅も続けられないし、無駄金使うし不自由だし。
何よりこんな状態では、求めたところで弟は気を使って触れてもくれまい。喉が痛くて、アルの好きなイイ声も聞かせてやれそうにないし。
せめて熱くらいは下げておかないと。
……いやいやいや、論点ずれてるだろ。落ちつけ俺、とさらに一人突っ込みをしてみても、顔の熱さは増すばかりだ。
ヤバイな、と思ったときには遅かった。
顔のほてりが全身に広がっていく。熱は熱を呼び、下腹が溶けた鋼を流し込まれたように熱くなって、その熱に息すら燃えだす。落ち着かなくて無意識に摺り寄せた足の間は、早くもとろけ始めていた。
熱があるからだ、熱のせいで変なんだ、と思い込もうとしても、体は勝手に昂ぶっていく。こみ上げる熱はもう押さえることもできない。
何とかしたい。
どうしよう、と焦りながら毛布から顔だけ出し、エドはきょろきょろと辺りをうかがった。
昼下がりの宿の中は人気もなく静まり返っていた。弟はまだ出て行ったばかりで、ドアの鍵もしっかり掛けられている。
数瞬迷い、やがて、ええいちくしょうと思い切りよく寝巻き代わりのタンクトップをめくり上げると、エドはその中に恐る恐る手を這わした。
普段、どちらかといえば冷たい生身の左手は、今は火がついたように熱くなっていた。同じくらい熱い肌を探りながら、アルはどこまで買い物にいったんだろう、とふと思う。頭の下で、水枕がちゃぷんと音を立てた。
普段意識して触れることなどない自分の肌は、熱のせいでしっとりと湿り、滑らかなのに指先に吸いつくようで、なんだか変な気分だ。
あちこちにある細かい傷を撫でながら、これはいわゆるオナニーかと思った瞬間、エドはその言葉の衝撃に気を失いそうになった。
恥ずかしいというより情けなくて、いっそう顔がほてってくる。
アルとセックスするようになった今も、その前も、エドは自分でこの類のことをしたことがなかった。以前はそんな行為は想像の範疇外だったし、知った今も毎晩のように満たされているから、自分で慰める必要などないし、したいと思ったこともなかった。
それがまさか、起き上がるのもかったるいこの状態で実行することになろうとは。
確かに、列車に何日も泊り込んだりしたから、今日でもう一週間はしていない。こんなに長く触れ合わなかったのははじめてだ。が、それでもたかが一週間なのだ。その程度も我慢できないとは、俺ってもしかしてものすごくエッチな奴だったのかと、エドは少々自己嫌悪に陥った。
しかし、ともかくこの熱を押さえなくては休むどころではない。風邪治さないといけないしと、無理やり自分を納得させる。
(ここはとっとと一発抜いちまってだな……いや、女の場合はなんていうんだ?)
微妙な謎に悩みながら、薄っぺらな腹を伝って乳房に辿り着く。それは相変わらずふくらみとも呼べないほどで、指を伸ばせばこの小さな手でも覆いきれてしまう。わかっていたことだがちょっと悲しい。
だが、己のほかに唯一触れることを許しているアルはこの胸が好きで、何かといえば触りたがる。
(だってかわいいもの。ないぶんカバーするくらい感度いいし)
こんなものの何がそんなに面白いのか、と以前理由を聞いた時は、本気か嘘かにこやかにそんな答えを返しやがったから、顔面がへこむほど蹴り飛ばしてやったのだが。
でもあの手に触られるのは、悪くない。
指が余りまくる大きな手のひらで包まれると、小さなふくらみもほんの少し形を変える。先端の薄紅が指先でこすられ硬くなり、鮮やかな濃い赤へと変わっていく様は、自分でも綺麗だと思っていた。
ふにふにと、まだ硬いふくらみを指先で揉みながらしばし考えこみ、それからエドはぷくりと柔らかな先端を、手探りで探してつまんでみた。
途端に背中から首筋にかけて、ぞくぞくと快感が走る。
(うわ、変な感じ)
指の間でつんと固くなったそこから慌てて手を離す。呼吸が落ちつくのを待って襟ぐりを引っ張りおそるおそる覗き込むと、乱れたタンク
トップの中で右の乳首だけが赤く、固くなっているのが見えた。
子供じみた小さな胸に表れたその変化は、己の手が起こしたものだと思うとさらに卑猥に思え、また顔が熱くなる。
誰も見ていないのはわかっているがやっぱり恥ずかしい。もうやめるかと一瞬思ったが、下腹の疼きはまだ止まらない。むしろ中途半端な胸の刺激に、いよいよ強くなったようだ。
これでは駄目だ。これでは足りない。この疼きをおさめる方法が一つしかないことを、もう自分の体は知っているのだ。
速い息を吐きながら、熱い体を両腕で抱きしめる。機械鎧の硬い感触に、背筋がぞくぞくした。
こんにゃろう、と誰に向かってなのかわからないまま呟くと、エドは目を瞑ってハーフパンツを脱ぎ捨てた。
下着を下ろすのはなんとなくためらわれ、そのままで左手を中に突っ込む。半分やけになりながら薄い柔毛を分け、奥へ奥へと手を伸ばすと、そこはもう、とろとろと蜜で濡れはじめていた。
うわ、乳揉んだくらいでどうしちゃったんだ俺!と心で叫びながらも探ると、指先が開きかけた花弁に触れた。濡れた柔肉は温かく指に絡み、触れるたびきゅうと疼くような快感が湧き上がった。だが同時に、妙な違和感も溢れる。
なんか変だな、と首をひねる。胸をいじっていた時も思ったが、悪くはないが何かが違うのだ。敏感な場所に触れるのが細くて小さな指であることに、どうにも違和感が感じられて仕方がない。
(違うって、なにが違うんだ?)
手を止め暫く考える。やがて行き着いた答えに、熱っぽい顔が青くなった。
いやまさか、と思いながら左手を抜き、エドは今度は機械鎧の右腕を下着の中に忍び入れてみた。
「あっ」
下腹を突き上げるような快感に、押されるように悲鳴が上がった。冷たい鋼が柔らかな花弁を掻き分ける感触に、ざわざわと全身が総毛だつ。
浮き上がる腰を押さえることもできず、短い息を吐きながらなおも指を動かすと、溢れた蜜が鋼に絡む粘着質な音が聞こえた。熱く濡れそぼった柔肉に、絡んだ鋼の温度がどんどん引き上げられていくのがわかる。
勝手に動く指と腰で快感を掻き立てながら、エドは頭の隅で、おいおいまずいんじゃねえか俺、と、またもや自分に突っ込みを入れた。
生身の指より鋼の方が感じるなんて、ちょっとやばくないだろうか。人として。
悶々と悩みながらも手は止まらない。
花弁の中から溢れてくる蜜を指に絡め、花芯にこすりつける。膨らんだそこに触れるたび、じんと熱い衝撃が体を貫き、勝手に腰が震えた。
喉から漏れる悲鳴は枕を噛んで押し殺し、繰り返し蜜をすくってはそこに塗りこめる。じりじりと炙られるような快感がはじけそうになった瞬間、指を離して、はじけそこねた快楽を焦らすようにまた花弁を探り、蜜をすくいとる。
いつもされる通りの情欲の高め方だ。慣れた体はもどかしささえ快感にすりかえる。
溢れた蜜はとうに下着から染み出し、内股に流れ出して膝まで伝っていた。その雫が這う感触さえ情欲を掻き立てる。
「あっ、あっ、あっ」
勝手に漏れてくる声は、かすれているせいで逆にいつもより甘ったるい。みっともねえと思うと同時に、ちょっと聞かせてやりたいとも思う。
こんな声はなかなか出せないから、きっとアルは喜ぶだろう。
触覚を持たない弟が、快楽を得られるのは視覚と聴覚からだけだ。だからセックスの時、エドはいつもわざと乱れる。淫らな声で、囁きで、姿で、その僅かな快楽を何倍にも高めてやるのだ。それはいつもアルを喜ばせ、またエドにもいっそうの快感をもたらした。
もっとも後半になればそんなことを考える理性など吹っ飛んで、何を口走っているのかわからなくなるほど、あの指にとろかされてしまうのだが。
だがさすがに、自分で自分をそこまで追い込む勇気はない。
刺激に耐えられなくなったところで鋼の指を、小刻みに収縮を繰り返す花弁の中に潜り込ませる。
柔らかなその奥に、円を描くようにしながら指を進めていくと、冷たさと、それを上回る快感が背中を突き抜けた。ん、ん、と押し殺した歓喜の悲鳴を上げながら、ゆっくりと自分の中に硬い指の抽送を繰り返す。
大きさは違っても呑み込んだ感触は同じ無機質で、弟の指を思い出させた。まるであの冷たく硬く、巨大で力強い鋼の鎧に抱かれているような
気がして、快感以上の安堵を感じる。
同時に、なんてこった俺ってやっぱりそんな趣味だったのか、と、エドは軽い絶望感に襲われた。
この若さで、無機質でしか感じられない鎧フェチ、鋼フェチとは。10代にしてはマニアック過ぎる趣味だ。
でもそれはきっと、他の快感を知らないからだ。だってこの体が知っているのは無骨な鋼の指と、冷たく硬い鎧の体だけなのだから。
出だしが余りに特殊すぎた。こうなるのもある意味仕方ないことといえよう。
などと自分をごまかしてみてもそれこそ仕方がない。このヤバイ性質を改善するにはどうすりゃいいかと、エドは白くなり始めた意識の隅で必死に考えた。
さあどうする。鎧しか知らないのが根本的な原因なら、いっそ生身体験でもしてみるか。
(バカいえ)
溶けかけた理性の提案は、僅かな気力が即座に却下した。落ち着け俺、ずれてるぞ。なにが悲しくてそんなことしなきゃならんのだ。
他の男なんか冗談じゃない。他の男なんか。
小刻みに動く機械鎧の右腕を伝って、溢れた蜜がシーツにこぼれた。下着はとっくに濡れそぼって落ち、役目を果たさなくなっている。
根元まで呑み込んだ指を一度引き抜いて、二本に増やしてもう一度突き入れる。新しい冷たさにまた背筋を快感が駆け抜けた。左手で薄い胸を掴むと、触れてもいないのに乳首は両方とも硬く尖り、じんじんと痺れるような感覚を伝えていた。
ああ、熱くて熱くて、気が変になりそうだ。
じゃあ、どうしたらいいんだろう。
体と同じくらいとろけた頭で、機械的に指を動かしながらしつこく考える。花弁はすっかり開いて震えながら指に絡みつき、そのたび頭が燃え上がった。快楽の頂が見え始めた。絶頂が近い。昇りつめる体を追い上げて、さらに突き上げる。
他の男が駄目なら、同じ相手とすればいいんじゃないか。
そうか、アルが生身に戻ったら試してみればいいのだ。それで駄目なら本物の鋼フェチということだ。腹をくくろう。
ああそうだ、それがいい。アルならいい。あいつならいい。
他の奴じゃ駄目だ。そうだ他の奴なんか欲しくない。口うるさいし小言も多いけど。体が鎧でも、生身でも、たとえ魂だけだって。
アルじゃなきゃ嫌なんだ。
快感が爆発した。狭いそこが呑み込んだ指をきゅうと締め上つけ、体の内を駆け上る快感に背中が反り返る。頭の中が真っ白に弾けた。
快楽に溶けていく理性の最後の一片で、それって一番やばくねえか、と、エドは自分に最後の突っ込みを入れた。
ねえかどころか間違いなくヤバイ。鋼フェチどころの騒ぎではない。神様なんてどうでもいいけれど、人間としてやばすぎるだろう。
ああでも、今はそんなものどうでもいい。今ここにあるのは快感と、吹っ飛んだ理性の跡に残っている一欠けらの想いだけだ。
不安も道徳も置き去りにして得たそれは、こんなにもただ心地いい。
「……ア……」
朦朧とした意識の中、ただ一人の名前を呼びながら、極めた高みからエドはゆっくりと墜落していった。
夕暮れ近く、古びたドアをそっと開けると、薄暗い部屋の中、ベッドの上には毛布の蓑虫がいた。
よしよしちゃんと寝てるな、と頷きながら部屋に入り、山ほど買い込んでしまった荷物をテーブルに置いてあたりを見回し、アルはふとそれに気づいた。
置いておいた着替えがない。それに、バスルームのドアが少し開いている。
不審に思いながらドアを開けて巨大な鎧が狭い浴室を覗き込む。同時に上がったあれっ!と高い声に、ベッドの蓑虫がぎくりと震えた。
「姉さんシャワーなんか浴びたの!?」
風邪ひいてるのになに考えてるの!しかも洗濯までしてる、普段やれって言ってもやらないくせに!
バスルームに干された寝巻きや下着を睨み、さらに小言を言おうと振り返ったアルの前で、蓑虫が毛布を跳ね上げ飛び起きた。
「アル!」
「ほらもう!シャツは四つに折って叩いてから干さないとしわくちゃになるっていつも……え、なに?」
「早く体取り戻そうな!」
「……うん?」
「そしたら実験だ!やるからな!」
「なにを?」
弟の素朴な疑問は無視してベッドの上に仁王立ちになると、エドは機械鎧の拳を握り締めた。上体がちょっとふらついている。
「それでどっちに転ぼうと、俺は腹くくって開き直ってやるぞ!そうとも今更、多少のやばさがなんぼのもんだ!真理に比べりゃ屁でもねーや!お前も覚悟しとけよ、俺はやるって言ったら絶対やるからな!」
妙に据わった目で叫ぶ姉の勢いに、だから何を、と重ねて聞く事もできず、アルはわかった、とあいまいに頷いた。
それから、姉さん顔赤いよ熱上がったんじゃないの、と首を傾げる。
鋼の腕を持ち上げ、頭を一掴みにしそうな巨大な手で真赤なおでこに触れる。なめし皮の無骨な手が、形のいい額の生え際を丁寧に撫でた。
あ、こんなことしてもわかんないか。でもこの手は冷たいから、熱があるならちょうどいいだろう、と思った瞬間、覗き込む赤い光をぽかんと見上げていた姉の顔が、突然かあっと赤くなった。
火でも噴きそうなその顔色に、思わずどうしたの!?と驚きの声を上げる。
「なんでもない!」
「なんでもないって、姉さんさっきから変なことばっかり言ってるよ。大丈夫なの、気分とか悪くない?これ何本かわかる?」
「2本……だからなんでもないって言ってんだろうが!」
思いっきり殴られ、がいん、と鈍い音を立てた兜を押さえながら、ぶたなくてもいいでしょと文句を言うアルを睨み、真赤な顔でさらに何かを言いかけたエドは、言葉を繋ぐことなく、そのままの姿勢でばたんとベッドにひっくり返った。
わあ!と叫んで両手を伸ばすと、アルは目を回した姉を抱き上げ、しっかりして、と揺さぶった。シャワーなんか浴びるから熱が上がったんだよ、もう一回お医者さんに診てもらおう、といいながら、鋼の両腕で小さな体を抱きしめる。
もはや首まで赤くして機械鎧の右腕を振り上げると、エドはおろおろ見下ろす弟の頭をもう一度、ばかんと情け容赦なくぶん殴った。