雨の日
>486氏
※注 ハボックはエド子が女の子だとは知りません。
急に振り出した雨はだんだん強くなっていた。
──こりゃ当分止みそうもないな。せっかく仕事が午前上がりなのに。
そう思いながらハボックは家路を急いでいた。
ドンッ
十字路に出た時に、誰かとぶつかりあわてて下を見る。
足元には尻もちをついたエド子がいた。
長身のハボックとぶつかり、体格的に衝撃に耐えられなかったエド子は、不機嫌そうに立ち上がった。
「悪ぃ、エド。大丈夫か?」
「…おぅ」
自分にぶつかってよろけもしなかったハボックに、少し悔しさを感じながらもエド子は返事をした。
「こんな雨ン中どこに行くつもりだ?」
「アルと図書館にいたんだけど、腹減ったから何か食べに行くとこ。
アルは残るって言うし、オレだけで」
エド子はハボックの持った傘の中に入れてもらいながら答える。
「そんなままじゃ風邪ひくぞ。しかもそんだけ濡れてりゃメシどころじゃねぇだろ。
……そうだ!俺の家、すぐそこだからメシ食ってけよ」
「え!いいの!?」
嬉しそうな顔をしたエド子になぜか危険を感じながら、ハボックはうなずく。
「……オレ、結構食うからね」
ニィと笑うエド子にを連れて、今更ダメとはいえないハボックは、さっきよりも強くなった雨の中家に向かった。
「そのままで座るなよな…」
濡れた服のまま、ちゃっかりとベッドに座っているエド子にタオルを投げながらハボックは言った。
「座るとこないんじゃ仕方ないじゃん。
タオルを探しに行って戻るのが面倒だから来いって言ったのは少尉だろ」
それはそうだけど、とぼやきながら、着替えを渡そうと振り向いた目に、三つ編みをほどき、雫の滴る髪をふく妙に色っぽいエド子が映った。
──あれは男だ!彼女がしばらくいないからって、やめろよ俺…
そう自分に言い聞かせながら着替えを渡す。
「…いいよ別に、そこまでしてもらわ…」
「そのままだとこっちが迷惑だ」
断ろうとしたエド子の言葉をさえぎる。
エド子は無言のまま服とハボックを見比べ、なかなか着替えようとしない。
「なぁ〜に恥ずかしがってんだ。女じゃあるまいし」
からかいを含んだ口調で話しながら、ハボックがエド子のタンクトップの裾に手をかけ、一気に脱がすのと
「オレは女だ!」
とエド子が叫ぶのは同時だった。
「へ?」
ハボックは間抜けな声を出した。
目の前には白い肌と、成長途中、といった感じに膨らんだ胸があった。
「ごごごごめんっ」
混乱の中「エドは女の子」ということだけ理解したハボックはエド子にTシャツを押し付ける。
胸を隠す手を片方だけ離し、エド子はいそいそとそれをかぶる。
「…エド、お前は、そのっ」
「オレは女だ」
エド子はどもりながら問うハボックに、睨みながらきっぱりと言い捨てる。
「そ…か…」
なんとか自分を落ち着かせ、ハボックはエド子を見る。
──全然気付かなかった…。てか、俺やばいかも
生乾きのまま下ろした髪は艶っぽくて。
頬を赤くして上目遣いに睨む様が愛らしくて。
サイズの合わないだぶだぶのシャツからは白い肩がのぞいていて。
おまけに座っている場所はベッドで。
──誘惑だ
下半身に熱を感じながらハボックは思った。
「どうせ女とわからないほどのド貧乳だよ。着替えたいから…」
「……なぁエド、食事、まだだって言ってたよな?」
「へ?ああ、着替えてから行く……ぅわっ」
ベッドに押し倒されたエド子は、何が起こったかわからない、といった感じでハボックを見上げている。
ハボックが背を向けていたので着替え始めていたエド子は、Tシャツ一枚といういでたちだ。
「ごめんな、エド。なんかすっげぇお前としたいんだ。」
いつもと同じ、ちょっとボケたような調子でハボックは言った。瞳は──本気だった。
エド子の足をひょいっと持ち上げてベッドの上に上げると、そっと頬に手を当てる。
「やっ、少尉っやめろ!オレは…」
「“オレは”何だ?」
エド子は後が続かなかった。
──どう言えば、どう言えばいいんだ?女だとばれるとは思わなかった…てかいっちゃったし…
「オレはあんたとこんなことしたくない」
やっとのことでそれだけの言葉を搾り出したエド子をハボックは薄い青色の瞳で見つめた。
「俺とは、ね。他の誰かとしたことはあるのか?」
「んなっないに決まってるだろ!」
即答してからエド子は顔を真っ赤にした。目の前ではハボックが笑っている。
「んだよ、15歳で処女なのがそんなにおかしいのか!?」
半ば自棄になりながら、エド子は胸ぐらを掴んでやろうと手を伸ばす。
「いや、別に。ただこんな状況でもいつもの調子に戻ったのが面白くて」
伸ばされた手の手首を掴んでベッドの上で押さえつける。
とっさのことに反応できないでいるエド子の首筋に唇を這わせる。
「やめっ……ひゃぅ…っこの」
ハボックは両手を合わせようとしたエド子の生身の方の手を掴む。
「初めてなんだろ?痛くされたくないのならおとなしくしてろよ」
ちょっとした威嚇として手首を強く握る。
っつぅ…!…へぇ…軍にいるってのは伊達じゃないみたいだな」
ハボックは憎まれ口をたたきながらも、瞳を恐怖と痛みに歪ませているエド子を再度愛らしい、と思った。できることならば、その白い肌に傷を1つもつけずに抱きたい、とも。
「うーん…難しい問題だな」
自分の服を片手で器用に脱ぎながら、ハボックは一人うなずき、エド子の左手に指を絡ませ、握る。
唇を塞いだ瞬間、抜け出そうともがいていた手の力が弱まった。
「ふ……っはな……や…だ」
エド子は入り込んできた舌を追い出そうとして、余計に舌を絡めとられ、ぼーっとハボックを見た。
──少尉は何人と寝たんだろう…?
目が合った瞬間そう思った。ハボックは目を笑みの形に少し細めて、抵抗をやめたエド子の手を放して体をなでる。
「やぁっ…ん」
わき腹の辺りまで来たとき、エド子は自分の意思とは無関係に声を上げていた。
「声出したいならだしていい。恥ずかしいことじゃない」
ハボックは体の下の少女に優しく声をかけた。
続く。