マツケソサンバ
>560氏
弟が生のマツケンサンバなんか見に行きたいと言い出した時は、正直生身に錬成した時に、知性や理性を持って行かれたのかと思った。
でもまあよく考えたら、ヨン様ツアーに行きたいと言われるよりマシだし、体を取り戻すまで遊ぶ事もできない過酷な旅だった。これからはできる限りわがままをさせて、弟の過ぎた時間を取り戻してやろうと思う。
ところが新宿コマ劇場に入り、グッズショップでマツケンTシャツの妖しさに気を取られているうち、オレ達はオバサンの並に揉まれてはぐれてしまった。
オバサン達にどつかれ、どきな小娘、などと足を踏まれながら必死に弟を探す。開演まで時間もない。
ふとキャンペーンでマツケンサンバを踊っているでかい猫の着ぐるみの方を見ると、ポップコーンを両手に持った弟が隣に立っていた。弟自身、オバサン達より頭二つ分でかいのですぐわかった。
見慣れた精悍な横顔を見つけて愛しさで胸が詰まると同時に、安堵で腹が立って仕方なくなる。
「くぉら!!アルっ!!」
「ああ姉さん、やっと見つけた」
「見つけたのはオレの方じゃねぇか!!」
「姉さん方が悪いんじゃない。マツケングッズに釣られてどんどん行っちゃうし。マツケン興味ないって言ってたくせにさあ」
笑いながらポップコーンを差し出され、腹が立っていたが食欲もわいた。
「…食いモンなんかでごまかされねーからな。いっつもはぐれた時これでごまかしやがって!」
「救助犬みたいでしょ?姉さん怒るとお腹空かせてるし」
「だから見つけたのはオレだっての!!」
「…見つけて欲しかったんだよ。ボクが本気出したら、今じゃ匂いで姉さん見つけられるんだから。どんな人ゴミでもね」