楽しい休日の過ごし方
>598氏
「お疲れ様っしたー……」
「ああ、お疲れ」
その返事も、しれっとした調子で言うものだから腹が立つ。
目の前で椅子に踏ん反りかえっている我が上司は、挑戦的とも取れるほどの満面の笑みで、帰り支度を整えた俺に手なんて振ってみせる。
「帰ったらゆっくり体を休めたまえ、少尉」
「……嫌味も程々に頼みますよ……」
今は部屋に大佐と二人きりだから、つい口に出してしまった。
他の誰にも知られてはならない極秘任務のために、仕事のあと家にも帰れない日々が昨日から始まった。いつまで続くかも解らないから余計に気が滅入る。
「中尉たちはちゃんと休暇扱いなのに、俺だけヒドくないスか?」
「取り柄の筋肉とタフさ、それに現場大好きな性分で少尉になったんだろう?」
ああ言えばこう言う。溜息一つで背を向ければ、後ろで軽く笑った声がした。
「まあそう不貞腐れるな。仕事熱心ならそのうちいいこともある」
「だといいんスけどね。さっさと今日にでもお化けにお目にかかりたいもんだ」
いつまでデートをキャンセルしなきゃならないんだか。
そう小声で呟くと、一気に空気が険悪になった気がした。
しかしこのぐらいは言わせて貰わないと割に合わない。
「……ハボック」
氷のような声が背後から聞こえる。
「な、何っすか!そりゃあ仕事優先は勿論ですけど、俺にとっちゃ中央で初めて出来た女で――」
思わず振り向いてから目に入った顔は、予想していたような般若の面ではなかった。
俺は少し拍子抜けしてしまった。
「……解った」
「な、にが、」
「あるぞ、きっと」
そのうちいいことが。
さっきの台詞を繰り返して、意味ありげに大佐が笑った。
今日も今日とてオンボロアパートは静かなものだった。時折隣の部屋から、ファルマンとバリーがまた一悶着やっているのか物音がするが、それぐらいのものだ。
だからといって油断できないのが見張り役の辛いところではあるが。
「ジャクリーン」
その時フュリーからの連絡が入った。
「エリザベスは一旦着替えや食料を取りに家に戻るそうです。一時間以内に戻…え?」
「どうかしたか?」
ホークアイ中尉の方で何かあったのだろうか。
「ああ…差し入れを持って、馴染みのお客さんが来て下さったみたいです」
『馴染み客』とは軍の人間のことだ。
「ああ、エリザベスは嬉しそうですね…あ、いえ、済みません。上へ来るそうです」
フュリーの声を聞いている間にも、コツコツと軽い足音が背後から聞こえてくる。
警戒はしない。あの長い足が刻む、聞きなれたリズムだった。
「……じゃあ、お相手しておくよ」
「お願いします、ジャクリーン」
フュリーの通信が切れた。
ゆっくり後ろを振り返る。月明かりを浴びた細身の影が、闇に浮かび上がっていた。
「会いたかったよ、ジャクリーン」
ふざけたほど甘ったるい声で、大佐は笑みを浮かべてみせた。
この声で口説かれればどんな女もイチコロなのだろう。
事実そんな噂話はそこここに立っている。しかし俺たちだけは知っているのだ。
分厚い軍服の下には白い痩身が秘められていること。
一撃必殺の錬金術の使い手が、実は一人の女性であること。
しかしそれは普段意識してはならないものだったし、秘密を知る俺たちも女扱いはしなかった。それが俺たちを信用して秘密を打ち明けてくれた大佐への礼儀だと
思っている。
しかし今初めてそれが辛いと思った。偏頭痛に似た動悸に、我ながら少し焦る。
深夜。ボロアパート。二人きり。
違うこれは仕事だ、この人は上司だ。言い聞かせても抑圧された俺の欲望は納得しようとしなかった。デートが立て続けにキャンセルにならなければ、そろそろ彼女を頂けていた時期かも知れなかった。それもこの人のせいだと思うと余計に、こみ上げる衝動に拍車がかかる。
この人は男だ。そう思い込もうとしても、勝手に頭がコートの下の裸体を思い描く。
「ジャクリーン?」
立っていた大佐が屈んで、俺に視線を合わせた。ほのかに甘い香りがした。
我知らず、腕が彼を――いや彼女を引き寄せていた。
大佐は抵抗しなかった。
「……ジャクリーン?」
俺にはそぐわない、可愛らしい女の名前をおかしそうに呼ぶばかりで。
こんな調子では無理矢理押さえ込む形さえ取れない。
内心どぎまぎしているのを覆面の下に隠して、ばつが悪くなった俺は手を放した。
「……差し入れ、持ってきてくれたんじゃないんですか」
「ああ、今もらってくれるのかと思ったんだがな」
「?」
「今日は豪華だ、聞いて驚くな」
そう言って大佐はおもむろにコートを脱いだ。何も持ってはいない。
「大佐……?」
「言ったろう、そのうちいいことがあると」
膝立ちになって大佐は俺に詰め寄ってくる。壁際まで追い詰められて、
「今日の差し入れは、私だ」
思わずゴクリと唾を呑んだ。
大佐は面白そうに目を細め、俺の目の前で軍服を取り払っていった。
「た、大佐……?」
「おや、お客は名前で呼んで欲しいものだな」
エリザベスは私をロイさんと呼ぶんだ、と言うやいなや、露になった上半身は予想以上のものだった。よくこれで男装が勤まるものだというほどの巨乳に、細くくびれた腰。
肌は肌で、木綿のようなとは良く言ったもので染みも凹凸もない滑らかさだった。
「お前が最近デートもできないとぼやくから、かわりに付き合ってやろうと思ったんだ」
細い指が俺の手袋を外す。魔法にかけられたように、俺は目の前の白い乳房に手を伸ばした。
「……あっ…!」
大佐がびくりと体を振るわせたのに我に帰る。けれど一旦触れてしまった手は止まらない。吸い付くような弾力の胸をまさぐり、顔を寄せて乳首に吸い付いた。
「ぁ……ん、ゃ……ジャクリーン、」
「その呼び方、何とかなりませんかね……」
俺の膝に乗せようと腰を抱え上げると、存外に軽かった。首に回される腕は若い女のそれ以外の何でもない。毎日のように今まで一緒にいて、今まで男扱いすることに慣れていたのが不思議で仕方ない。
「いいんですか?こんな……」
「…っここまで来て、訊くんじゃない……」
蒼い月光の中でも解るほど大佐の頬はピンクに染まっていて、それはまるで幼い少女が恥らっているようにも見えた。およそ非日常的な光景に、下半身は正直に反応する。
大佐は俺の覆面をずり下げてキスをねだる。頬に、額に、瞼に唇を落としてから、
ゆっくりと唇を合わせて舌を絡める。離した時に二人の間を繋いだ糸が、月明かりに白く光った。
それじゃあ、美味しく頂かせていただきます。
胸の中で舌なめずりして、この感動を味わい尽くす。
大佐は長いキスの後で息を弾ませ、とろんとした目つきで上目遣いに俺を見上げている。
「決心は…ついたのか?ジャクリーン…」
「は、はいっ!差し入れ、ありがたく頂かせていただきます」
「敬語がおかしい」
「あ、は、頂戴いたします!」
よろしい、と答えた大佐が、おもむろに俺のシャツをたくし上げる。
「ちょ、っと大佐!?」
「汗臭いぞ、お前…」
そりゃあ今日は風呂もまだで……って。
物珍しそうに俺の腹筋や大胸筋を撫で回していた細い手が、ズボンの方まで伸びる。
無線機やら銃やらのいろんなベルトがついたズボンを、鬱陶しそうにしながらも大佐は情け遠慮なく脱がしにかかる。引っ掛かって脱げにくいのは、勿論ベルトのせいだけではない。
「お前がこんなに気が早い奴だとは知らなかったぞ」
「そんな、……」
そんな乳を目の前に晒しておきながら、言えた義理じゃないでしょうが。
そうこうしているうちにも、俺のズボンの前はすっかり開けられて、一足先に熱くなってしまった息子が元気に顔を出した。
「さて……」
どうしようか、という目で大佐は俺のブツを見つめている。はっきり言って恥ずかしい。
間が持たない。普通の女ならこっちのペースで持っていくくらい訳ないのに、こんな状態では思い切って襲い掛かることも出来ない。唐突に大佐が口を開いた。
「どうしてほしい?」
「は?」
「ここ、だろう?」
大佐が爪の先でソコをはじく。や、優しくして下さい自慢の息子なのに。
「どうって……」
「今日はお前に持ってきた差し入れだ。好きにしろ」
大変横柄な口調で、可愛らしい『差し入れ』は視線を逸らして頬を染めた。
どうって……どうって。
過去に経験したありったけのプレイが頭をよぎるが、やはり目の前の豊満な大佐の胸元が思考の邪魔をする。
これだけのチャンスは滅多にない。並大抵の女ではできないことが大佐は出来るに違いない。
すぐ側には大佐の脱いだ上着や、胸を押さえつけていたのだろうさらしのような細い布が散らばったままだ。普段一人の男として生活している『彼』を思い出すと、そのギャップが余計に興奮を駆り立てる。俺、もしかしてアブナイんだろうか――などと思いつつも、男としても兼ね備えている魅力を振り捨てて、一人の女として今ここにいてくれる大佐が
抱きたくて堪らなかった。正味な話。
きょとんとして、でもどこか不安そうに俺を見つめる大佐に、意を決して耳打ちする。
大佐は目を見開いて、ピンクの頬をもっと赤くして……けれど、小さくこくりと頷いた。
俺がズボンを脱ぎ捨ててしまうと、大佐はそこに屈みこんで大きな胸を俺の下腹に乗せ、そして俺自身を挟むとゆっくり動かした。
谷間に挟まれた俺の息子が埋まってしまうほど、というのは大げさにしても、動くたびに人より大きめと自負している息子が顔を出したり見えなくなったりするのは圧巻だ。
意外に大佐は慣れてないみたいだけど、ぎこちない動きがまた微妙にキモチイイ。
「ん、……こ、れでいいのか?」
「はい……あぁ、やらかくってあったかくって最高っスよ大佐ァ〜」
感想を素直に述べると、頑張って動きを上げるのも何だか可愛い。
「ん……ハボック……ぁん、」
久しぶりに大佐がちゃんと俺の名前を呼んだ。ぐちゃぐちゃに胸を使っているうちに、内側に巻き込まれた乳首が俺の怒張に当たると大佐も甘ったるい声を上げる。俺も合わせて腰を使えば尚更だ。巨乳は感度が低いなんて聞いたこともあるが嘘だろう。谷間に擦り付けてやると大佐は切なそうな顔で喘いで、じれったそうに自分の脚も擦り合わせる。
「大佐ァ、胸でしてるだけで感じちゃってるんじゃないっスか?」
「な、何をっっ…」
「またまた、そんな真っ赤な顔で照れなくても」
いいから今度は脚こっちにして下さいね、と自ら横になった俺は自分の顔の方に大佐の脚を引き寄せる。
「あ、何する……」
「いいですから、大佐は続けてて下さい」
まだズボンを履いたままのお尻を柔らかく撫でる。大佐は後ろを気にしつつも作業を再開する。そして油断した所で、チャックを下ろして一気にズボンを引き下ろした。
「こら、ハボック!」
途端に怒った顔で振り向く彼女をなだめつつ、下着と一緒に下ろした男物のズボンを遠くに放り投げる。きつくもなくするりと抜けたところをみると、ボリュームがあるように見えるヒップも結構スレンダーな方なのかもしれない。
「やっぱり…濡れてますよ?」
人差し指で割れ目にそってなぞれば、ア、と大佐が甘い声を上げる。
指で広げようとすると、恥ずかしがる脚が必死に閉じようとする。仕方がないから
「大佐、胸でやりながら、先だけ口でしてくれませんか?」
「は?」
なだめるように太股の付け根を撫でさすると、多少機嫌を直したのか大佐は再び俺の要求に従った。全く、こんなに美味しい差し入れは生まれて初めてだ。
「む…ぅん」
「そうそう、上手ですよ……うっ、」
ヤバイ。半端なく気持ちいい。
「はぁ……じゃあ俺も、」
「やんッ…!」
力の抜けた大佐のソコを今度こそ押し広げて、思い切り舌を押し付けた。もう随分湿ったソコを舐めるたびに、大佐が我慢できないように腰を捩る。
「あ、だめ……汚い、から舐めちゃ……!」
「大佐、ちゃんと俺の方もお願いしますよ?」
「ぁ、ふぅ……むぁ、あん、ダメぇっ!」
何とか咥えようとするのだが、俺が舐め始めると、余程気持ちいいのか途端に大佐の口は離れてしまう。俺としても、もう奉仕してもらうよりも存分によがる大佐の声を聞きたかった。
悲鳴のような声が次第に艶を帯びた喘ぎ声になっていくのににつれて、大佐の細腰が無意識のうちに俺の舌使いに合わせて揺らぎ始めるのを愛しく思う。彼女が床に爪を立てて、ジャン――と俺の名前を掠れ声で呼んだ。
「大佐……」
「……ぁっ――」
小さく俺の名を呼んだ彼女は、自分でも驚いたように、真っ赤になって口元を押さえる。
「ち、違……ハボック、ぅん…っ」
「呼んで下さいよ、もっと……」
「ちがう…ちがう、からぁ……」
俺は初めて名前で呼ばれたことが寧ろとても嬉しかったのに、照れたのか、それともただ油断して名前を口走ってしまったのが不覚だったのか、大佐は頑なに否定する。
ついには、せっかくイイ感じに解していたのに大佐は俺の上からどいてしまい、綺麗な脚を折って座りなおすと、改めて俺への愛撫を再開させた。
「ちょ、ちょっ大佐っ……まずいです、これ以上は俺、あっ」
「うるさい…っ、お前は女の胸が好きなんだろう、存分にしてやるから黙ってろ!」
しかもさっきまでのぎこちない刺激ではなく、物凄い勢いだ。押し潰されるのではと思うほどの圧力と、それでいて絡みつくような柔らかいもち肌はどんな店のオネーちゃんでも敵いはしないだろう。時折咥え込まれるのにしても、喉の奥まで突っ込んで締め上げてくる。
「大佐……駄目ですって……ちょぉ、手加減して下さ、ッ!」
「無用だ」
容赦ない言葉を吐いて、大佐は柔らかい巨乳の間に俺の分身を挟み込みながら、裏側だけを指でしっかり刺激する。伸ばされた舌が尿道口を抉るように蠢いている。
女より先にイクのは俺のルールに反するんだがなぁ、と思いつつも、思ったときにはもう遅い。
「……ッ大佐ァ!」
思いがけずきつく吸われた一瞬に呑まれ、俺は勢いよくありったけの欲を放ってしまった。
びっくりしたような顔で、大佐はゆっくりと顔を上げた。そして心ここにあらずといった感じで唇についた俺の精液をのろのろと指先で拭っている。
もっとも口と言わず顔と言わず、本当に思いっきりやってしまった俺の印は大佐の肌に白く散っていた。顎から伝い落ちたものが胸に落ち、谷間に滑り込んだり、先まで伝ってまるで母乳のように滴ってしまったりしている。
「ハボック……」
罵られるのを覚悟の上でぎゅっと目をつぶった俺は、いつまでたっても来ない怒鳴り声を不思議に思って再び目を開けた。そこには予想外に近づいた大佐の顔があった。
「す、すんませんでしたっ!」
とりあえず誠心誠意謝ってみたが、大佐はどこかぼんやりとしていて反応もろくにない。
こっちが戸惑いながらも無防備な頬に手を伸ばすと、そこもぬるりと滑る。
「す、すぐ拭きますから」
何か拭うものを、と辺りを探そうとした俺の手を、やんわりと大佐が押し止める。
そして自分の手で液を拭い取ると、その濡れた指先を口に咥えた。
「大…佐」
「……にがい」
なぜかおろおろとうろたえていた俺は、急に大佐の腕で引き寄せられて我に返った。が、
それは遅かった。
「ちょ、やめ――!」
叫んでも間に合わない。
長い睫を伏せた大佐の顔がすぐそこに来ていて、最悪と思った瞬間キスされた。
なるほど、確かに苦い……のだ。
「お前のだぞ…?」
散々舌を絡めて、俺が不本意にもその味に慣れてしまう頃にやっと解放してくれた大佐は、してやったりというふうに唇を舐めた。
「……怒るなら正面から怒ってくれりゃいいのに」
「別に腹が立ってるわけじゃない」
ちゅ、と俺の下唇をもう一度甘く噛んだ大佐が可愛くて、思わずほだされそうになってしまうが、男というのはデリケートな生き物で、やってはならないことがあったのも事実である。
「大佐、意外に男の扱い知らないでしょう…まぁ、普段男で通ってるから当然か」
「な、何を」
こうなりゃヤケだとばかり大佐の頬に舌を滑らせると、びくっと大佐が身を縮ませた。
「く、くすぐったい…ハボック、」
「男は立ててくれないと拗ねるもんです」
別の所は最高潮に立ててもらいはしたが。
大佐の顔のそこら中に付いた液体を舌で拭い取るが、いざそれが終わると飲み込む気にもならない。舌の上に白い液体を乗せたままどうしようかと無様に思案していると、大佐が俺の舌に吸い付いて迷うことなくそれを飲み下した。
「犬か、お前は」
肌が荒れると言って自分の頬を撫でながら。
「軍の狗です」
「私の犬になるのはどうだ」
「随分強気な『差し入れ』っスね」
勝気に笑う大佐に肩をすくめて笑い返すと、
「私が犬でもいいが、お前じゃ飼い慣らせんだろう」
「言いましたね」
脱ぎ散らした大佐の軍服の上着を引き寄せ、その上に彼女の体を押し倒す。
いつも彼女自身が身につけている服のはずなのに、ほっそりと白い体を横たえると男物の軍服は大きく見えた。この人が普段から人一倍の努力とプライドとで埋めている、イメージと彼女自身との差が今は消し去られて、生まれたのがこのギャップなのだろうか。
黙って俺を見上げてくる黒目がちな瞳を、見下ろすように俺は大佐の体に覆い被さった。
「ハボック……」
少し上ずった声。いつものように、低めに抑えた艶のある声とは似ても似つかない。
期待と興奮と、不安がない交ぜになった、そんな声。
ああ、やっぱりこの人は、美しい見た目とは裏腹にそれほど男を知ってはいない。
「大佐……力抜いてて下さいね」
強がっては見せるけれど。
頷いて俺の腕に添えた手は、少し震えていて、戸惑うように揺れた後にぎゅっと握られてしまう。俺はそれを引き寄せて、俺の背中まで回させた。
男装の麗人――堂々とした容姿に少女のような可憐さを秘める、その意味を俺は初めて知り、そして感謝した。そんな彼女が、差し入れだなどと照れ隠しをしてまで、選んでくれたのが俺だったのだから。
「…自惚れじゃないと、いいんスけどね」
少し自分に笑って、彼女の脚を引き上げる。俺の言葉の意味を聞こうとしたが間に合わなかったのだろう、緊張に大佐が短く息を吸ったのが聞こえた。
「調子に乗るなよ…」
「生まれて初めてあんなモンの味まで味わったんですから、少しは好きにさせてもらいますよ?」
二人で触れ合わせた部分がぐちゅりと啼いた。そして一気に繋ぎ合う。声にならない声を上げて、大佐がまるで陸に上がった魚のようにビクンと背を反らせる。十分に濡らしておいたから楽に入れられたが、中はきつめだった。
「…大佐、……っ大丈夫ですから」
大佐はきつく眉を寄せ、目をつぶって挿入の衝撃に耐えている。俺の背中には、我慢できなかったのだろう大佐の爪が食い込み、掻き傷を作っていた。
「ここに、いますから」
「ハボ……っ」
「大好きですよ、大佐」
あんたに負けないくらい――
そう耳元で囁くと、初めて彼女が目を開き、驚いたように不安そうな瞳を揺らした。
俺はただ微笑んでみせた。
強情な彼女は、まだきついのだろうになおも照れ隠しをしようとして、早くしろ、と伏目がちに呟いて――気恥ずかしそうに、けれど満足そうに微笑んだ。
続く