相互依存
>38氏
ミュンヘンのそれなりに整備された居住地区のとある部屋。
薄暗いその部屋では男の荒い吐息と女の喘ぎが響いていた。
男は性器だけをズボンから出す以外はがっちりとコートで身を包み
女は木製の義手と義足を付けている…この異様な風景の男と女の関係は実の父娘によるもの。
何故、身体を交わす関係にまでなったのかは自分達にも良く分からないでいる。
同じ扉の向こうから来た、錬金術師…二人だけで初めて見た異世界に怯え現実逃避するあまりこのような行為に及んだのもあり、悲しくも押さえ切れない性衝動…それもあったのだがこの世界で向う側で言う禁忌を試して門を開いてみるとお互い承知の上でまず抱き合ったのが最初。
娘の方は全くの処女で、最近になって漸く男の愛撫と突き上げで達せる身体にもなった。
「俺……実は初めてをアルにあげようと思っていたんだ。」
枕元でかつて…
いや、今でも愛し続けている最愛の人を思わせるが全然違った瞳で娘が微笑んだ。
身体はまだ情事の後の汗でじっとりと湿っていて、暖かい。
「私との事…後悔しているかい?」
我ながら女々しい台詞だと男は思った。
「ああ、こんなにあんた無しじゃいられない身体にしてくれちまって…凄く恨んでるし後悔してる。
それに、俺を抱いてる時は…アンタは母さんの事ばかり考えてるだろ?」
「お互い様かな?
そう言うお前もアルフォンスの名前をイく時に呼ぶね。
この身体が朽ち果てればトリシャの元へ往ける。
だが、そうなるとお前に会えなくなってしまう…
神は死なんて残酷な安らぎをよくも与えてくれた物だ。
ん?……まだ、満足出来ていない様だね?」
奥まで男のものを飲み込んだそれは物足りなさそうにひくひくと収縮している。
男は娘の腰を掴んでぐっと動かす。
「ん、ああ
何か今日は…もう少し欲しいかなって……っんは!
奥あんま、擦るな…よ。
あんたのソレ気持ち良過ぎんだから、さ。」
男であり父の首に腕を回して娘はそっと髭の生える顎にキスをし次の言葉を喋ろうとした男の口を唇で塞いで娘と男はをゆっくり目蓋を閉じた。
娘の脳裏には最愛の弟の顔、男の中には妻の姿が浮かぶ。
愛しあうとは程遠い…焦燥感に似た二人の関係。
今夜もミュンヘンのどこかで父と娘は禁忌を犯す。
失ってしまった愛するものを追い求め縋るように。
(終)