君を包む大気
>428氏

「君は何かに葛藤しているようだね。
 内なる自分の気持ちと実際の行動に歪みが生じている…そう思っているのだろう?」
全てを見すかすような落ち着いたその金色の瞳は今までに出会ったどの男、その誰とも違う深くて暗い色。
私の本当の心なんて誰も見てはくれず、男達は身体だけを見ていた。
その男の瞳は私の知っている少年と同じく私の心に直接語りかけるようで…
「私は……自分の気持ちに素直に慣れないんだ。
 只でさえ重荷を背負っているあの子に甘えるなんて…
 支えてやらなければならないのは私の方なのに。」
自然と言葉が口を付く。
そして…私より1回り半は年上であろう男の手が私の頭を優しく撫でた
「……あ。」
愛する男の父親と言うより…
目の前の男は事の全てを目にして来た大樹のような包み込むような存在感。
何故、こんなに安心出来るのだろう?
「大丈夫だよ、私の息子は君が思っている程弱くは無い。
 あの芯の強さと負けず嫌いな所は妻譲りでね。
 それに…君のその可愛さに曵かれたんだろうな。」
にっこりと微笑んで、眠たそうな顔で一度大きく欠伸をする。
老成された雰囲気にそぐわぬちぐはぐな動作はあの子と同じだ。
やはり、親子なんだろうな。
知らず知らずのうちに年がいも無く赤くなってしまった頬と胸につかえていた何かが楽になったような気分からか
いつもとは違う微笑みが自然と唇に浮かんだ。





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